コラム:「世界の警察」降りた米国、中東政策は置き去り
By Ian Bremmer
ニューヨークで先週開催された国連総会で、一般演説に立ったオバマ米大統領は、米国の価値を守り、世界に民主主義を広げていくための覚悟を力強く語った。しかし、そこですべてが語られたわけではない。大統領が本当の「演説」をしたのは、明らかに選挙優先で出演した主婦層向けテレビ番組の中だった。
外交問題専門家の多くは、国連総会に集まった各国首脳と会談することができたにもかかわらず、それをしないでテレビ番組に出演したのは時間の無駄だと批判している。
しかし、過去数カ月間のオバマ政権の外交姿勢を見ると、シリア内戦やリビア問題に背を向け、核開発が疑われるイランに軍事的脅威を与えることに躊躇し、中東和平への関与を拒むというのが現実だったのだ。
米国は最近、世界の舞台で自国の負担を軽くしようとしている。長期的には、こうした外交政策と軍事政策の見直しは、平和の果実を米国にもたらすかもしれない。ただ短期的には、事態が急速に悪化し、過去の米国大統領なら介入していただろう3つの国際問題が存在する。1つずつ見ていこう。
1.シリア
アサド政権は嘆かわしい行動を繰り返している。しかし、米国は反体制派の支持には極めて消極的だ。さらに言えば、米国がリビア問題とは異なる対応をシリアで取る理由は何も見当たらない。シリアに介入しても、同国内外で米国の利益が有利になるかどうかは全く不透明だ。
イラクで米国が得た教訓はシンプルだ。民主主義を築くのは非常に高く付くというものだ。そしてリビア問題からは、体制変革には負担が伴い、簡単には達成できないという教訓を得た。 続く...