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エキスパート・コラム
第26回 グローバル・キャッシュ・マネジメント(GCM)
~ハード・カレンシーとローカル・カレンシーの違いに注意~

今回はグローバル・キャッシュ・マネジメント(GCM)を取り上げます。ますますグローバル化する経営環境において、外貨の扱いは非常に重要な問題です。特に、2008年のリーマンショックや欧州通貨危機の影響で、為替相場は非常に不安定であり、為替リスクの回避はグローバル企業の経営者及び経理担当者の方々にとっては非常に大きな問題となっています。今回は特に、連結会計システムを用いた為替リスク対処法について取り上げたいと思います。
今回も特に断らない限り、決算期は3月末とし、消費税等は除外して考えるものとします。


§1.連結会計の基本原理

前回までと同様に、連結会計常務を10個のステップに分けて考えます。今回は、特に①⑥⑧⑨⑩に関係があります。

  ①子会社データ取得
  ②子会社データのチェック → 子会社側にフィード・バック
  ③子会社データのセントラル修正 (必要な場合のみ)
  ④子会社データのプレ連結修正 (必要な場合のみ)
  ⑤子会社データの会計基準変換による修正 (必要な場合のみ)
  ⑥外貨換算
  ⑦債権債務・売買取引等の照合 → 子会社側にフィード・バック
  ⑧合算
  ⑨資本連結、連結消去 (ELE)、及び、持分法仕訳
  ⑩開示


連結決算業務の流れ
図1.1 連結決算業務の流れ


 特に、今回の最大のテーマである「連結会計システムを用いた為替リスクへの対処」については、親会社の経理・経営企画担当者と子会社の経理担当者の連携が重要となります。


§2.通貨の種類と換金可能性

[1]通貨の種類
 現在、世界には約150種類の通貨が流通しています(ここでは補助通貨をカウントしていない)。
この内、貿易の決済に使える通貨(多くの国々で流通し、輸入代金の支払いに使える通貨)を「ハード・カレンシー」または「国際決済通貨」と呼び、それ以外の通貨を「ローカル・カレンシー」または「ソフト・カレンシー」と呼びます。
 「ハード・カレンシー」については、学者等の見解に差異があり、明確な定義はありませんが、(現在の基軸通貨である)「米ドル」、「日本円」、「ユーロ」、「英ポンド」の四大通貨に加え、「カナダドル(加ドル)」、「スイスフラン」、「スウェーデン・クローネ」がハード・カレンシーとされることが多いようです。現在、日本では「オーストラリア・ドル(豪ドル)」、「ニュージーランド・ドル(NZドル)」も相場が開設されており、徐々に流動性は高まっています。ただ、「ハード・カレンシー」は、約150種類の通貨が流通している中の僅か10種類に満たないということには留意する必要があります。
 また、IMF(国際通貨基金)は「米ドル」、「日本円」、「ユーロ」、「英ポンド」の四大通貨を「自由な流通と交換を保証する通貨」として「自由利用可能通貨(Freely Usable Currencies)」と定義しています。以上を纏めると次のようになります。

通貨の種類
表2.1. 通貨の種類

自由利用可能通貨同士の為替の市場では活発な取引が日常的に行われており、為替レートも極端に変動することは稀です。また、よほどのことがない限り「売り注文量」と「買い注文量」の折り合いがつくため、取引不成立ということも殆どありません。日常、報道番組等の「為替と株の値動き」のコーナーでは、為替相場がリアルタイムで変動している場面を見ることが多いため、日本人の間では「任意の通貨Aと任意の通貨Bが任意のタイミングで交換できる」と思い込んでいる人は少なくないようです。しかし、それは、米ドル/日本円、ユーロ/日本円、英ポンド/日本円などの自由利用可能通貨同志の取引のみに当てはまることであり、ローカル・カレンシーに関する為替取引においては全く事情が異なります。

※1.米ドル/英ポンドは、世界レベルでは、最も取引量の多い為替取引である。

※2.通貨の種類による流動性・交換可能性の差異については、筆者の場合、父親が銀行員であったために日常的に薫陶を受けていたため極常識的なことであった。この1ヶ月間、いろいろな方々にヒヤリングしたが、全くイメージが湧かない人が多数であった。

そもそも「自国の通貨で輸入決済ができる」ということは、世界レベルで見れば、実は非常に有難いことです。インターネットで外国の商品を円建てのクレジット・カードで同時決済し直接購入することができるのは日本円がハード・カレンシーであることに依拠しています。このことについては、極当たり前のことに感じる日本人は少なくありませんが、これはIMFの定める「自由利用可能通貨」を擁する日本・米国・英国及びユーロ圏の特権です。つまり、他の国々の場合は、ドル建てのクレジット・カードなどが必要となりますし、ドル預金の残高証明が必要になる場合もあります。
また、発展途上国など自国の通貨が「ハード・カレンシー」ではない国の場合、輸入代金の決済のためには、事前に「米ドル」や「日本円」などの「ハード・カレンシー」を取得する必要があります。1997年のアジア通貨危機の際、隣国の韓国はIMF管理下に置かれましたが、この際、IMFが韓国の「外貨準備高」を最重要視したのはそのためです。

※経済危機に揺れるギリシャについて、我が国の一部マスコミは「ギリシャ、ユーロ離脱か?」としきりに報じているが、筆者は決してそれは有り得ないと考えている。何故なら、「自国の通貨で輸入できる」という特権は、その国の企業にとっても、国民生活にとっても非常に大きい既得権であるからである。ギリシャ人は1823年のギリシャ独立で370年振りに独立国を回復したが、1919年の聖地アトス山を回復するまで実に96年を要し、180年間の艱難辛苦の後に2003年のユーロ導入により「ハード・カレンシー」を回復した。15世紀以来実に550年振りのことである。この貴重な既得権を簡単に手放すとは考えられないからである。また、ギリシャがEUに留め置くことは、キリスト教文明にとってのReconcistaの象徴であり、ギリシャがEUから去ることは自らの自己否定に直結することを彼らはよく理解しているからである。

