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蛍夜

夜桜に蛍が舞う
今宵で桜散り往くと知るや
精霊となった君へ問い掛ける

水辺に咲く花
蓮の花に導かれ
今宵魂は新たな世界へ旅立つ

蛍となり現れる君の姿を見て
惚れゆくいつしか周りを見渡せば
夕暮れの時を迎えていた

明ける日の朝
身支度を整えて新たな地へ赴く
新たな地にて君と永久に過ごしたい
そう今の地に問い掛けると
今まで澱んでいた空気が消え
輝かしい地へと変わりゆく

新たな地にて夢から覚める
気付いた時には既に君と一緒にいて
これから永久の幸せを二人で分かち合う
永遠の時がそっと二人を祝福する
今宵は七夕、晴れ渡る空を二人で見て
幸せな一時を過ごす
蛍がそっと囁いた
幸せは永遠に

未夜

未だ訪れない夜
此の地は永久(とわ)に神々しい光が降り注ぐ
彼の地は今宵初めて夜が訪れる
いつの日か、此の地も夜が訪れる事になるだろうと
伝記に記されていた

ある日、古文書に記されていた内容を見て
驚愕の事実を知る
此の地は古えの頃に呪い(まじない)により
夜が永久に訪れないように仕向けられていた事を
もう人の手では二度と戻せない事を知る

あれから数年の月日が流れ
未夜(みよ)の地での暮らしにも慣れ
何時もと変わらない日を過ごしていた

何処かに懐かしさを感じさせる旋律が流れる
心地良い旋律で気が付けば眠りに着いていた

眠りから覚めて、辺りを見渡してみる
真夜中の風景
此の地は夜は訪れないはずだと
近くに置いていたはずの古文書を探す
古文書は無く伝記さえも無い
未夜の正体を間もなく悟る
未夜とは夢だと
夢から覚めて暫くして朝を迎え
何時と変わらぬ一日が始まる

待人

常世の世界であの人の還りを待ち続けている
社に横たわる冷気は何時の間にか無くなり
穏やかな雰囲気に変わり果てていた

明けの朝、寒さが続く地に
焔に似た魂がそっと降り立った
祝音を齎す為、そっとある人に授ける

授受の儀式を終え、迷いは振り切れ
常世の世界から久々に現世へ降り立つ
現世に響き渡る祝音を聴き
穏やかな旋律を奏でる草原へ赴く

草原から暫くして海浜へ移りゆく
暫しの時を経て、君の姿を見掛ける
待人である君へ漸く出逢えた時
止まっていた時間が再び動き出す
永遠の節を奏で、永遠の時を過ごし続ける

常世

架の世界には常世という楽園が存在すると
古えの伝記に書かれていた

今宵、常世へ旅立つべく
久々に君と出逢う

澄み渡る空を見上げながら
架の世界から常世へ続く道を二人で進み
気が付けば常世の世界に辿り着いていた

常世で永遠の幸せを手に入れ
今宵から常夜となり、永遠の幸せな一時を二人で享受する
夜明けになる頃、二人の心にも本当の意味での幸せが訪れる

秘境

師走といわれる月に秘境を探し当てる
永遠の眠りに着いたかのように瞬時に
意識は秘境のある世界へ旅立つ

架の夜では見られなかった常夏の風景が
新鮮な気分にさせてくれる
今宵より新たな地で新たな人生が始まる

赤き闇夜と青い静寂に苛まれ肩身の狭い思いを
ずっと永遠に頂き続けていたが
今宵最早それは過去の物となる

虹色に朱色に輝く時此の世での業(ごう)から
全て解き放たれ全ての自由を手に入れる

蛍雨

夏に草原で蛍を見て
蛍の魅力に酔いしれる
秋が深まる頃には姿を消したものの
また見てみたい衝動に駆られる

常夏と噂された秘境へ
旅立ち日が暮れる頃に辿り着いた

秘境では噂されていた通り
蛍の姿を見掛ける事が出来
心身共に満たされ
また精霊とも久々に語らう事が出来た

還りし時に極稀に見る雨に遭遇した
きっと最近の不条理ともいえる世界に
天も憂いているのだろう

社へ赴き行く末を憂い祈りを捧げる
社の精霊より新たな未来の創造を任された

未来は自ら創るもの
古えの頃にそう教えられ
当時は理解出来なかったが
今思えばこれが伏線かなと
社から帰りし頃に漸く気が付く

新たな未来への決意を込めた時
精霊と蛍が微笑む姿を見た
現世に戻る頃赤闇は消え
辺り一面に嘗て見た青空が
澄んだ空気と穏やかな風が
再びこの地に幸せを齎し
人々の心に平穏を取り戻していた
新たな未来が始まろうとしている
幸せな未来が訪れる事を実感した頃
自らの心にも平穏が訪れ
久々に笑顔を取り戻す

秋雨

秋が深まる頃
いつしか雨音が聞こえる
外から家へ帰途を急ぐ

寒さからかいつもより増して
雨音を敏感に感じ取る

雨が鳴り止んだ頃
外を見上げると
雨が降っていたのが嘘かのように
雲一つ無い秋晴れが見えた
そう今日は唯一雨の無い日

秋晴れの日はもうすぐ近くまで来ていた
永遠の秋晴れはこの日漸く訪れる

赤闇

赤き闇に囚われ
捕囚の日々を過ごす

心から呪縛が解き放たれず
身体さえも呪縛されたまま

空を見上げた
数年前までは青い空だった空も
今では赤い空しか見えない

夜になるにつれ
赤みを増す空
救いは最早二度と訪れない

一切の言論も自由も奪われた
魂さえも囚われる地獄ともいえる世の中
まさに生き地獄といえよう

嘗て祠と社があった場所へ
魂が向かう
我々は最早見捨てられてしまったのか

そう自問自答を繰り返し
魂は嘗ての社へ辿り着く

精霊さえも既に姿を消し
あるのは修羅と化した異形の者達

二十数年前の出来事さえ無ければ
修羅と化す赤闇の世界は訪れなかっただろう

元の世界へ返り咲きたいと願っても
今更手遅れ救われる価値などもう何処にも見当たらない
赤闇とは自らが創りだした負の心
自らも修羅と化す
微かにも残っていた人の心は今宵全て消え去り
全てが修羅と赤闇と化す

巡礼

秋から冬へと変わり
冬から春へと変わりゆく
今朝、魂は巡礼の旅を始める

旅中に聖なる祠を見付ける
祠に記載されていた文字を読み
今後、自らは何をすべきかを悟る

太古の頃、此の地には聖地があった
清く正しく過ごせていた時は正に楽園といえる地で
争いや不満などは何処にも無かった

今は荒み荒れ果てた荒地があるのみ
新たな聖地と甦えさせる為
此の地の浄化を始める

浄化が終わりし頃
魂の巡礼も終わりを迎える
清らかで爽やかで穏やかな心を持った其の時
新たな幸せが自身と新たな聖地へ訪れる

聖地

聖地に向かう魂
行き着く先さえ見通せず
先の無い未来に見切りを付けて

魑魅魍魎とした現世を離れ
暫しの安らぎを求めて聖地へ向かう
聖地と呼ばれた場所は既に廃墟となり
聖なる影などもう何処にも無かった

此の世で安らぎを得られる場所など
もう何処にも無い
全て絶望に浸る魂に最早為す術は無い
消えゆく希望と未来に
最早期待する術は無い

終わりを迎える其の時に漸く悟る
聖地を求めていた心と身体に問い掛ける
聖地とは自らが創りだした虚像だと言う事を

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