東京電力は12日、福島第1原子力発電所を報道陣に公開した。事故から約1年7カ月たち、4号機付近を中心にがれきはかなり撤去され整然と作業が進んでいる。多量の放射性物質を出したとされる2号機や鉄骨がむき出しの3号機の建屋は、ほぼ事故時のまま。放射線のため屋外に長時間はとどまれず、廃炉へ向けた作業の道のりは遠いことを改めて印象づけた。
日本の報道陣向けの原発公開は4回目。45人が2台のバスに分乗した。1~4号機の海側を通った後、山側に回って1、2号機付近を通過。途中、4号機の山側と工事中の新しい水処理施設の前で降車した。
4号機前の降車は放射線を浴びすぎないよう10分に制限。地面に置かれた格納容器の黄色い上蓋に約15メートルまで近づいた。直径約9メートル、重さ約52トン。工事を進めやすくするため8月に原子炉建屋から撤去した。大きな傷やへこみは見られない。
最上階のプールから燃料を取り出すため建屋のカバーと専用設備の設置工事が始まり、無線操作で無人の大型クレーンがゆっくり動いていた。2013年中に本格的な燃料撤去を始める計画だ。
建屋を間近に見上げると壁は所々崩れ、穴から鉄骨がのぞいていた。福島第1原発の高橋毅所長は「建物の劣化が進んでいないか、定期的にコンクリートの強さや傾きをチェックしたい」と、安全性を確認しながら作業を急ぐ考えを示した。
隣の3号機はぐにゃりと曲がった鉄骨の塊が見え、爆発のすさまじさを感じさせた。3号機ではプールに鉄骨を落とす事故があったばかり。損傷の有無などを調べるカメラが真上からクレーンでつるされていた。
今回のルートで、放射線量が最も高かったのは4号機タービン建屋の海側。毎時約1000マイクロシーベルトで、過去と比べあまり下がっていない。この付近は津波で運ばれてきたとみられる車がひっくり返っているなど、がれきや残骸が放置されていた。
初めて公開した1、2号機の山側は壊れかけた建物など障害物が多い。昨年8月には1、2号機主排気筒の地面近くにある配管の表面で毎時10シーベルトを計測。1時間浴びると命の危険がある高さだ。バスは十数メートルまで近づいたが、線量はそれほど上がらなかった。「場所が少しずれるだけで線量は大きく変化する」(東電担当者)という。
坂を西に向かって上がった広い敷地では、多核種除去装置と呼ばれる新しい汚染水処理システムがほぼ完成。作業員が最終調整していた。近く汚染水を試験的に流す。従来のシステムでは難しかった放射性物質のストロンチウムの除去が可能になる。
敷地内にある燃料保管の共用プールは近く満杯になる。空気で冷やす乾式の仮保管庫を建設し一部を移す計画で、基礎工事が始まった。正門近くではPR館が撤去され、新たな作業拠点とする工事も進行中。
爽やかな秋晴れにもかかわらず、わずか2時間半の取材でも防護服を着て全面マスクを着けると暑く疲労感に襲われた。冬には寒さ対策も必要になるといい、作業環境はなお厳しい。(編集委員 安藤淳)
東京電力、福島第1原子力発電所、高橋毅
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