§3~§5において、GCMの観点から、為替リスクの回避方法について考察しますが、この「ハード・カレンシー」と「ローカル・カレンシー」の違いについては明確に理解しておくことが必要です。 前回も述べたように、日本円はアジアで唯一のハード・カレンシーであり、アジアで唯一の自由利用可能通貨である。これは我が国が、世界第3位のGDP(1人当たりでは第2位)を誇る経済大国であり、国際連合の安全保障理事会の常任理事国も視野に入るようなG8先進国であるという国際的地位に依拠しています。我々日本人はもっと自身を持つべきである。敗戦国であるにも拘らず、我が国がこの地位を維持できているのは、昭和の先輩方の血の滲むような努力のおかげであり、我々は決してこの恩を忘れてはならないと思います。そして、「G8先進国であるという国際的地位と、G8先進国の国民として我々が享受している生活水準・教育水準・モラル」だけは、次の世代に受け継いで行くことは我々の世代に課せられた義務であり、これらを失うことは決してあってはならないと考えます。勿論、税制改革・社会保障改革にとどまらず、エネルギー政策についても他のG8先進国との比較が最も重要であることは言うまでもありません。

[2]通貨交換可能性
「ローカル・カレンシー」が貿易の決済(輸入代金の支払い)に使えないということは、「ローカル・カレンシー」は発行した国の外では殆ど価値を持たないことを意味しています。そのため、為替の現場では「ハード・カレンシー ⇒ ローカル・カレンシー」の交換を希望する人は「ローカル・カレンシー ⇒ ハード・カレンシー」の交換を希望する人よりも圧倒的に少ないという状況が恒常的に存在しています(これを「売り注文」と「買い注文」の慢性的不均衡と呼ぶ)。為替は双方の合意があって初めて成立する取引ですから、市場が整備されていない取引となると、多額の「ローカル・カレンシー ⇒ ハード・カレンシー」の交換は非常に困難であり、事実上不利なレートを強いられる場合や、一部しか交換できないような事態も頻発します。このローカル・カレンシーの通貨交換困難性は、簿記の教科書には殆ど触れられていませんが、グローバル企業にとっては非常に深刻な問題です。

ローカル・カレンシーの交換困難性の理由
図2.2. ローカル・カレンシーの交換困難性の理由

上記のような場合で、左側に1日本円=10C1で1000万円分の交換を希望している人が1人いて、右側に1日本円=10C1で同じく1000万円分の交換を希望している人が10人いる場合、日本円を1/10ずつ分ける裁定が行われる場合があります。これを「按分取引」といいます。この場合、左側の人は全額を通貨C1に交換することができましたが、右側の人は必要額の10%しか交換できなかったことになります。このように、ローカル・カレンシー⇒ハード・カレンシーの交換は、所要額を調達するができないような事態も日常茶飯事に発生します。

これまでのことをまとめると次のようになります。

通貨の種類及び為替市場の現状
表2.3. 通貨の種類及び為替市場の現状

また、一般的にローカル・カレンシーに関する為替相場は不安定であり、乱高下する傾向にあります。上記の「換金困難性」と相俟って、多額のローカル・カレンシーを保有することは、グローバル企業にとって多額の為替差損のリスクを抱えることを意味します。我が国の多くのグローバル企業では、円建て取引を増やすことや、ローカル・カレンシー建て売上発生時の早期の「円転」手段の確立に腐心しています。このことは、企業経営のみならず、国や地方公共団体の運営においても常に留意するべき事項であり、国債を始めとする外貨建債券や為替スワップ協定の締結においても同様のリスクを意識する必要があることは言うまでもありません。

※1.為替下落時に金相場への回避を考えるトレーダーも多いが、金を購入する場合もローカル・カレンシーでは困難である。

※2.これまでに、セミナーや講演などで、何度かローカル・カレンシーの交換困難性についてお話ししたが、イメージが湧きにくい人は多いようである。「商店街に小さなタコ焼き屋があって、そのタコ焼き屋でしか使えない商品券を1000万円分購入した場合や、1億円分購入した場合」のことを想像してもらうとイメージが湧きやすいようである。

[3]為替予約
 銀行の業務には、大きく分けて「預金」、「融資」、「為替」の三業務があります。「為替」の中で重要な業務の中に「為替予約」があります。「為替予約」とは、一定の期間後に、「一定のレートで外貨の購入など通貨の交換を約定する取引」のことですが、ハード・カレンシーの場合は主として為替リスクのヘッジのために用います。例えば、X1年1月15日における米ドル/日本円の相場が、1米ドル=78円であり、今後、円高が予想される場合にドル建て債権の為替差損をヘッジするために、X1年4月30日決済の1米ドル=82円でドル売り円買いの為替予約を行うような場合がこれに該当します。
  一方、ローカル・カレンシーの場合は、上記の交換困難性対策としても用いられます。現実問題として、ローカル・カレンシー ⇒ ハード・カレンシーの交換において、按分取引を強いられることなく、所要額の交換を確実に行うためには、数ヶ月前からの為替予約が不可欠です。しかし、そのための手数料は一般にかなり大きな負担を伴うものであり、頭の痛い問題です。ローカル・カレンシーの交換困難性は、グローバル企業にとって、経営を圧迫する非常に大きな課題でもあります。

[4]一般に、発展途上国では、自国の通貨やハード・カレンシーの持ち出しについて厳しい制限や送金制限があります。GCMを考える上で、この通貨流動性に関する制限は大きなネックとなります。また、持出制限や送金制限については先進国にも見られることで、日本でも旅行者が出国の際に携行して持ち出せる日本円は500万円が上限です(持込は上限なし。外貨については持込・持出ともに上限なし。ただし、いずれも100万円超(外貨の場合は換算ベース)の場合は税関に申告が必要)。
 また、日本から外国に送金する場合、一般に2000円~2500円程度の手数料が掛かりますが、受け取り側でも手数料が発生することに注意が必要です。この件については、別の機会に詳述したいと思います。


§3. 為替リスク回避のための対策(1) ハード・カレンシーの場合

 現行の会計基準においては、JGAAPにおいてもIFRSにおいても、「外貨」、「外貨建預金」、「外貨建債権・債務」、「外貨建有価証券」などの「外貨」、「外貨建預金」、「外貨建債権・債務」、「外貨建て有価証券」などの為替差損益は当期のPLに影響します。 従って、少なくとも四半期末毎にはそのリスク回避のための手段を講ずることが必要となります。折角本業で儲かっていても、為替差損のために連結ベースで最終利益がマイナスとなれば株価が下落するだけでなく、新規融資等にもマイナスとなり資金繰りにも影響することになります。

