大半の起業が個人事業主。自営業で終わる理由。そしてそれにどう対応すべきか
二人の起業家、成功するのはどっち?
【A さんの場合】
会社員として大手企業の人事部に勤めていたA さんは最近、個人向けのコーチングを行う
コーチとして独立した。
個人向けのコーチングは海外では市場が拡大し、ライフコーチ、ビジネスコーチなどの職業
で独立している人たちがたくさんいる。日本でもその流れが生まれてきて、いまや伸び盛り
の分野とも言われている。
Aさんは人事部でのカウンセリング的な業務の経験を生かし、かねてからの念願であったフ
リーの道を進むことにした。フリーで活動するにあたって、NLP やらカウンセリングやら、箔
が付きそうな資格も取得した。
いずれは本も出し、アンソニー・ロビンズとまではいかないまでも、行列が出来る有名なコー
チになりたい。そして自分も時間や場所、そしてお金に縛られない生活をしながら、ビジネ
スをしていきたいと思っている。
A さんはインターネットマーケティングを勉強し、とりあえずブログとホームページを作った。
さらに、見込みのクライアントを見つけるために、メールマガジンも発行した方が良いだろう
というアドバイスも受け、チャンレジすることにした。
メールマガジンに登録してもらうには、何かしらフックが必要だろうということで、無料レポー
トと動画を作ることにした。いわゆる無料オファーだ。これらの飛び道具を使って、まずは自
分のことを知ってもらうことにしよう。
世の中に自分の名前と顔が知れ渡るのはちょっと恥ずかしいが、それを考えている場合じ
ゃない。A さんは自分の知識や能力を棚卸することにした。
独立してから半年くらいは、A さんのビジネスはまるで立ち上がらなかった。慣れないインタ
ーネットマーケティングに四苦八苦した。
しかし手ごたえはあった。
少しずつだが、メールマガジンの読者が増えてきて、動画を作って送れば、それなりの数の
人が見てくれる。1 対1 のコーチング、つまりA さんの有料メニューに申し込んでくれる人が
出てくるのは時間の問題だった。
A さんのメニューの価格は他のコーチよりも少し低めだ。なにしろ経験がないので、少し低
めにしないとクライアントがつかないだろうと考えた。
まもなくして、初めてのクライアントから入金があった。感動だ。自分の作ったサービスが世
の中に受け入れられた瞬間。広告費がかかっているので、累計するとまだ黒字にはならな
いが、これはいけそうだと手ごたえを感じた。
【B さんの場合】
インターネット広告代理店で営業マンとして働いているB さんには、同僚にはいえない秘密
があった。
B さんの会社はインターネットでビジネスをしている企業に、SEO やPPC などのサービスを
提供する業務を行っている。B さんの仕事は、インターネットで通販を行っている会社を探し、
そこにアポを取って営業をしにいくというものだ。B さんは営業マンとしては優秀だった。数
多くのお客さんを掴み、仲良くなった。
会社では優秀なB さんだが、ひとつ悩みがあった。それは彼が担当している会社の社長の
中に、自分と同じくらいの年齢の人が何人かいたことだった。
元来、負けず嫌いで野望に燃えていたB さんには、なんともいえないフラストレーションが溜
まっていた。自分も会社員をやっている場合じゃない。自分でビジネスをしよう。そう思い立
ったのは1 年前のことだった。
B さんは仕事の合間や週末に、これまで知りえた知識を元にして、輸入ビジネスをスタート
した。輸入ビジネスとは、その名のとおり、海外からモノを輸入して、日本で販売するビジネ
スだ。インターネットが使え、英語さえわかれば、世界中のどんな企業とも取引が出来る。B
さんのような個人でも、容易に輸入ビジネスが出来るようになった。
とても上司や同僚には言えないが、いまやB さんが会社に内緒で行っている副業からの収
入は、会社の給料を上回るようになった。
B さんはもう会社にいる場合じゃないと思った。もっと自分のビジネスに時間をつぎ込めば、
もっと成功できる確信があった。会社を辞めても当面の生活に困ることはない。B さんの起
業家熱はヒートアップした。
入社丸5 年目を迎えた春、B さんは辞表を出し、自由の身を選ぶことにした。
そして1 年後・・・
【A さんの場合】
A さんは一対一のコーチングに誘導するために、有料セミナーを開催していくことにした。イ
ンターネット上でのコミュニケーションよりも面と向かって話して、自分を知ってもらったほう
が良いのは当然だ。
本来ならば、無料でセミナーをやっても良いところだが、アドバイスを受けて有料にした。有
料にすれば、ほかの誰かメールマガジンを発行している人に紹介料を払って、宣伝してもら
えるからだ。いわゆるアフィリエイトである。
無料で開催したとしても、自分のメールマガジンの読者数はたかが知れているから、集客
には限界がある。どうすれば他の人に協力してもらえるかを考えた結果だった。
セミナーを開催し始めると、A さんのビジネスは軌道に乗り始めた。といっても当初思い描
いた夢の生活が送れるほどではないが、コンスタントに新規のクライアントが取れるように
なった。
ビジネスが軌道に乗るのと同時に、A さんの生活は忙しくなってきた。クライアントからのメ
ールや電話はひっきりなしにやってくる。
それと同時に、デスクワークもしないといけない。メールマガジンを書いたり、動画を作った
