米ハーバード大客員講師を名乗る森口尚史氏が「iPS細胞から心筋を作り、患者に移植する初の臨床応用をした」と米国の学会で発表しようとしたが、同大学が臨床応用を否定するなど、日米で疑義が相次いでいる。森口氏と東京医科歯科大のグループがiPS細胞を活用しC型肝炎の創薬に成功したとする2010年の読売新聞の記事についても、同大学は12日、記者会見で否定した。
森口氏が治療したとするマサチューセッツ総合病院とハーバード大は、「森口氏に関連した治験が承認されたことはない。現在、両機関とも森口氏と関係はない」との声明を出している。
森口氏が修士号を取得した医科歯科大は12日記者会見した。森口氏の学生時代の指導教官で今回の共著者である佐藤千史教授は「8、9月ごろ、森口氏からメールで研究の抄録を受け取った」と説明。「移植に携わった他の人の名も(抄録に)記載すべきと告げたが『論文に載せれば十分』と否定された。疑問を持てばよかったが、納得してしまった」と話した。
研究の信頼性について「私は教育者でもあり信じたいが、(ハーバード大客員講師と名乗る森口氏の)経歴問題などを踏まえると、私が不明だったかなと思う」と話した。
共著者として名前が載った東京大先端科学技術研究センターの井原茂男特任教授らも12日夜、記者会見し「基礎的なデータ解析は頼まれたが、人の臨床に応用するとは聞いていなかった。自分の名前があると聞いて驚いている」と話した。
森口氏から約1年前にiPS細胞と別の細胞とするデータを渡され解析を頼まれたという。当時は基礎研究の論文を執筆すると説明を受けたといい、結果を渡してから音信も途絶えたまま。研究内容に疑義があるとの報道を受けてメールを送ったが、返信はないという。
また医科歯科大の森田育男理事は会見で、森口氏と医科歯科大のグループがiPS細胞を活用したC型肝炎の創薬に成功したとする10年5月の大阪読売新聞の記事についても「医科歯科大で実験や研究が実施された事実はない」と明らかにした。今回の問題を機に、10年の記事の存在を初めて知ったという。
一方、厚生労働省は12日、同省が補助金を出し、森口氏が過去に関わった研究の内容を確認する調査を始めた。森口氏は1998~2006年度、「保健サービスの効果測定等の評価」など3つの研究班に参加していた。
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東京医科歯科大学が12日、「このような実験、研究が行われた事実はない」と否定したC型肝炎の創薬について、日本経済新聞社は2010年6月2日付日経産業新聞に「ハーバード大研究員ら C型肝炎治療 副作用少なく iPS細胞活用」と題した記事を掲載していたことが判明した。
医科歯科大はiPS心筋の臨床応用を「大学で行われた事実はない」とするとともにiPS細胞を使ってC型肝炎の新たな治療法を見つけたとの2010年5月1日付大阪読売新聞の記事について事実関係を否定した。日経の記者は同年4月に森口尚史氏を直接取材し執筆していた。
日本経済新聞社広報グループの話 本社は森口氏に関する過去の記事を洗い出し、信頼性や信ぴょう性について調査を始めました。
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