 為替差損リスクが発生した場合、四半期末日における保有する「外貨」、「外貨建て預金」については安全な通貨または「金(Au)」に回避ことが必要です。また、すぐには動かせない定期預金や有価証券についてはヘッジを掛けることになります。なお、「売掛金」や「買掛金」については、四半期末日における残高の予想を行うことが必要であり、確実にリスクを回避するためには、四半期末の着地予想を四半期末日の二週間前までには用意しておくことが必要となります。海外子会社については、四半期末日の二週間前までに本社側にて情報収集をしておくことが必要になります。
 また、売買においても、どの通貨建てにするかは重要な問題です。次の設例で考えます。

設例 3.1. 国内企業P社は親会社であり、本社は東京にある。A社はその在外子会社であり、英国のロンドンに本社がある。A社はドイツのフランクフルト(M)にあるМ社から原料を購入し、加工し、フランスのパリにあるL社に製品を販売している。
 X1年6月1日において1ポンド=1.25ユーロ=125円であった。A社はX1年6月1日付で、M社と10,000ポンドの原材料購入契約を、L社と15,000ポンドの製品販売契約を締結する予定である。

X1年6月30日(第1四半期末)において、次の予想が成り立つ場合、A社の立場からすると、取引通貨はどのようにするのが適切であるか? ただし、両取引の決済はX1年7月31日とする。A社は通常、ユーロとポンドを併用しており、両通貨での支払に問題はないものとする。また、通貨建ての選択権は支払側にあるものとする。また、休日を除いて為替取引におけるリードタイムは発生しないものとし、為替に関する手数料等は考慮しないものとする。またМ社及びL社はP社グループの会社ではない。
(1)1ポンド=1.10ユーロ=125円 (ポンドに対して、ユーロ高、円は現状維持)
(2)1ポンド=1.10ユーロ=110円 (ポンドに対して、ユーロ高円安)
(3)1ポンド=1.10ユーロ=140円 (ポンドに対して、ユーロ高円安)
(4)1ポンド=1.40ユーロ=125円 (ポンドに対して、ユーロ高、円は現状維持)
(5)1ポンド=1.40ユーロ=110円 (ポンドに対して、ユーロ高円安)
(6)1ポンド=1.40ユーロ=140円 (ポンドに対して、ユーロ高円安)
(7)1ポンド=1.25ユーロ=125円 (ポンドに対して、ユーロは現状維持、円は現状維持)
(8)1ポンド=1.25ユーロ=110円 (ポンドに対して、ユーロは現状維持、円安)
(9)1ポンド=1.25ユーロ=140円 (ポンドに対して、ユーロは現状維持、円安)


通貨の種類及び為替市場の現状
図3.1 取引関係図(ハード・カレンシーのみ)

  為替レートに関するリスク対策を考える際には、本設例にあるような場合分けが常に必要となります。本設例においては「A社の立場」と書かれていることに注意が必要です。

※一般的に我が国のグローバル企業の場合、本説例の日本円、ユーロ、英ポンドに加えて米ドルを考慮する必要かある。また、一部の企業においては、これに加えて、加ドル、豪ドル、NZドル、スイスフラン等を考慮する必要がある場合がある。

○X1年6月1日の取引(英ポンド建て) 売掛金(A,L) 15,000 / 売上(A,L) 15,000 (3.1)
原材料(A,M) 10,000 / 買掛金(A,M) 10,000 (3.2)
○X1年6月1日の取引(ユーロ建て) 売掛金(A,L) 18,750 / 売上(A,L) 18,750 (3.3)
原材料(A,M) 12,500 / 買掛金(A,M) 12,500 (3.4)

(1) 1英ポンド=1.10ユーロ=125円 (英ポンドに対して、ユーロ高、円は現状維持)
自国通貨英ポンドに対するユーロ高が予想されるので、L社との取引(製品売上)はユーロ建てとするように交渉し、М社との取引(材料購入)は英ポンド建てとする。

(2) 1英ポンド=1.10ユーロ=110円 (英ポンドに対して、ユーロ高、円高)
※A社にとって、円相場の影響は考慮する必要がない。従って、(1)と同様の判断をして良い。

(3) 1英ポンド=1.10ユーロ=140円 (英ポンドに対して、ユーロ高円安)
※A社にとって、円相場の影響は考慮する必要がない。従って、(1)と同様の判断をして良い。

(4) 1英ポンド=1.40ユーロ=125円 (英ポンドに対して、ユーロ安、円は現状維持)
自国通貨英ポンドに対するユーロ安が予想されるので、L社との取引(製品売上)は英ポンド建てとするように交渉し、М社との取引(材料購入)はユーロ建てとする。

(5) 1英ポンド=1.40ユーロ=110円 (英ポンドに対して、ユーロ安円高)
※A社にとって、円相場の影響は考慮する必要がない。従って、(4)と同様の判断をして良い。

(6) 1英ポンド=1.40ユーロ=140円 (英ポンドに対して、ユーロ安、円安)
※A社にとって、円相場の影響は考慮する必要がない。従って、(4)と同様の判断をして良い。

(7) 1英ポンド=1.25ユーロ=125円 (英ポンドに対して、ユーロは現状維持、円は現状維持)
現状のユーロの準備高を参考に決定する。あるいは、現状の取引における取引を継続する。なお、為替相場の見通しが不透明な場合は、英ポンドとユーロを併用することも考えられる。

(8) 1英ポンド=1.25ユーロ=110円 (英ポンドに対して、ユーロは現状維持、円高)
※A社にとって、円相場の影響は考慮する必要がない。従って、(7)と同様の判断をして良い。

(9) 1英ポンド=1.25ユーロ=140円 (英ポンドに対して、ユーロは現状維持、円安)
※A社にとって、円相場の影響は考慮する必要がない。従って、(7)と同様の判断をして良い。

続いて、P社グループの立場から考える場合を考えます。

設例 3.2. 設例 3.1.において、「A社の立場」から考えるのではなく、「P社グループの連結決算上の立場」から考えるとどうなるか?


