井笠鉄道(笠岡市笠岡)が全バス路線の廃止を表明した12日、地元では驚きと不安が広がり、「通学手段はどうなるのか」「何とか継続を」と切実な声が聞かれた。
軽便鉄道時代から1世紀にわたり、地域住民の足を支えてきた同社。路線バスは笠岡や井原市などの駅や学校、病院といった主要拠点を結び、通勤・通学、通院などに利用する人は多い。
同社撤退後、11月からはバス事業を中国バス(福山市)と北振バス(岡山県矢掛町)が引き継ぐ見通しだが、どの路線が残るかは不透明。運転免許証を返納したばかりの笠岡市の男性(78)は「近くにスーパーも病院もない。路線がなくなったら生活できない」と訴え、井原市から笠岡市の高校に通う3年女子(18)は「学校に行く手段は他にない」。70人以上が井笠鉄道のバスを利用するという井原高の橘高知美校長は「路線を存続してもらえるよう関係機関に要望していきたい」と言う。
関係自治体のトップも対応に苦慮。10月に路線バスを含む地域交通を見直したばかりの井原市の滝本豊文市長は「市民生活に影響を来すことは何としても避けたい」。笠岡市の三島紀元市長は「関係自治体と対応策を協議して、主要路線の維持へ検討を進めていきたい」とした。