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 一列に並んで、人から人へと次々に伝言を囁いていく伝言ゲーム。みんな一度はやったことがあるんじゃないだろうか?最後の人が伝わった伝言を読み上げると、内容がとんでもなく変わってしまっていることが多く、それがこのゲームの醍醐味でもあるわけなのだが、米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学校の最近に研究によると、人の記憶もこれに似たようなものだという。
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ソース:Your Memory Is Like the Telephone Game, Altered With Each Retelling
原文翻訳:konohazuku

 記憶があいまいになる理由は、過去の出来事を思い出そうとするたびに、脳のネットワークが、ひっぱり出した情報をその都度書き換えてしまうことにより起こるそうだ。

 記憶というものは、もともと、オリジナルの出来事へと時間をさかのぼることによって生まれるイメージではなく、少し捻じ曲げられたイメージなのだという。記憶は取り出すたびに、まったく別物になってしまうほどその正確さを欠いていく可能性があるのだ。

 この事実は、刑事裁判で目撃者が証言する際に影響が出てくる。

 目撃者は、最初はかなり正確に見たことを覚えているのだが、何度も過去思い出そうとするたびに、それが曖昧になってくる。70人の人にさまざまな実験をしたところ、すべての人にこの傾向が見られたという。記憶が大なり小なり歪められるのは、人はたいてい都合のいいように記憶を適応させてしまうからだ。

 記憶は常に変化する。新しい環境や、時間、いつもとは違った気分で何かを記憶した場合、その記憶は新しい情報と混ざり合ってしまうのかもしれない。

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 今回の研究では、70人の被験者に、3日続けてグリッド線上にある物の位置を記憶する実験が行われた。初日の二時間のセッションで、参加者はパソコンのスクリーン上で、180のそれぞれ違う物の位置関係を頭にたたきこむ。翌日の二回目のセッションでは、グリッド線の中央に集められているこれらの物を、もとあった場所に戻すテストをされる。三日目のセッションでは、最終的にどこまで正確に覚えているかテストをする。

 最終日のテスト結果はかなり正確だったが、誰一人としてすべて正確に記憶していた者はいなかった。もっとも注目すべきことは、最終日に、一日目に覚えた正しい位置ではなく、二日目で覚えた間違った位置に近い場所に物を置く傾向があった。

 このことから、二日目に覚えた間違った位置の記憶が、三日目の記憶に影響を与えていることがわかる。記憶を引き出すことにより、もともとの位置関係を思い出すどころか、むしろ二日目で思い出した位置へと記憶の貯蔵庫が変わってしまう。

 被験者の脳の電気的活動、つまり神経信号を測定してみたところ、二日目に記憶を思い出そうとしている間に、ある特殊な電気信号が認められた。それは三日目に記憶を思い出そうとしている時の信号より大きかった。この信号が弱いほど、記憶がそれほど歪められない傾向にあった。

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 これらの実験から、記憶というものは時間とともに変化していくものだということがわかる。例えば学校での初日のことなど、ずっと昔に起こった出来事を思い出そうとする時、実際の出来事ではなく、その後に起こった出来事の情報を引き出してしまうか、もしくは他の記憶が上書きされ、混同してしまっている可能性が高いのだ。

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