○X1年6月1日の取引(英ポンド建て) 売掛金(A,L) 15,000 / 売上(A,L) 15,000 (3.5)
原材料(A,M) 10,000 / 買掛金(A,M) 10,000 (3.6)
○X1年6月1日の取引(ユーロ建て) 売掛金(A,L) 18,750 / 売上(A,L) 18,750 (3.7)
原材料(A,M) 12,500 / 買掛金(A,M) 12,500 (3.8)
○参考:X1年6月1日の取引(円建て) 売掛金(A,L) 1,875,000 / 売上(A,L) 1,875,000 (3.9)
原材料(A,M) 1,250,000 / 買掛金(A,M) 1,250,000 (3.10)

(1)1英ポンド=1.10ユーロ=125円 (英ポンドに対して、ユーロ高、円は現状維持)
連結通貨円に対するユーロ高が予想されるので、L社との取引(製品売上)はユーロ建てとするように交渉し、М社との取引(材料購入)は英ポンド建てとする。

(2)1英ポンド=1.10ユーロ=110円 (英ポンドに対して、ユーロ高、円高)
連結通貨円に対する英ポンド安が予想される(この場合はユーロ/円相場は現状維持)ので、
L社との取引(製品売上)はユーロ建てとするように交渉し、М社との取引(材料購入)は英ポンド建てとする。

(3)1英ポンド=1.10ユーロ=140円 (英ポンドに対して、ユーロ高円安)
連結通貨円に対する英ポンド高、ユーロ高が予想される。この場合は、更なる場合分けが必要である。

(4)1英ポンド=1.40ユーロ=125円 (英ポンドに対して、ユーロ安、円は現状維持)
連結通貨円に対するユーロ安が予想されるので、L社との取引(製品売上)は英ポンド建てとするように交渉し、М社との取引(材料購入)はユーロ建てとする。

(5)1英ポンド=1.40ユーロ=110円 (英ポンドに対して、ユーロ安円高)
連結通貨円に対する英ポンド安、ユーロ安が予想される。この場合は、更なる場合分けが必要である。

(6)1英ポンド=1.40ユーロ=140円 (英ポンドに対して、ユーロ安、円安)
連結通貨円に対する英ポンド高が予想される(この場合はユーロ/円相場は現状維持)ので、
L社との取引(製品売上)は英ポンド建てとするように交渉し、М社との取引(材料購入)はユーロ建てとする。

(7)1英ポンド=1.25ユーロ=125円 (英ポンドに対して、ユーロは現状維持、円は現状維持)
現状のユーロの準備高を参考に決定する。あるいは、現状の取引における取引を継続する。なお、為替相場の見通しが不透明な場合は、英ポンドとユーロを併用することも考えられる。

(8)1英ポンド=1.25ユーロ=110円 (英ポンドに対して、ユーロは現状維持、円高)
連結通貨円に対する英ポンド安、ユーロ安が予想される。この場合は、更なる場合分けが必要である。

(9)1英ポンド=1.25ユーロ=140円 (英ポンドに対して、ユーロは現状維持、円安)
連結通貨円に対する英ポンド高、ユーロ高が予想される。この場合は、更なる場合分けが必要である。

このように、為替リスク対策の為の施策においては、「連結会計上の立場」と「子会社単体の立場」では利害が対立することになります。従って、この調整は非常に重要となります。特に「子会社の経営者に対する業績評価」の観点では特段の配慮が求められることになると思われます。

※A社が持分法適用であって他の会社の子会社であるような場合は、設例3.1や3.2のような方策をとることは事実上不可能である。従って、他の方法でリスク・ヘッジすることが必要となる。


§4. 為替リスク回避のための対策(2) ローカル・カレンシーの場合

 前述のように、ローカル・カレンシーの場合は、交換困難性がネックとなるため、為替予約が必要となります。まず、次の設例で考えます。

設例 4.1. 国内企業P社は親会社であり、本社は東京にある。A社はその在外子会社であり、英国のロンドンに本社がある。A社は東南アジアのR国(通貨C2)にあるО社から原料を購入し、加工し、南米のQ国(通貨C1)にあるN社に製品を販売することになった。
 X1年10月1日において1英ポンド=1250C1=1250C2であった。A社はX1年6月1日付で、M社と10,000英ポンドの原材料購入契約を、L社と15,000英ポンドの製品販売契約を締結する予定である。

X1年12月31日(第3四半期末)において、次の予想が成り立つ場合、A社の立場からすると、取引通貨はどのようにするのが適切であるか? ただし、両取引の決済はX2年2月28日とする。A社は通常、ユーロと英ポンドと米ドルを併用しており、3通貨での支払に問題はないものとする。また、通貨建ての選択権は支払側にあるものとする。また、3通貨とC1/C2との為替においては上記金額の交換には最低でも3ヶ月の為替予約が必要である。
なお、N社及びО社はP社グループの会社ではない。
(1) 1英ポンド=1100C1=1250C2円 (英ポンドに対して、C1高、C2は現状維持)
(2) 1英ポンド=1100C1=1100C2円 (英ポンドに対して、C1高、C2高)
(3) 1英ポンド=1100C1=1400C2円 (英ポンドに対して、C1高C2安)
(4) 1英ポンド=1400C1=1250C2円 (英ポンドに対して、C1高、C2円は現状維持)
(5) 1英ポンド=1400C1=1100C2円 (英ポンドに対して、C1高C2高)
(6) 1英ポンド=1400C1=1400C2円 (英ポンドに対して、C1高、C2安)
(7) 1英ポンド=1250C1=1250C2円 (英ポンドに対して、C1は現状維持、C2は現状維持)
(8) 1英ポンド=1250C1=1100C2円 (英ポンドに対して、C1は現状維持、C2高)
(9) 1英ポンド=1250C1=1400C2円 (英ポンドに対して、C1は現状維持、C2安)


まず、取引関係図は次のようになる。

取引関係図(ローカル・カレンシーを含む)
図4.1. 取引関係図(ローカル・カレンシーを含む)

実は、この場合は(1)~(9)の全ての場合について、次のようにするのが正解となる。

N社との取引(製品売上)は米ドル建てとするように交渉し、О社との取引(材料購入)は英ポンドとの相場予測を参考に、米ドル建て/円建てとする。

※1.通貨C1はハード・カレンシーに換金するのが困難である。南米では自由利用可能通過の内、英ポンド、ユーロ、日本円の流通は少ないので米ドルが最も確実である。

※2.通貨C2はハード・カレンシーに換金するのが困難である。東南アジアでは自由利用可能通過の内、英ポンド、ユーロの流通は少ないので米ドル建て/円建てとするのが確実である。

続いて、P社グループの立場から考える場合を考えます。

設例 4.2. 設例 4.1.において、「A社の立場」から考えるのではなく、「P社グループの連結決算上の立場」から考えるとどうなるか?


