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2012年10月13日(土)付

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ノーベル平和賞―不戦誓った欧州の60年

国家の壁を越えた共同体をつくろうという壮大な実験は、近代社会が自らを乗り越えようという取り組みでもある。地域統合に取り組んで約60年になる欧州連合(EU)が、ノーベル平[記事全文]

大飯原発―稼働継続は無責任だ

暫定的な安全基準で7月に再稼働した関西電力大飯原発3、4号機が、夏の節電期間を過ぎても稼働し続けている。電力の安定供給には原発が必要で、大規模停電が起きれば企業活動や国[記事全文]

ノーベル平和賞―不戦誓った欧州の60年

 国家の壁を越えた共同体をつくろうという壮大な実験は、近代社会が自らを乗り越えようという取り組みでもある。

 地域統合に取り組んで約60年になる欧州連合(EU)が、ノーベル平和賞を受賞することになった。その歴史的意義が評価されたといえよう。

 ベルギーのブリュッセルに拠点を置くEUの加盟国は27カ国、総人口は5億人。その経済力と結束とによって国際社会で大きな存在感を示してきた。

 そのEUがいま、深刻な経済危機にあえいでいる。17カ国でつくるユーロ圏からのギリシャの脱退論がくすぶり、財政緊縮への不満が南欧諸国から噴出している。

 欧州統合の歩みをここで挫折させてはならない。

 苦悩の中にあるEUへのノーベル平和賞決定からも、同じ思いがくみ取れる。

 国家と民主主義。欧州は、近代社会を支える二つの理念を育んできた。同時に、古来、悲惨な戦争を繰り返してきた地でもある。

 第2次大戦後、不戦を誓った欧州は共同体づくりに乗り出す。1952年、フランスやドイツなど6カ国による欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)の創設にこぎつけ、紛争の種だった仏独の和解を推し進めた。

 市場統合を先導役にしながら、共通政策の範囲を通商から農業、通貨、環境、外交防衛などへと広げていった。

 いまやEUは、憲法に似た基本条約を共有するまでに育った。冷戦時代に敵対した東欧諸国に次いで、旧ユーゴ諸国も仲間に加えつつある。域外国の紛争解決にも取り組んでいる。

 見落としてならないのは、統合を通じてEUが、国家と民主主義の限界とあるべき姿を深く問いかけていることである。

 政策執行機関である欧州委員会には大勢の官僚が働き、草の根の人々には、巨大な官僚機構に物事を決められているとの不満がある。その溝を埋めるため、直接投票で選ばれた欧州議会が市民の声を吸い上げようとしている。

 経済のグローバル化が進む時代に一国だけでは問題は解決できない。国境を越えた統治の仕組みをどう整え、民主主義の質をどう向上させるのか。

 EUという未完のプロジェクトに世界が注目するのは、そこに人類が直面する共通の課題を見るからだろう。

 EUはこれまで何度も危機を克服し、そのたびに統合を深化させてきた。その知恵と力をいまこそ見せてほしい。

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大飯原発―稼働継続は無責任だ

 暫定的な安全基準で7月に再稼働した関西電力大飯原発3、4号機が、夏の節電期間を過ぎても稼働し続けている。

 電力の安定供給には原発が必要で、大規模停電が起きれば企業活動や国民生活への影響が大きい。そんな理由で、新たな安全基準の策定を待たず、周辺市町の防災対策も未整備なまま、政府と電力会社が押し切った。

 電力需要のピークがすぎた以上、原子力規制委員会は大飯を停止させ、ほかの原発と同様、新たな安全基準によって一から審査し直すべきである。

 大飯の安全性には、いくつもの問題点がある。

 まず敷地内の断層が、活断層である可能性が指摘されている。断層は2、3号機の間を走り、非常用取水路を横切っている。規制委は近く現地調査する予定で、田中俊一委員長は活断層であれば運転を止めるという。再稼働時には十分に調査されていなかったリスクだ。

 また、規制委はこれまで原発から8〜10キロ圏内だった防災重点区域を、30キロ圏内に広げる指針案を示した。適用されれば大飯の場合、新たに京都市や滋賀県高島市など8市町が加わる。

 各市町は避難路の確保や避難施設の指定など、防災計画を暫定的に作っている段階だ。

 「原発を再稼働させるには、防災計画の策定が前提となる」といったのは田中委員長である。要件を満たしていない大飯の状況をこのまま放置するのは、矛盾した対応と言わざるを得ない。

 気になるのは、大飯の稼働に対する責任体制が不明確なことだ。政府は「規制委ができた以上、安全判断は規制委の仕事」という。規制委は「国が福井県やおおい町と相談して決めたこと」とし、ただちに停止を求めることはしないと主張する。

 大飯の再稼働は、6月に関係閣僚が会合を開き「政治決定」した。政治の手を離れ、規制委が引き継いでいるようでもない。押し付け合ってエアポケットに落ち、責任の所在が中ぶらりんでは困る。大切なのは停止すべきかどうかを、責任を持って判断できる体制だ。

 政府、規制委ともに、需給予測や安全性といったそれぞれの領域で責任を担うべきだ。

 大阪府と大阪市は、大飯を停止させ、新たな安全基準のもとで再審査するよう政府と規制委に申し入れた。2府5県と政令指定都市でつくる関西広域連合も、新しい安全基準の早急な提示と再審査を政府に求めた。

 近隣や消費地の声を、国と規制委は重く受けとめるべきだ。

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