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東電、津波リスクを過少評価していたことを認める

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 【東京】東京電力は12日、昨年未曾有の危機を招いた福島第1原子力発電所の事故に関し、できる限りの予防措置は講じてきたとのこれまでの主張を一転して、財務的・社会的影響の懸念から、必要な安全措置を一部講じていなかったことを初めて認めた。

Associated Press

東電本店で会見するデール・クライン氏(左)、デール・クライン氏(左)、英原子力公社名誉会長のバーバラ・ジャッジ氏(中央)、元名古屋高検検事長の桜井正史氏(12日)

 同社は12日、同社の原子力関連改革の取り組みについて監視・監督することを目的として設立された取締役会の独立諮問機関「原子力改革監視委員会」に32ページの報告書を提出した。この報告書は、このような事故が二度と起こらないように東電がとるべき改革の進め方を提案するもので、どのような過ちがあったのか、その原因についても振り返っている。

 そのなかで同社は「過酷事故対策が不足した背後要因」の1つとして「過酷事故対策を採ることが、立地地域や国民の不安を掻き立てて、反対運動 が勢いづくことを心配した」ことを挙げている。

 そのほかにも、対策が不足した理由として過酷事故対策の必要性を認めることが「訴訟上のリスクになると懸念した」、また、「過酷事故対策を実施するまでの間、プラント停止しなければならなくなるとの潜在的な恐れがあった」などと述べている。

 原子力改革監視委員会の委員で元米国原子力規制委員会(NRC)委員長、デール・クライン氏は12日、第1回委員会会合後に開かれた記者会見で「過ちがあったことは非常に明らか」と述べ、「当委員会の目標はこのようなことが二度と起こらないよう、東電が適切な慣行と手続きを採るよう徹底することだ」と語った。

 昨年の事故を受けて調査を進めてきた政府や民間セクターの諮問委員会からの度重なる批判にもかかわらず、東電はこれまで事故を防ぐために最善を尽くしてきたとの主張を繰り返してきた。今回の報告書はそこから180度の転換といえる。

 昨年の事故では、巨大な地震と津波によって発電所への電力が絶たれ、3基の原子炉が制御不能となった。最終的にはメルトダウン(炉心溶融)が発生して近隣地域は大量の放射能で覆われ、何十年にもわたって居住不可能となっている。東電は、今回の態度の変化は、福島事故を二度と繰り返さないようにとの願いによるものとしている。

 東電は先に実質国有化されており、東電生え抜きの元会長は退任し、原子力損害賠償支援機構のトップが会長職に就任した。

 東電が過ちを認めたことで、事故関連の訴訟問題から同社がどこまで事故の損害賠償を負担するのかまで、幅広い影響が予想されるが、どのような影響になるかは不明だ。

 東電の広報担当者は12日、同社は事故の責任を負うとは言っていないが、責任を否定するわけでもないと述べた。

 同報告書はまた、東電は津波災害を防ぐためにもっと必要な対策を講じ、事故対策計画を強化できたはずで、さらに事故対応のために職員をもっと訓練していれば福島第1原発危機が制御不能になることは防げた可能性があるとしている。

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