この場合も(1)~(9)の全ての場合について、次のようにするのが正解となる。ただし、参考にすべき相場が異なることに注意。

N社との取引(製品売上)は米ドル建てとするように交渉し、О社との取引(材料購入)は米ドル/日本円の相場予測を参考に、米ドル建て/円建てとする。

※1.通貨C1はハード・カレンシーに換金するのが困難である。南米では自由利用可能通過の内、英ポンド、ユーロ、日本円の流通は少ないので米ドルが最も確実である。

※2.通貨C2はハード・カレンシーに換金するのが困難である。東南アジアでは自由利用可能通過の内、英ポンド、ユーロの流通は少ないので米ドル建て/円建てとするのが確実である。連結ベースで考えると、円建てにすることにより、為替リスクを回避することが可能となる。

 このように、ローカル・カレンシーを有する国の企業との取引は、ハード・カレンシーの場合とは全く対応が異なることが分かります。簿記の教科書等には殆ど記載されていないことですが、実務上は非常に重要な留意事項です。

※先日、読者の方から、「中国の人民元と日本円の直接交換が開始されたので、もはや人民元については交換可能性については心配無いのではないか?」との御質問を頂いた。しかし、市場規模はまだ小さく、かつ、「決済」ベースである。つまり、事前の為替予約が必要であり、円/ドルのようにその場で交換できるわけではない。ただ、20年後のことを考えると、中国の市場は現在よりも更に拡大しており、「人民元」の流動性はさらに高まっていると考えられるので、交換は現在よりも容易になっていると思われる。


§5. 連結会計システムSAP-BOFCを用いた為替リスク回避のための対策

[1] 多段階階層連結の機能の確保
2010年4月以降に開始される年度から、JGAAPにおいても「マネジメント・アプローチ」による積上型の「セグメント報告書」が求められるようになりました。通常、積上げの単位の基礎となるSBUは会社(法人)の一部であるため、「マネジメント・アプローチ」型のセグメント報告書を作成するためには、最低でも2段階以上の積上げが必要となりました。従って、「マネジメント・アプローチ」型のセグメント報告書をシステムで自動作成するためには、多段階階層連結機能がサポートされていることが最低限必要となります。
多段階階層セグメントのイメージは例えば次のようになります(第13回の再掲)。

多段階階層セグメント
図5.1. 多段階階層セグメント

 図5.1では、セグメントを「事業」で定義しています。法定帳票としての「マネジメント・アプローチ」ベースのセグメント報告書においては、企業グループの最高意思決定機関が実際の意思決定に用いている資料に基づいた報告が求められます。従って、セグメントの取り方については企業グループによって異なります(詳細は第13回を参照)。例えば、次のような取り方が多数用いられています。

① 「事業」のみで多階層を構成する
② 「所在地」のみで多階層を構成する(大陸→国→地方行政区分など)
③最上位に「事業」を配し、「事業」について多段階のセグメントを構成し、その下に「所在地」を組み合せる。

[2]使用通貨を軸としたセグメントの設定
 ここでは、「セグメント」を「通貨」で定義し、SBUは「会社別・使用通貨別の報告単位(Reporting Unit)」とします。次の設定例で考えます。

設例5.1. 内国法人であるP社には、国内子会社A社及びB社のほか、米国New Yorkに子会社C社、Los Angelesに子会社D社、ドイツのBerlinに子会社E社、Frankfurt am Mainに子会社F社、英国のLondonにG社、中国の北京(Beijing)にH社、オーストラリアのMelbourneにI社がある。各社の使用する通貨は次の通りである。


各社毎の通貨の使用状況(1)
表5.2. 各社毎の通貨の使用状況(1)

※筆者は「こだわり派」であるので、ドイツ統一後はFrankfurt am Main とFrankfurt an der Oderを必ず区別することにしている。
ここで、表5.2の◎及び○をSBUとします。SBUは全部で49個となります。各セグメントに次のような番号を付けます。1桁目は通貨を、2桁目は大陸を表しています。

各社毎の通貨の使用状況(2)
表5.3. 各社毎の通貨の使用状況(2)

この場合、セグメントの積上表は、次のようになります。

セグメント積上げ図
セグメント積上げ図
図5.4 セグメント積上げ図

[3]SBU毎のデータの入力
続いて、49個のSBU毎の使用通貨ベースでのBS、BS(増減明細付き)、PLを作成します。また、連結消去に必要な相手先別明細を作成します。 なお、絶対的な数値のシミュレーションを行わず、現状のまま推移した場合と為替上の対処 (外貨の交換、売買取引における通貨建ての変更)を行った場合の差異を相対的に比較するだけならば、各SBUの値には、一部の勘定科目だけを入力し、BSのバランスをとるためには「調整用勘定」(SAP-BOFCでは「リンク・アカウント」)を使用するという簡便的な方法もあります。
  また、連結上の操作についても、図1.1の①⑥⑧及び⑨の一部(債権債務の相殺と売買の相殺のみ)に留めるという簡易的な方法もあります。

[4]為替のシナリオ
為替のシナリオを複数設定します。例えば、次のようになります。

為替シミュレーション比較シナリオ
表5.5. 為替シミュレーション比較シナリオ

[5]シミュレーションの実行
  SAP-BOFCでは、次のようにして、同一会計期における異なる為替シナリオによる連結処理を同時に行うことが可能です。従って、上記の表5.5のように複数の為替シナリオに基づく処理が可能です。

2012年3月期の実際のレートによる連結の定義 2012年3月期の「ユーロ大幅下落ドル安」のシミュレーションの連結の定義
複数の連結定義 複数の連結定義
図5.6.複数の連結定義

 このように為替シミュレーションを効率的に行うためには、異なる為替レート・シナリオによる連結操作を同時に行えることが必要です。

Check Point 5.2: SAP-BOFCは、異なる為替レート・シナリオによる連結操作を同時に行うことが可能であるか?

