堀越学園 科省設置審、解散命令は秒読み 学生ら不安広がる 群馬
産経新聞 10月13日(土)7時55分配信
■「単位や就職どうなるのか」
高崎市の学校法人「堀越学園」に対し、文部科学省は12日、大学設置・学校法人審議会に解散命令を出す方針について検討するよう諮問した。非公開で行われた会議では、学園が示した再建計画の実効性や、学園が経営する創造学園大などの学生約500人の処遇について議論したとみられる。この日は結論に至らなかったが、月内にも再度会合を開き、答申を出す見通しだ。文科省による解散命令は秒読み段階に入った。
◇
文科省が諮問した有識者らによる審議会が開かれたことで、約500人の在校生を抱える堀越学園では教職員や学生らに不安が広がった。だが、学園が経営する創造学園大中山キャンパス(同市吉井町)では12日も、困惑しながら勉学に打ち込む学生や教職員の姿があった。
うっそうと緑が生い茂った森の中にたたずむキャンパスは、“学舎(まなびや)”としては最高の環境だ。4千坪の庭園「水琴亭」内にある水琴窟は環境省の「日本音風景100選」にも選ばれた。ここには創造芸術学部の音楽学科と芸術学科が設置され、芸術的感性を磨こうと意欲に燃える学生たちが多く通っていた。
だが、この日のキャンパスは閑散としていた。事務所の受付には当日の授業のカリキュラムが置いてあったが、全部で45ある教室のうち1時限で6、7教室しか授業に使われていなかった。女子学生(21)に聞いてみると、「給料の遅配などが原因なのか、ある日を境に先生が授業に来なくなった」と困惑した表情で話した。
堀越学園は、平成21年に教職員への給与遅配などから経営悪化が表面化した。学生によると、今年9月に新しい受付の事務員が配属されたが「大学のことをまるで把握しておらず迷惑している」という。この日は受付に「本日、会議のため不在です」と書かれた紙が張られていた。
2年前に同大を卒業し、地元在住の同級生に会うため長野県から訪れたという女性(25)は、久しぶりのキャンパスを見て、その寂れぶりに愕然(がくぜん)とした様子。「在学時に先生が突然いなくなって、気付いたら辞めていたというトラブルがあったが、その時も大学側は何の説明もしてくれなかった。在校生の単位や就職はどうなるのか」と後輩らの今後を心配した。
一方、授業を行っていたベテランの非常勤講師の男性は、「学生の面倒は最後まで見る」と言い切る。男性は自家用車で通っているが、ガソリン代などは自腹。男性によると、教職員の中には新幹線で通っている人もいるという。男性は「私はこの大学の雰囲気が大好き。悪いのは経営者であって学生には何の罪もない」と強調した。
創造学園大の建学の精神は「行学一致」。禅の思想で、真理を求めるという一点においては一如であるという意味だ。それが「創造」の原動力になるという。在校生を抱えた学校法人に対する解散命令という前例のない事態に陥るようだと若き「創造」の芽を摘むことになる。歴代経営者の責任は重いと感じた。(伊藤徳裕)
最終更新:10月13日(土)7時55分