おちゃめな発想。酒は豪快、挫折感も味わった――。8日に今年のノーベル医学・生理学賞受賞者の1人に決まった山中伸弥京都大教授(50)は、ユーモアと野心あふれる一面も併せ持つ。体細胞からさまざまな組織の細胞になる能力がある「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」の開発で、日本人として2年ぶり19人目のノーベル賞、医学・生理学賞では25年ぶり2人目の快挙に輝いた。その研究で、3年後にはiPS細胞による角膜移植が可能になるという。
神戸大医学部から海外留学を経て、若くして京大教授となり、50歳にしてノーベル賞に輝いた。短髪にメガネの外見。バリバリのエリートにしてお堅い人物のように見える山中教授だが、お茶目な一面も併せ持つ。
iPS細胞の「i」は米・アップル社の人気商品「iPod」人気にちなんで山中教授が名づけた。
京大で8日夜に開かれた記者会見では「本当は僕はもっと面白い人間やと思うんですけど、これだけの人を目の前にして、総長も横に座っているのであまり変なことを言えない」と苦しい胸の内も率直に明かした。
整形外科医を志望したが、20分で済む手術に2時間かかるなど手術下手から、研修医時代は教官に「ジャマナカ」と呼ばれるなど“挫折”感も味わい、研究畑に入った。一方で、母校・大阪教育大付属高天王寺校舎の同級生と「壱發野郎(いっぱつやろう)の会」を設け、「大きなことをやろう」と飲み会を始めた。メンバーに自民党の世耕弘成参院議員(49)も。
山中教授は大学時代、大親友と2人で豪快に飲み、ビール1ケースを空け、行きつけの店では「からあげ、全部持ってきて」と注文したこともあった。
そんな山中教授が開発したiPS細胞は、生命科学研究の一大潮流をつくり、再生医療や創薬への利用も期待される。その実用化はいつごろ実現するのか。医療ジャーナリストの松井宏夫氏に聞いた。
「iPS細胞の応用で、3~4年後には角膜の移植手術の臨床試験の1例目があるといわれています。パーキンソン病などの難病の治療薬も7~8年の間に開発できると思います」と実用化は目前に迫っているという。
ただ「角膜は比較的、簡単にできますが、心臓などの複雑な臓器をつくるには、まだまだ時間がかかるでしょう」と完全な再生医療は少し先になる見込みだという。
しかし「今までにない研究で、人間が何歳まで生きればいいのかという倫理的な問題まで出てくるような発見です」と、これまでの医療の根本を変えてしまうほどだという。
開発から6年のスピード受賞となったが、松井氏は「iPS細胞は完璧に確立されていない研究で、まだ受賞には早いという意見もありますが、私は遅いぐらいだと思っています」と断言。「もし、ノーベル賞の上の賞があっても受賞できるぐらいの研究。それぐらいの発見をしたわけですから」と最大級の賛辞を送った。
山中教授は「iPS細胞は万能細胞と呼ばれることもあります。“今日、明日に病気が治る”という誤解を与えてしまっている部分があるのかもしれない。実際は、やはり時間がかかる。5年、10年とまだまだ研究が必要な病気が多いというのが事実ですけど、すごい数の研究者が一歩一歩前に進んでおります。希望を持っていただきたい」と難病で苦しむ患者に対して、力強いエールを送った。山中教授のノーベル賞は、世界中の多くの人の希望の光になるはずだ。
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