〔検証結果〕SAP-BOFCは、異なる為替レート・シナリオによる連結操作を同時に行うことが可能である。また、相互の比較も行うことができる。


なお、この機能は、極一部の連結会計システムに限られていることに注意が必要です。

[6]為替リスク回避処置
 為替シミュレーションの結果、現状のまま推移すると、期末や四半期において、在外子会社の保有する「外貨」及び「外貨建ての債権・債務」及び「外貨建て有価証券」等に関する為替相場の影響で多額の為替差損が発生することが判明した場合、防衛策をとる必要があります。この場合、有効な手段としては次のような方法があります。

○当該通貨がハード・カレンシーの場合
(1)現金等については安全な通貨な交換する。
(2)為替予約により、為替ヘッジを設定する。
(3)取引における通貨が変更できる場合は、相手方に変更を依頼する。あるいは、次回のロットから取引通貨を変更する。
(4)売却可能な有価証券は売却した上で、安全な通貨に交換する。
(5)一時的に、スイスフランやカナダドルなどに回避する。
(6)相場状況によるが、金(または原油)に変える。

○当該通貨がローカル・カレンシーの場合
一般に機動的なリスク回避は難しいので、日常的に資金計画・事業計画に基づく為替予約の実施によって円滑に自由利用可能通貨に転換し、保有高を最低限に抑えるようにする。

 これらの処置を実施すると、[3]で作成した各SBUのBS,BS(増減明細付き),PLの値は変化することになります。SAP-BOFCでは「カテゴリ」を変更することで、これらのリスク回避処置の実施前と実施後のデータを双方保持することができます。リスク回避処置実施後のデータについても、[4][5]の操作を実行することで、同様に為替シミュレーションを実施することができます。

[7]為替リスク回避処置の実行の可否の判断
 SAP-BOFCでは「カテゴリ」を跨るデータの比較を単一のレポートにおいて行うことが可能です。次のように、計画した「為替リスク回避処置」の実行前と実行後の損益の比較を容易に行うことができます。

表5.7. 為替シミュレーション比較結果(データ抽出の上Excelで加工)
表5.7. 為替シミュレーション比較結果(データ抽出の上Excelで加工)

これにより、為替リスク回避処置の実行の可否の判断に供することが可能となります。上図の場合、全てのシナリオにおいて有利な変更であることがわかりますので、「実行するべき」と判断する有力なデータとなります。

[8]補足:実際に資金移動を行う場合や通貨交換を行う場合のコストの考慮
決算時の「外貨換算」は仮想上の変換であり、実際に交換するのに必要なコストである手数料、口座使用料、為替予約コストは考慮されていません。しかし、実際に資金移動を行う場合は、送金手数料や口座使用料が必要になり、国によってはかなり高価になります。また、通貨交換を行う場合には、換金のための手数料のほか、為替予約の手数料が必要となりますが、これもかなり高価になります。
従って、[7]で述べた保有外貨の通貨交換など、為替リスク回避処置を行う場合には、厳密にはこれらの諸経費も考慮する必要があります。


§6. 補足1: 最新の電力事情

[1]配送電の自由化(複数化)
発電と送電の分離は福島第一原発の事故以前から議論されてきたことであるが、いよいよ、実現 に向けて進みつつあります。前回のあとがきの<コメント> で指摘しましたように、8月26日の報道にあるように、これまでの「電力会社の通信事業への参入」の逆パターンである「通信会社の電力事業への参入」が実現することになりました(Reference[3])。

 既に経済産業省は、発電と送電・配電は分離の方向(Reference[4])を打ち出していますが、真の電力の自由化のためには小売の自由化が不可欠であり、そのためには、「送電」と「配電」の分離も必要であると思われます。既に諸外国では「送電」と「配電」の分離が行われています。これについては、G7先進国に限らず、一部の発展途上国においても実現しています(Reference[5],[6],[7])。

※現行法では、「送電」と「配電」は電圧によって区別され、長距離用の7000V超の「特別高圧」のものを「送電」と呼び、7000V以下のもの「配電」と定義している。なお、「高圧」の定義は、直流750V超、交流は600V超である。

一部報道にもあるように、東京都内の複数の生活協同組合が、電力を共同購入し一般家庭でも原発以外の電力を選べる仕組みの検討に入ったことが、明らかになりました(Reference[8])。 これについては、筆者も居住する世田谷区の保坂展人区長は「電力自由化へ社会実証モデル地域となれるよう、特区的な扱いを国に求める」旨の発言をしています。世田谷区では現在、区庁舎などの施設の電力を全てPPSと太陽光発電でまかなっており、世田谷サービス公社を通じてソーラー・パネルの設置を積極的に推進しています(Reference[9],[10])。また、東京の一部 の私鉄が駅舎の天井部分にソーラー・パネルを敷き詰めたり、JAが休耕田へのソーラー・パネルの設置を推進するなど大きな動きが出ています。
また、大阪市の有名な機械製造業(東証一部上場)は、船舶におけるソーラー・パネルとエンジンによる発電と商用電源の供給を制御するマイクロ・グリッドの実用化に成功しています。今後の応用が期待できます。

[2]再生可能エネルギー技術の急速な発展
最近、再生可能エネルギー技術は急速な発展を遂げています。神奈川県の「ソーラーテクノパーク」では発電効率26%を達成しました。これは通常の2倍以上の発電効率を誇るもので世界最高水準と言えます(Reference[11])。

また、「脱原発」を決定したドイツでは洋上風力発電とノルウェーの(揚水型)水力発電を組み合わせることで、中央ヨーロッパ再生可能エネルギーによる電力の安定供給を実現しようとしています。ここでは風力発電の直流化に対応した高性能半導体スイッチの開発によって送電ロスを低減させたことが実用化の鍵となりました(Reference[12])。「揚水型水力発電所」と「風力発電所」を組み合わせることは、風力発電の不安定性を補うだけではなく、「運動エネルギー」と「位置エネルギー」への変換(振り子の原理と同じ)による「蓄電」であり、「蓄電池によらない蓄電」であり、まさにノーベル賞級の画期的な発明と言えます。さすが、ドイツ人らしい環境に配慮した素晴らしい着想だと思います。
このことは、風力発電に限らず、天候の変化による発電の不安定性が懸念されているソーラー・パネル発電や潮汐発電にも応用が可能です。我が国はノルウェーと同様に急峻な山岳地帯が数多く存在し、多数のダム(揚水機能付き)が存在しています。風力発電、ソーラー・パネル発電、潮汐発電と組み合わせることで大きな威力を発揮することになります。また、このことは同時に、現在使用していないダムの活用にも資することになります。再開が決定した群馬県の八ッ場ダムも、当然、治水機能だけではなく、この意味での利用価値があると考えられる。日本政府は直ちに研究に着手するべきである。