り、ブログを更新したり。さらにセミナーの会場を予約したり、資料を準備したり。
A さんはこの時点で、大きな見込み違いをしていたことに気が付いた。
フリーになれば、一日の大半をクライアントの対応に使えると思っていた。ところが現実はそ
うではない。日中はほとんど新規のクライアントを獲得するための作業に費やさないといけ
なかった。そして夜になればクライアントの対応に追われる。会社員時代よりもデスクワー
クが多い。
こんな日がずっと続いていた。さらに、元々単価を低く設定していたので、クライアント数が
増えても、人を雇えるほどの収入はなかった。
アンソニー・ロビンズどころじゃない。Aさんは、ロバート・キヨサキ氏が言うS クワドラント(自
営業者)のワナに陥ってしまっていることに気が付き始めた。
自分の時間を切り売りしているからコーチングできる人数にも限界がある。当然、この仕事
は自分にしか出来ないから、人を雇ってやってもらうことも出来ない。自分がいなければビ
ジネスが回らない。
どこで間違ってしまったのか、そしてどうすれば抜け出せるのか・・・
A さんには見当がつかなかった。
【B さんの場合】
B さんが副業で販売していたのは、アメリカから輸入したファッション雑貨だった。これはモノ
が小さいので輸送費もかからないし、在庫スペースも少なくて済む。それでいて、そこそこ
の単価で売れる。
規模は小さいが、いま大手といわれているようなE コマースの会社も、元々はこのような小
さい規模で始まったところがほとんどだ。B さんは売り上げをさらに伸ばすために、別の商
品にも目をつけた。いまの商品はいわゆるニッチ商品で、限られた人にしかニーズがない。
それがイコールB さんの売り上げの規模になっているのだ。
B さんはいくつかの新商品の取り扱いを開始するため、新しいウェブサイトを作り始めた。
彼はとても器用だったので、基本なんでも自分で出来てしまう。見よう見まねでウェブサイト
も作れるし、PPC も出せる。
彼がすべてを自分でやっているのには理由があった。以前、副業で始めたウェブサイトを作
る際、外注に依頼したのだが、出来上がってきたデザインが自分の考えとはまったく異なる
ものだった。結局、彼は自分で作ることになった。この一件以来、人に頼むよりも自分でや
ったほうが早いし、お金もかからないという結論に達した。
商品点数が増えたB さん。それに伴って売り上げが上がってきた。単純に、商品数とウェブ
サイトを倍にすれば売り上げも倍になるという具合だ。
B さんの収入も増えたが、彼はこの状態が企業というよりも、個人事業主の延長線上でしか
ないことに気が付いていた。つまり、売り上げを上げるには、もう一個商品を見つけてきて、
もう一個ウェブサイトを作らないといけない。それを自分でやるのだ。
それと同時に、前に作った商品の売り上げは徐々に下がっていく。ライバルが増えたり、ニ
ーズが一巡してしまうからだ。自分の時間には限界があるので、無尽蔵に商品とウェブサイ
トを作るわけにもいかない。どこかで天井がくる。それでも辞めるわけにはいかず、睡眠時
間を削って、毎日が作業の連続だった。
会社員の時以上の収入は確保できているものの、いつそれが止まるかも知れないという不
安にさいなまれた。商品だって、いつも売れるものが見つかるとは限らない。疲労は蓄積し
ていった。いったい今度はどんな商品を扱えば、この状態を抜け出せるのか?
B さんは毎日どこに向かっているのかわからなくなってきた・・・
起業家の神話
この二人の話はまったくゼロから作ったものではない。何人かの起業家を目指そうとして独
立した人の実例を組み合わせて作り上げたものだ。
自分の強みを生かして起業したA さんも、収入源を確保してから起業したB さんも、結果と
してこれ以上、ビジネスが成長できないという状態になってしまった。
あなたもA さんやB さんのような人を見かけたことがあるかもしれない。もしかすると、あな
た自身がそうであるかも知れない。
企業は作られてから10 年以内にその9 割が潰れる、というような話を聞いたことがあるだろ
う。特に資金が少なくても株式会社が出来てしまうようになってから、起業家になりたい、経
営者になりたい、と思えば簡単に実現してしまうようになった。
もちろん、それによって成功への階段を登り始めた人もいるだろうが、同時にA さんやB さ
んのように、にっちもさっちもいかなくなってしまった人も多数生まれる結果になった。
多くの人がカッコいい経営者を夢見て起業するが、そのほとんどが個人事業主の延長線上
に留まってしまう。
これはいくら集客のスキルが高かろうが、関係ない。考えてみてほしい。もしA さんの集客
のスキルが2 倍だったら、クライアントが2 倍になる。するとA さんの忙しさは2 倍になり、
ますますにっちもさっちもいかなくなる。
もちろんスキルは重要だ。スキルがなければ、そもそもスタートすることが出来ない。ところ
が、A さんやB さんの問題はスキルを向上させることだけでは解決できない。
A さんとB さんのパターンは、非常に良く見られる傾向だ。
もしあなたがどちらかのパターンにはまっていたとしたら、安心してほしい。これらのパター
ンは、良く発生するがために、その対処法もある。治し方がわからない難病ではなく、処方
箋がある病だ。
では、どんな病なのか?
