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スマートフォンの理想と現実
【第35回】 2012年10月12日
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クロサカタツヤ [株式会社 企/クロサカタツヤ事務所代表]

ソフトバンクが米携帯大手に出資を検討
スプリントとはどんな会社か、その狙いと影響は

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 ただし、5000万件超の契約件数とはいえ、ベライゾンが2億件弱、AT&Tワイヤレスが1億件前後という中で、市場の中での位置づけは厳しい。実際、上位2社が通信料金の定額制を早々にギブアップ「できた」のに対し、スプリントはこの対応が遅れてしまった。スプリントの顧客基盤(とそれを支えるインフラ)が脆弱であり、マーケティングの観点から定額制を放棄できなかったからだと考えられる。

 こうした競争環境に加え、CDMA規格の将来的な発展がほぼなくなったことから、スプリントは次世代通信規格のLTEへの移行を進めようとしている。2009年夏には、世界最大の通信機器会社であるスウェーデンのエリクソンと、通信網の運営に関する委託契約に合意した。7年間で最大50億ドルを支払って、通信インフラの敷設や運用の一切をエリクソンに委託し、財務負担も含めてベンダー主導での移行を進めようということである(参考記事)。

 こうした施策は、当初「通信事業者のバランスシートを軽くする(財務負担を改善する)もの」として、注目を集めていた。しかしここ数年のスマートフォン普及の荒波は、そうした目論見さえも成立を困難とさせるほどのものであり、結果として経営状況は前述の通り。2012年4-6月期の当期損益は13.7億ドル強の赤字が出ており、財務状況も悪い。インフラの移行も含め、将来的なオプションが見通せない状況に入っていた。

 一方、スプリント傘下には、モバイルWiMAXからTD-LTEへの転身を目論む、クリアワイヤという通信事業者も存在する。TD-LTEをごくかいつまんで説明すると、LTEの流派の一つで、中国のベンダーや通信事業者が中心となって開発が進められている規格である。

 TD-LTEといえば、日本でも、かつてウィルコムがこの技術と近似したXGPの開発を進めていた。その後ウィルコムが経営破綻の末にソフトバンク傘下となり、現在はAXGPとして展開されている。グローバルTD-LTEイニシアティブという業界団体にも両者とも参加しており、クリアワイヤ社とソフトバンクの距離は、とても近い。

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クロサカタツヤ[株式会社 企/クロサカタツヤ事務所代表]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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