※このことが実現した背景には、ドイツとノルウェーがEU加盟国であることが挙げられる。”In Varietate Concordia”(多様性の中の統一)を掲げるEUは特定の加盟国の利害に偏することが無いようにコンセンサス方式を重視し、1つの言語に無理やり統一することなく25の言語を公用語としている。このように、加盟国の事情を考慮し、多様性を尊重し、大国も小国も平等な立場で平和的に統合されるEUのシステムは、我々日本人にとって非常に参考になるものである。 ここまで結実するためにEUは50年間以上の時間を掛けている。このように国と国の深い関係は、議論を公開して公平に進めることが必要である。決して、秘密主義や特定の国に利害が偏するような経済協定であってはならない。

[3]その他の電力多様化
 一部のガス会社は、ソーラー・パネルによる発電とガスを切り替えるシステムを開発しました。これは、電力の供給源を切り替えるスマート・グリッドやマイクロ・グリッドと異なり、種類の異なるエネルギー源の切り替えであり、画期的な発明と言えます(Reference[13])。

また、スターリング・エンジン(外部から熱を加えれば作動するエンジン)も興味深い動力です。太陽光や電力に限らず、工場や清掃工場の排熱でも温度が高ければどんなものでも燃料になります。スターリング・エンジン自体は200年前に考案されましたが、これまで実用化されていませんでしたが、近年、その実用化に向けての研究が進んでいます。温度差のある環境さえ用意できれば動かすことが可能であり、工場等の排熱を利用した発電が可能です。しかも、天候によらず発電が可能であり、太陽光パネルよりも発電効率が良いのが特徴です(Reference[14])。しかも、地球温暖化対策にもなります。日本政府は直ちに研究に着手するべきです。

※温度差をエネルギー源にしているということは、どの程度まで「熱力学第二法則」の限界値に迫れるか、筆者にとっては大変興味深いところである。

[4]まとめ
福島第一原発の事故を契機に、「脱原発」を支持する世論は非常に強くなっています。また、今年の夏、関西電力管内を除き、原子力発電所を再稼働することなく乗り切れたことは、再稼働のあり方についても考慮するべき事項として認識されています。筆者としては、これもAll or Nothingではなく、「全国一律に○○年までに原発をゼロにする」という粗雑な議論をするのではなく、地域ごとに実現性の綿密な検討が行われて然るべきであると思います。また、50Hz/60Hz問題の解決のためにも周波数変換施設の増強は急務であり、電力融通の可能性を拡大するべきです。また、建設再開が決定した群馬県の八ッ場ダムのように、新設する大規模発電所においては50Hz/60Hz両方の発電が可能な設計にするなど、柔軟性の確保のための工夫が求められます。
また、「脱原発」の流れと並行して、「再生可能エネルギーの普及」及び「電力の地産地消化」の動きは着実に進んでいますが、「配電」の複数化(自由化)は、この流れを大きくすすめるとともに、新たな産業・雇用の創出につながると期待できます(Reference[6])。

※「エネルギーの地産地消」は防災の観点からも有用である。例えば、ゴルフ場のOBゾーンや境界ゾーンにソーラー・パネルを設置すれば、クラブハウスを大規模災害時の避難拠点として活用することも可能となる(Reference[6])。

このように技術革新が進んでいますが、そのためには研究開発費の資産計上の再開が強力な後押しとなります。現在、我が国はG7先進国の中で唯一、研究開発費が一律費用処理されます。そのため、研究開発をすればするほどPLが悪化する、という異常な事態が2006年以降継続しています(製薬会社における新薬開発の成功率は0.003%という統計もある)。その結果、研究開発部門は「コスト・センタ」扱いとなってしまい、昨今の家電メーカーの大規模リストラでは、”至宝”とも言える研究開発部門を切り捨てるという事態が発生しています。これは、海外に日本の技術が流出することを意味しています。これは技術立国としてありえない愚策ですので、直ちに改める必要があります。このことは研究開発減税をするよりも効果があります。

※なお、研究開発費の資産計上はPLを大幅に改善させるため、法人税及び地方税の「法人税割」の大幅な増収にも繋がることに留意する必要がある。このことは我が国の財政再建にも役立つことは言うまでもない。


§7. 補足2: 遺伝子組換食品の現状(次回予告)

次回はIFRS対応で盲点となっている「農業」について取り上げますが、読者の方々から遺伝子組換食品と食の安全に関するご質問を頂いたので、次回予告を兼ねて取り上げることにします。

※1.これまで述べてきたように、筆者は「こだわり派」であるが、筆者の家内も実に「こだわり派」である。毎週末の買い物代行においても、銘柄、食品添加物・着色料には非常に厳格な基準を持っており、しばしば、私の買ってきたものは”没収”となる。
例えば、パンについては、イースト・フードと臭素酸カリウム(KBrO3)を特に警戒している。また遺伝子組換大豆なども極力忌避するようにしている(Reference[15],[16],17])。

※2.KBrO3については、EU諸国では発癌性への懸念から使用すること自体が禁止されているが、我が国では残留が検出されないことを条件に、一定の条件下での食品添加剤としての使用が認められている(Reference[18])。

[1]遺伝子組換食品(GMO食品/GM食品/GE食品)の表示に関する最新の動向
 最近、食の安全について関心が高まっています。特に、遺伝子組換食品については賛否両論があり、非常に関心が高まっています。
米国では1996 年に遺伝子組換作物の本格的な商業栽培が始まりました。その栽培面積は 増加の一途を辿っています。我が国では、食用や飼料用の遺伝子組換え作物の商業栽培は行われていないものの、すでに大量に輸入され、流通している状況にあります。食糧危機対策のため必要であるという肯定的意見がある一方で、倫理的側面からの批判や医学的な問題や環境への影響を懸念する意見も多数述べられています(Reference[19],[20])。また、「遺伝子組換技術」そのものについても、「交配に依らない生物種間を超えた品種改良」であるという肯定的意見もあれば、「本来自然界には存在してはならないハイブリッド種である」という否定的見解や「神の領域への侵害」であるという宗教的な否定的意見もあります。
筆者は遺伝子組換食品・作物には長所と短所があり、All or Nothingで考えるのは正しくないと思います。そして、「元学者」としては、安全性の判断については、情緒的・感情的になるのではなくReference[24],[25],[26]にあるように科学的な方法で情報を収集した上で、最終的には生産者・消費者自身の責任において行うべきであると考えています。そして、不安を感じる消費者が存在する以上は、消費者保護の観点からも最低限遺伝子組換の有無の表示は行うべきであると考えています。
我が国においては、「JAS法」(遺伝子組換え食品に関する表示に係る加工食品品質表示基準第7条第1項及び生鮮食品品質表示基準第7条第1項の規定に基づく農林水産大臣の定める基準)及び「食品衛生法」の「食品衛生法施行規則」に基づき、遺伝子組換え農産物とその加工食品について表示ルールが定められ、2001年4月から義務化されました(Reference[21])。ただ、交雑・混入の問題はなかなか難しい問題があるようです(Reference[22])。
なお、オーストリア、フランス、ギリシャ、ハンガリー、ドイツ、ルクセンブルグなどEU諸国の一部では遺伝子組換作物の栽培そのものが事実上禁止されています。