A さんとB さんがかかっているのは、【職人型起業】と
いう病だ。
職人というのは、鍛冶職人のような伝統的な職人から
始まり、A さんのように資格を持っているコーチであっ
たり、プログラマー、デザイナーなども当てはまる。
さらにB さんのようにインターネットマーケティングを
勉強してビジネスを始めた人の多くも職人といえる。
実は世の中で起業する人のほとんどは、この職人型
起業に当てはまる。
彼らは手に職を持っている。それがゆえに、その特殊能力をベースにして起業する。ところ
が、彼らの多くがA さんのような状況に陥ってしまい、フリーの立場をあきらめて、誰かに雇
われるか、細々と生活のための仕事を続けるかのどちらかになりがちだ。
では、職人型起業の何が悪いのだろうか?
職人としての能力と、ビジネスの能力はまったく別物である。
職人の多くは、腕が確かであればビジネスがやってくると思っている。そして自分の腕が一
番だと思っている。だからテレビに出ているような売れっ子を見て、こんな愚痴をこぼす。
“なんだ、あんなやつ。俺(私)のほうが技術は上だ。”
職人としての仕事が増え、ビジネス構築の時間が取れない。(またはその逆)
そもそも職人として起業する人は、1 日中、その仕事をやっていたいという理由で独立する
ケースが多い。ところが、実際に会社を作ってみると、雑多な仕事がやってくる。A さんの場
合には、集客作業がそれだ。その作業に時間をとられすぎて、自分がやりたい仕事がまま
らない。
または、クライアントが増えて、職人としての仕事が増えてくると、ビジネスを構築する時間
がなくなる。すなわち集客やシステムつくり、長期的な視点といったものが欠けてくる。結果
としてビジネスが先細りする。
自分にしか出来ない。
会社員の場合、社内で自分にしか出来ない仕事があればあるほど、その人の価値は高ま
る。余人を持って変えがたいという評判こそが、その人の給料や地位につながる。
ところが、ビジネスを構築するという点で言うと、これは死への道へと早代わりする。あなた
がいないと回らないビジネス、それはイコール自営業だ。
本来はあなたが必要とされるのではなく、あなたの作った商品や、あなたの作った会社が
必要とされていなければならない。多くの人は、会社員時代の習慣が引きずって、自分が
必要とされていたい、という欲求が抜けきらない。
顧客からの要求レベルが高くなる。
職人として起業すると、顧客の要求レベルがどんどん高くなっていく。この前はこれくらいだ
ったから、次はもっと良いものを・・・という要求に応えていく必要がある。
結果どうなるか?
ますます自分にしか出来ない仕事が増える。
職人型で起業した人の多くは、ビジネスを運営しているというよりも、新しい職業に就いたに
過ぎないことがほとんどだ。
世の中のビジネスの大半は、職人によって運営されるビジネスである。この事実こそ、大半
の起業が失敗に終わる最大の原因である。
A さん、B さんのように、職人によって運営されるビジネスは、自分がビジネスを管理してい
るのではなく、ビジネスに自分が管理されている。日々の作業に自分が管理されている。
だから今日は昨日したことの後処理で忙しく、明日は今日の後処理で忙しいという状況が
発生する。彼らは、日々、やらないといけない作業をこなすことで精一杯で、長期的な視点
に立てない。
当初思い描いた、カッコいい起業家像など望むべくも無い。
さらに悪いのは人を雇ったとしても、どの作業をどれくらい任せれば良いのかわからないこ
とだ。いままで全部自分でやっていたので、業務の内容が非常にあいまいで、いきあたりば
ったり。人を雇ったとしても、どれを誰がやるのかわからないために、余計に混乱するばか
りである。
しかし安心してほしい。先ほども言ったとおり、これらの症状は良くありがちであるゆえに、
その処方箋が確立されている。
彼の作った処方箋はスタートアップ段階の起業家だけに適用されるものではない。多くの大
手企業も彼のコンサルティングを受け、ビジネスを成長させてきた。大きく分けると、以下の
3 つフェーズ毎の処方箋が用意されている。
起業 → 成長 → エンタープライズ(大企業)
この短いレポートですべてを語ることは出来ないし、ここでは主に起業フェーズの読者を想
定している。そこで以下に、ほんの少しだけだが、起業家に向けた彼の処方箋をご紹介し
たい。
その1 職人、マネージャー、起業家の違いを理解する
あなたが果たす役割には3 つの種類がある。職人、マネー
ジャー、起業家だ。
先ほど申し上げたとおり、大半のビジネスは職人によって
運営されているために、多くの問題が発生し続け、失敗す
る。
本当に成功するビジネスを創り上げる人は、職人型ビジネ
スをスタートする人とは、正反対の考え方でスタートする。
彼らは職人ではなく、真の起業家としての視点を持っている。
職人、マネージャー、起業家。
A さんはこの違いを理解していなかったために、ビジネスが行き詰ってしまった。
A さんもB さんも職人だった。ビジネスを日々管理するマネージャー、長期的な視点を考え
る起業家としての役割がなかったのだ。
多くの人は、起業するなら自分の得意分野で勝負しろ、と教えられる。だから世の中には職
人型のビジネスが大量に存在する。デザインに詳しい人はフリーデザイナーに、プログラミ
ングが出来る人はフリープログラマーとして、インターネットマーケティングに詳しい人はイ
ンターネットマーケターとして独立する。
彼らの多くは、マネージャーや起業家としての役割を果たせないために、A さん、B さんのよ
うな状況になってしまう。
一般的なビジネスにおける、3 つの役割は次のようになっている。
もしあなたがいま以上にビジネスを成長させたいのであれば、この比率を次のようにする必
要がある。
その2 イグジットプラン
あなたも目標の明確さは重要であるという話を聞いたことがあると思う。多くの人が目標を
達成できないのは、目標があまりにも曖昧だからだ。目標が曖昧であるために、そこにいた
るための戦略も曖昧になり、計画も曖昧になり、結果として日々の行動が曖昧になる。
冒頭で上げたBさんの例はまさにそれだ。どこに向かっているのかわからないために、日々、
何をすべきなのかがわからなくなっている。
マイケル E. ガーバー氏は、ビジネスを立ち上げる究極の目標は、そこから抜け出すこと
だと言っている。
どういう意味か?
たとえば、
・ビジネスを売却して資産を作る
・IPO して創業者利益を獲得する
・経営の実務から離れ、オーナーとして関わる
といったようなことだ。
あなたのビジネスにイグジットプランはあるだろうか?
もし無いならば、いますぐ考えたほうが良い。なぜならば、そうしないと、あなたは一生、そ
のビジネスを支えるために働き続けないといけないことになる。
もしあるならば、数字と組織図を明確にしてみよう。
数字
それは何年後だろうか?そのとき売り上げはどれくらいだろうか?
営業利益は?経常利益は?
もちろん、結果として実際はまったく異なる数字になるかもしれない。しかし重要なのは、旗
を掲げることだ。群衆が混乱をきたす中で、あなたが高く旗を掲げ、どこに向かえばよいの
かを示す必要がある。
組織図はあなたの会社の組織図だ。もしかすると、あなたは今一人でビジネスをしているか
もしれない。しかしそれでも組織図が必要だ。
組織図は、あなたのビジネスの目標をきわめて明確にしてくれる。あなたがイグジットする
10 年後に、会社の組織図がどのようになっていて、どの部署がどんな仕事をしているの
か?
その最終形態がわかれば、あなたは日々、その体制に向けて行動をしていけばよいことに
なる。
一人でビジネスをしている場合には、すべての部署にあなたの名前が入るだろう。あなたが
やらないといけないのは、あなたの名前を一つ一つ消して、違う人の名前を入れていくこと
だ。
組織図を作ることには重要なメッセージが含まれている。
それは、最初から大企業のつもりでビジネスをする、ということだ。
まだとても小さい組織立った頃、会社名をインターナショナル・ビジネス・マシーンズ(IBM)
に変えた会社は、本当に国際的にビジネスコンピュータを提供する企業になった。
彼らはそのようになることを夢見ていたというよりも、最初から自分たちは国際的なビジネス
なんだと思いながら運営していたのだろう。
同じように、あなたも最初から大きな企業を運営しているつもりで行動することだ。たとえ、
まだ一人だとしても。
起業家は会社を作る時点でマーケティングをしています。あなたは極めて差別化された方法で運営され
ている会社を作ります。そして誰を相手にするかも決めます。それら全体がマーケティングです。
マーケティングのエッセンスはストーリーを語ることです。あなたのお客さんになりそうな人たちを行動に
移させるようなストーリーです。どんなストーリーが、うまくいくビジネスを設計してくれるのかを理解する
ことです。
私の作ったビジネススクールは、スモールビジネスデザインというものです。これを卒業すると、マスタ
ー・オブ・ビジネス・デザイン、MBD を受け取ることが出来ます。これを学べば、穴埋め式で、あなたがビ
ジネスを設計するために必要なものがわかります。それ自体がマーケティングを考えることなのです。
MCNews: 起業家にひとつアドバイスするとすれば、それは何でしょう。
Gerber:ドリーミングルームに行くことです。ドリーミングルームでは、あなたの知らないことが起こります。
私たちの問題は、私たちの知識の大半が過去から来ているということです。私たちは過去に学んだこと
によって、過去を生きています。それが私たちのまだ見ぬ将来を形作る限界になっているのです。ドリー
ミング・ルームは、どうやるかを学ぶものではありません。何を作り上げるかを学ぶのです。少しずつです。
どうやるかを学ぼうとすれば、あなたはすぐに過去に引き戻されます。
多くの人はどうやるかを考えます。そこが居心地の良い場所だからです。そこは職人が住んでいる世界
です。私が知っていることは何か?私はどうやれば良いか?と考えるのが居心地が良いのです。これは
起業家に必要なビジョナリーな視点とは正反対にあるものです。
どうやるか、と考えることは単なる仕事です。それは多くの起業家が会社をスタートし、成長させる方法で
はありますが、彼らはそのうち疲れ果ててしまいます。
http://entre-s.com/report_share/
二人の起業家、成功するのはどっち?
【A さんの場合】
会社員として大手企業の人事部に勤めていたA さんは最近、個人向けのコーチングを行う
コーチとして独立した。
個人向けのコーチングは海外では市場が拡大し、ライフコーチ、ビジネスコーチなどの職業
で独立している人たちがたくさんいる。日本でもその流れが生まれてきて、いまや伸び盛り
の分野とも言われている。
Aさんは人事部でのカウンセリング的な業務の経験を生かし、かねてからの念願であったフ
リーの道を進むことにした。フリーで活動するにあたって、NLP やらカウンセリングやら、箔
が付きそうな資格も取得した。
いずれは本も出し、アンソニー・ロビンズとまではいかないまでも、行列が出来る有名なコー
チになりたい。そして自分も時間や場所、そしてお金に縛られない生活をしながら、ビジネ
スをしていきたいと思っている。
A さんはインターネットマーケティングを勉強し、とりあえずブログとホームページを作った。
さらに、見込みのクライアントを見つけるために、メールマガジンも発行した方が良いだろう
というアドバイスも受け、チャンレジすることにした。
メールマガジンに登録してもらうには、何かしらフックが必要だろうということで、無料レポー
トと動画を作ることにした。いわゆる無料オファーだ。これらの飛び道具を使って、まずは自
分のことを知ってもらうことにしよう。
世の中に自分の名前と顔が知れ渡るのはちょっと恥ずかしいが、それを考えている場合じ
ゃない。A さんは自分の知識や能力を棚卸することにした。
独立してから半年くらいは、A さんのビジネスはまるで立ち上がらなかった。慣れないインタ
ーネットマーケティングに四苦八苦した。
しかし手ごたえはあった。
少しずつだが、メールマガジンの読者が増えてきて、動画を作って送れば、それなりの数の
人が見てくれる。1 対1 のコーチング、つまりA さんの有料メニューに申し込んでくれる人が
出てくるのは時間の問題だった。
A さんのメニューの価格は他のコーチよりも少し低めだ。なにしろ経験がないので、少し低
めにしないとクライアントがつかないだろうと考えた。
まもなくして、初めてのクライアントから入金があった。感動だ。自分の作ったサービスが世
の中に受け入れられた瞬間。広告費がかかっているので、累計するとまだ黒字にはならな
いが、これはいけそうだと手ごたえを感じた。
【B さんの場合】
インターネット広告代理店で営業マンとして働いているB さんには、同僚にはいえない秘密
があった。
B さんの会社はインターネットでビジネスをしている企業に、SEO やPPC などのサービスを
提供する業務を行っている。B さんの仕事は、インターネットで通販を行っている会社を探し、
そこにアポを取って営業をしにいくというものだ。B さんは営業マンとしては優秀だった。数
多くのお客さんを掴み、仲良くなった。
会社では優秀なB さんだが、ひとつ悩みがあった。それは彼が担当している会社の社長の
中に、自分と同じくらいの年齢の人が何人かいたことだった。
元来、負けず嫌いで野望に燃えていたB さんには、なんともいえないフラストレーションが溜
まっていた。自分も会社員をやっている場合じゃない。自分でビジネスをしよう。そう思い立
ったのは1 年前のことだった。
B さんは仕事の合間や週末に、これまで知りえた知識を元にして、輸入ビジネスをスタート
した。輸入ビジネスとは、その名のとおり、海外からモノを輸入して、日本で販売するビジネ
スだ。インターネットが使え、英語さえわかれば、世界中のどんな企業とも取引が出来る。B
さんのような個人でも、容易に輸入ビジネスが出来るようになった。
とても上司や同僚には言えないが、いまやB さんが会社に内緒で行っている副業からの収
入は、会社の給料を上回るようになった。
B さんはもう会社にいる場合じゃないと思った。もっと自分のビジネスに時間をつぎ込めば、
もっと成功できる確信があった。会社を辞めても当面の生活に困ることはない。B さんの起
業家熱はヒートアップした。
入社丸5 年目を迎えた春、B さんは辞表を出し、自由の身を選ぶことにした。
そして1 年後・・・
【A さんの場合】
A さんは一対一のコーチングに誘導するために、有料セミナーを開催していくことにした。イ
ンターネット上でのコミュニケーションよりも面と向かって話して、自分を知ってもらったほう
が良いのは当然だ。
本来ならば、無料でセミナーをやっても良いところだが、アドバイスを受けて有料にした。有
料にすれば、ほかの誰かメールマガジンを発行している人に紹介料を払って、宣伝してもら
えるからだ。いわゆるアフィリエイトである。
無料で開催したとしても、自分のメールマガジンの読者数はたかが知れているから、集客
には限界がある。どうすれば他の人に協力してもらえるかを考えた結果だった。
セミナーを開催し始めると、A さんのビジネスは軌道に乗り始めた。といっても当初思い描
いた夢の生活が送れるほどではないが、コンスタントに新規のクライアントが取れるように
なった。
ビジネスが軌道に乗るのと同時に、A さんの生活は忙しくなってきた。クライアントからのメ
ールや電話はひっきりなしにやってくる。
それと同時に、デスクワークもしないといけない。メールマガジンを書いたり、動画を作った
り、ブログを更新したり。さらにセミナーの会場を予約したり、資料を準備したり。
A さんはこの時点で、大きな見込み違いをしていたことに気が付いた。
フリーになれば、一日の大半をクライアントの対応に使えると思っていた。ところが現実はそ
うではない。日中はほとんど新規のクライアントを獲得するための作業に費やさないといけ
なかった。そして夜になればクライアントの対応に追われる。会社員時代よりもデスクワー
クが多い。
こんな日がずっと続いていた。さらに、元々単価を低く設定していたので、クライアント数が
増えても、人を雇えるほどの収入はなかった。
アンソニー・ロビンズどころじゃない。Aさんは、ロバート・キヨサキ氏が言うS クワドラント(自
営業者)のワナに陥ってしまっていることに気が付き始めた。
自分の時間を切り売りしているからコーチングできる人数にも限界がある。当然、この仕事
は自分にしか出来ないから、人を雇ってやってもらうことも出来ない。自分がいなければビ
ジネスが回らない。
どこで間違ってしまったのか、そしてどうすれば抜け出せるのか・・・
A さんには見当がつかなかった。
【B さんの場合】
B さんが副業で販売していたのは、アメリカから輸入したファッション雑貨だった。これはモノ
が小さいので輸送費もかからないし、在庫スペースも少なくて済む。それでいて、そこそこ
の単価で売れる。
規模は小さいが、いま大手といわれているようなE コマースの会社も、元々はこのような小
さい規模で始まったところがほとんどだ。B さんは売り上げをさらに伸ばすために、別の商
品にも目をつけた。いまの商品はいわゆるニッチ商品で、限られた人にしかニーズがない。
それがイコールB さんの売り上げの規模になっているのだ。
B さんはいくつかの新商品の取り扱いを開始するため、新しいウェブサイトを作り始めた。
彼はとても器用だったので、基本なんでも自分で出来てしまう。見よう見まねでウェブサイト
も作れるし、PPC も出せる。
彼がすべてを自分でやっているのには理由があった。以前、副業で始めたウェブサイトを作
る際、外注に依頼したのだが、出来上がってきたデザインが自分の考えとはまったく異なる
ものだった。結局、彼は自分で作ることになった。この一件以来、人に頼むよりも自分でや
ったほうが早いし、お金もかからないという結論に達した。
商品点数が増えたB さん。それに伴って売り上げが上がってきた。単純に、商品数とウェブ
サイトを倍にすれば売り上げも倍になるという具合だ。
B さんの収入も増えたが、彼はこの状態が企業というよりも、個人事業主の延長線上でしか
ないことに気が付いていた。つまり、売り上げを上げるには、もう一個商品を見つけてきて、
もう一個ウェブサイトを作らないといけない。それを自分でやるのだ。
それと同時に、前に作った商品の売り上げは徐々に下がっていく。ライバルが増えたり、ニ
ーズが一巡してしまうからだ。自分の時間には限界があるので、無尽蔵に商品とウェブサイ
トを作るわけにもいかない。どこかで天井がくる。それでも辞めるわけにはいかず、睡眠時
間を削って、毎日が作業の連続だった。
会社員の時以上の収入は確保できているものの、いつそれが止まるかも知れないという不
安にさいなまれた。商品だって、いつも売れるものが見つかるとは限らない。疲労は蓄積し
ていった。いったい今度はどんな商品を扱えば、この状態を抜け出せるのか?
B さんは毎日どこに向かっているのかわからなくなってきた・・・
起業家の神話
この二人の話はまったくゼロから作ったものではない。何人かの起業家を目指そうとして独
立した人の実例を組み合わせて作り上げたものだ。
自分の強みを生かして起業したA さんも、収入源を確保してから起業したB さんも、結果と
してこれ以上、ビジネスが成長できないという状態になってしまった。
あなたもA さんやB さんのような人を見かけたことがあるかもしれない。もしかすると、あな
た自身がそうであるかも知れない。
企業は作られてから10 年以内にその9 割が潰れる、というような話を聞いたことがあるだろ
う。特に資金が少なくても株式会社が出来てしまうようになってから、起業家になりたい、経
営者になりたい、と思えば簡単に実現してしまうようになった。
もちろん、それによって成功への階段を登り始めた人もいるだろうが、同時にA さんやB さ
んのように、にっちもさっちもいかなくなってしまった人も多数生まれる結果になった。
多くの人がカッコいい経営者を夢見て起業するが、そのほとんどが個人事業主の延長線上
に留まってしまう。
これはいくら集客のスキルが高かろうが、関係ない。考えてみてほしい。もしA さんの集客
のスキルが2 倍だったら、クライアントが2 倍になる。するとA さんの忙しさは2 倍になり、
ますますにっちもさっちもいかなくなる。
もちろんスキルは重要だ。スキルがなければ、そもそもスタートすることが出来ない。ところ
が、A さんやB さんの問題はスキルを向上させることだけでは解決できない。
A さんとB さんのパターンは、非常に良く見られる傾向だ。
もしあなたがどちらかのパターンにはまっていたとしたら、安心してほしい。これらのパター
ンは、良く発生するがために、その対処法もある。治し方がわからない難病ではなく、処方
箋がある病だ。
では、どんな病なのか?
A さんとB さんがかかっているのは、【職人型起業】と
いう病だ。
職人というのは、鍛冶職人のような伝統的な職人から
始まり、A さんのように資格を持っているコーチであっ
たり、プログラマー、デザイナーなども当てはまる。
さらにB さんのようにインターネットマーケティングを
勉強してビジネスを始めた人の多くも職人といえる。
実は世の中で起業する人のほとんどは、この職人型
起業に当てはまる。
彼らは手に職を持っている。それがゆえに、その特殊能力をベースにして起業する。ところ
が、彼らの多くがA さんのような状況に陥ってしまい、フリーの立場をあきらめて、誰かに雇
われるか、細々と生活のための仕事を続けるかのどちらかになりがちだ。
では、職人型起業の何が悪いのだろうか?
職人としての能力と、ビジネスの能力はまったく別物である。
職人の多くは、腕が確かであればビジネスがやってくると思っている。そして自分の腕が一
番だと思っている。だからテレビに出ているような売れっ子を見て、こんな愚痴をこぼす。
“なんだ、あんなやつ。俺(私)のほうが技術は上だ。”
職人としての仕事が増え、ビジネス構築の時間が取れない。(またはその逆)
そもそも職人として起業する人は、1 日中、その仕事をやっていたいという理由で独立する
ケースが多い。ところが、実際に会社を作ってみると、雑多な仕事がやってくる。A さんの場
合には、集客作業がそれだ。その作業に時間をとられすぎて、自分がやりたい仕事がまま
らない。
または、クライアントが増えて、職人としての仕事が増えてくると、ビジネスを構築する時間
がなくなる。すなわち集客やシステムつくり、長期的な視点といったものが欠けてくる。結果
としてビジネスが先細りする。
自分にしか出来ない。
会社員の場合、社内で自分にしか出来ない仕事があればあるほど、その人の価値は高ま
る。余人を持って変えがたいという評判こそが、その人の給料や地位につながる。
ところが、ビジネスを構築するという点で言うと、これは死への道へと早代わりする。あなた
がいないと回らないビジネス、それはイコール自営業だ。
本来はあなたが必要とされるのではなく、あなたの作った商品や、あなたの作った会社が
必要とされていなければならない。多くの人は、会社員時代の習慣が引きずって、自分が
必要とされていたい、という欲求が抜けきらない。
顧客からの要求レベルが高くなる。
職人として起業すると、顧客の要求レベルがどんどん高くなっていく。この前はこれくらいだ
ったから、次はもっと良いものを・・・という要求に応えていく必要がある。
結果どうなるか?
ますます自分にしか出来ない仕事が増える。
職人型で起業した人の多くは、ビジネスを運営しているというよりも、新しい職業に就いたに
過ぎないことがほとんどだ。
世の中のビジネスの大半は、職人によって運営されるビジネスである。この事実こそ、大半
の起業が失敗に終わる最大の原因である。
A さん、B さんのように、職人によって運営されるビジネスは、自分がビジネスを管理してい
るのではなく、ビジネスに自分が管理されている。日々の作業に自分が管理されている。
だから今日は昨日したことの後処理で忙しく、明日は今日の後処理で忙しいという状況が
発生する。彼らは、日々、やらないといけない作業をこなすことで精一杯で、長期的な視点
に立てない。
当初思い描いた、カッコいい起業家像など望むべくも無い。
さらに悪いのは人を雇ったとしても、どの作業をどれくらい任せれば良いのかわからないこ
とだ。いままで全部自分でやっていたので、業務の内容が非常にあいまいで、いきあたりば
ったり。人を雇ったとしても、どれを誰がやるのかわからないために、余計に混乱するばか
りである。
しかし安心してほしい。先ほども言ったとおり、これらの症状は良くありがちであるゆえに、
その処方箋が確立されている。
彼の作った処方箋はスタートアップ段階の起業家だけに適用されるものではない。多くの大
手企業も彼のコンサルティングを受け、ビジネスを成長させてきた。大きく分けると、以下の
3 つフェーズ毎の処方箋が用意されている。
起業 → 成長 → エンタープライズ(大企業)
この短いレポートですべてを語ることは出来ないし、ここでは主に起業フェーズの読者を想
定している。そこで以下に、ほんの少しだけだが、起業家に向けた彼の処方箋をご紹介し
たい。
その1 職人、マネージャー、起業家の違いを理解する
あなたが果たす役割には3 つの種類がある。職人、マネー
ジャー、起業家だ。
先ほど申し上げたとおり、大半のビジネスは職人によって
運営されているために、多くの問題が発生し続け、失敗す
る。
本当に成功するビジネスを創り上げる人は、職人型ビジネ
スをスタートする人とは、正反対の考え方でスタートする。
彼らは職人ではなく、真の起業家としての視点を持っている。
職人、マネージャー、起業家。
A さんはこの違いを理解していなかったために、ビジネスが行き詰ってしまった。
A さんもB さんも職人だった。ビジネスを日々管理するマネージャー、長期的な視点を考え
る起業家としての役割がなかったのだ。
多くの人は、起業するなら自分の得意分野で勝負しろ、と教えられる。だから世の中には職
人型のビジネスが大量に存在する。デザインに詳しい人はフリーデザイナーに、プログラミ
ングが出来る人はフリープログラマーとして、インターネットマーケティングに詳しい人はイ
ンターネットマーケターとして独立する。
彼らの多くは、マネージャーや起業家としての役割を果たせないために、A さん、B さんのよ
うな状況になってしまう。
一般的なビジネスにおける、3 つの役割は次のようになっている。
もしあなたがいま以上にビジネスを成長させたいのであれば、この比率を次のようにする必
要がある。
その2 イグジットプラン
あなたも目標の明確さは重要であるという話を聞いたことがあると思う。多くの人が目標を
達成できないのは、目標があまりにも曖昧だからだ。目標が曖昧であるために、そこにいた
るための戦略も曖昧になり、計画も曖昧になり、結果として日々の行動が曖昧になる。
冒頭で上げたBさんの例はまさにそれだ。どこに向かっているのかわからないために、日々、
何をすべきなのかがわからなくなっている。
マイケル E. ガーバー氏は、ビジネスを立ち上げる究極の目標は、そこから抜け出すこと
だと言っている。
どういう意味か?
たとえば、
・ビジネスを売却して資産を作る
・IPO して創業者利益を獲得する
・経営の実務から離れ、オーナーとして関わる
といったようなことだ。
あなたのビジネスにイグジットプランはあるだろうか?
もし無いならば、いますぐ考えたほうが良い。なぜならば、そうしないと、あなたは一生、そ
のビジネスを支えるために働き続けないといけないことになる。
もしあるならば、数字と組織図を明確にしてみよう。
数字
それは何年後だろうか?そのとき売り上げはどれくらいだろうか?
営業利益は?経常利益は?
もちろん、結果として実際はまったく異なる数字になるかもしれない。しかし重要なのは、旗
を掲げることだ。群衆が混乱をきたす中で、あなたが高く旗を掲げ、どこに向かえばよいの
かを示す必要がある。
組織図はあなたの会社の組織図だ。もしかすると、あなたは今一人でビジネスをしているか
もしれない。しかしそれでも組織図が必要だ。
組織図は、あなたのビジネスの目標をきわめて明確にしてくれる。あなたがイグジットする
10 年後に、会社の組織図がどのようになっていて、どの部署がどんな仕事をしているの
か?
その最終形態がわかれば、あなたは日々、その体制に向けて行動をしていけばよいことに
なる。
一人でビジネスをしている場合には、すべての部署にあなたの名前が入るだろう。あなたが
やらないといけないのは、あなたの名前を一つ一つ消して、違う人の名前を入れていくこと
だ。
組織図を作ることには重要なメッセージが含まれている。
それは、最初から大企業のつもりでビジネスをする、ということだ。
まだとても小さい組織立った頃、会社名をインターナショナル・ビジネス・マシーンズ(IBM)
に変えた会社は、本当に国際的にビジネスコンピュータを提供する企業になった。
彼らはそのようになることを夢見ていたというよりも、最初から自分たちは国際的なビジネス
なんだと思いながら運営していたのだろう。
同じように、あなたも最初から大きな企業を運営しているつもりで行動することだ。たとえ、
まだ一人だとしても。
起業家は会社を作る時点でマーケティングをしています。あなたは極めて差別化された方法で運営され
ている会社を作ります。そして誰を相手にするかも決めます。それら全体がマーケティングです。
マーケティングのエッセンスはストーリーを語ることです。あなたのお客さんになりそうな人たちを行動に
移させるようなストーリーです。どんなストーリーが、うまくいくビジネスを設計してくれるのかを理解する
ことです。
私の作ったビジネススクールは、スモールビジネスデザインというものです。これを卒業すると、マスタ
ー・オブ・ビジネス・デザイン、MBD を受け取ることが出来ます。これを学べば、穴埋め式で、あなたがビ
ジネスを設計するために必要なものがわかります。それ自体がマーケティングを考えることなのです。
MCNews: 起業家にひとつアドバイスするとすれば、それは何でしょう。
Gerber:ドリーミングルームに行くことです。ドリーミングルームでは、あなたの知らないことが起こります。
私たちの問題は、私たちの知識の大半が過去から来ているということです。私たちは過去に学んだこと
によって、過去を生きています。それが私たちのまだ見ぬ将来を形作る限界になっているのです。ドリー
ミング・ルームは、どうやるかを学ぶものではありません。何を作り上げるかを学ぶのです。少しずつです。
どうやるかを学ぼうとすれば、あなたはすぐに過去に引き戻されます。
多くの人はどうやるかを考えます。そこが居心地の良い場所だからです。そこは職人が住んでいる世界
です。私が知っていることは何か?私はどうやれば良いか?と考えるのが居心地が良いのです。これは
起業家に必要なビジョナリーな視点とは正反対にあるものです。
どうやるか、と考えることは単なる仕事です。それは多くの起業家が会社をスタートし、成長させる方法で
はありますが、彼らはそのうち疲れ果ててしまいます。
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