※1.遺伝子組換作物は欧州食品安全機関(EFSA)によって認可されるが、EU加盟国はEU法のもとで国内禁止令を制定できる。2009年に、これらの国内禁止令の妥当性が欧州委員会で審議されたが、「遺伝子組換作物が危険だ」と主張するオーストリア及びハンガリーの権利が、賛成23対反対4(英、蘭、スウェーデン、フィンランド)で支持された。

※2. 欧州議会は2011年7月5日、遺伝子組換作物(GMO)栽培禁止などの規制について、加盟国が判断するべきとした法案を、賛成568、反対84、棄権31の大差で可決した。ここでは、加盟国が除草剤などの農薬耐性品種、生物多様性の保護、または、環境上における悪影響についてのデータ不足などの環境上の理由で栽培を制限または禁止することができるとしている(Reference[23])。

ところが、米国では遺伝子組換食品(トウモロコシ、大豆、綿など)が非常に広範に流通しており、 2011年は米国産トウモロコシの88%パーセントとダイズの94%がGE種子から栽培されたようです(Reference[24],[25],[26])。日米の遺伝子組換食品の表示についてはほぼ逆になっており、米国では「遺伝子組換あり」の表示義務がなく、逆に「遺伝子組換ではない」という表示が禁止されていることに注意が必要です。

表5.7.日米の遺伝子組換食品に関する表示
表7.1. 日米の遺伝子組換食品に関する表示

※我が国の「5%除外ルール」については賛否両論がある。5%以下の混入の場合、「遺伝子組換あり」と表示する必要はないが、「遺伝子組換ではない」と表示することはできない。

実は、米国でも遺伝子組換食品の安全性に関する議論は活発に行われており、その表示の義務化を巡っては大きな論争が発生しています。また、種子を「知的財産権」の対象とすることの是非、収穫した種子の再蒔の可否、風による自然交雑の問題を巡って多数の訴訟が発生しています。
米国カリフォルニア州では遺伝子組換食品の表示に関する州法案が、米大統領選(11月6日)に合わせて州民投票に掛けられることになっています(Reference[24],[25],[26])。この法律が成立すれば、遺伝子組換食品(GE食品)に遺伝子組み換えであるという表示(Genetically Engineered)をする必要が生じます。また、GE由来の加工食品は”Partially Produced with Genetic Engineering”または”May be Partially Produced with Genetic Engineering”という表示が求められることになります。

[2]遺伝子組換食品の安全性に関する懸念
先月、農業関係者を中心としたフォーラムで講演の機会を頂きました。出席者の方々からはTPPに対する懸念が数多く寄せられていました。特に、異口同音に言われていたのは、「我々が反対しているのは、私たちの既得権の為ではない。食品安全など国民の健康が守れなくなるからである。」との意見が多数でした。特に、NAFTAで濫用された実績のあるISD条項の悪用により、BSE検査で肝要な「牛の個体識別検査」が出来なくなったり、遺伝子組換食品の表示が出来なくなる恐れがあることに懸念が集中していました(Reference[27])。
上述のように、我が国では、食用や飼料用の遺伝子組換え作物の商業栽培は行われていないものの、すでに大量に輸入され、流通している状況にあります。とくに、飼料及び油の原料としての流通が大部分を占めています(Reference[20])。また、我が国では、「生物の多様性の確保」を定めた「カタルヘナ条約」履行のため、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」を定め、遺伝子組換生物の規制を行っています(Reference[28])。

特に「遺伝子組換食品の表示」については、治外法権条項のISD条項のターゲットになる可能性が高く、強引に覆されることが懸念されています。現実に、今年1月、米国の生命技術産業でつくる「バイオテクノロジー産業機構」との会談では、同機構のエンライト副会長が「米国はTPPで遺伝子組み換え(GM)作物の表示義務付け廃止を迫る」との考えを示しています(Reference[27])。また、食料自給率が極端に低下した場合、非遺伝子組換食品が高価となり、一般庶民は不本意ながら遺伝子組換食品を口にせざるを得ないということも懸念されます。

※このような懸念を杞憂と見る向きもあるが、米韓FTAのため、韓国では、米国産牛肉の個体別検査は出来なくなった。また、第24回で指摘したように、徴税権を巡って、米国企業が韓国政府を訴えたISD Processが11月に開始される見込みである(Reference[29])。

前述のように、筆者は遺伝子組換食品には長所と短所があり、All or Nothingで考えるのは正しくないと考えています。実際、遺伝子組換食品の安全性については、多数の臨床試験も行われています。ただ、筆者として気になるのは急性毒性に関する安全性のみが重視されているのではないかという点です。症状が現れるまでに長時間を要する慢性毒性については数十年単位での検証が必要であり、2012年の現時点では、まだ十分な検証が行われているとは言えないように思われます。また、同様に長期間の検証が必要な「発癌性」や「催奇形性」についても、「安全宣言」をするには数十年単位での検証が必要なのではないかと思われます。実際に「発癌性」や「催奇形性」については、海外から懸念されるような報告もあり、「安全宣言」を行うには時期尚早であると言わざるを得ません(Reference[31],[32],[33])。特に、筆者の家系は癌による死者も多く、非常に心配しています。
万一、癌が多発すると、それは医療費・薬剤費の高騰に直結し、我が国の国民皆保険制度にも悪影響を及ぼすことは言うまでもありません。

[3]遺伝子組換食品の安全性とTPPの関係
最近はかなり改善されましたが、今でもTPPについては「農業対工業」の図式で捉えるステレオ・タイプ的な報道が後を絶ちません。この点については、報道機関の方々には正確かつ多面的な報道をお願いしたいところです(Reference[34],[35],[36])。

前回(第25回)でも述べたように、マレーシアは先月(2012年8月)、TPP交渉からの離脱の意思を表明しました(Reference[37],[38])。一方、今年の5月22日、並行してマレーシアとオーストラリアの間で交渉が進められていた二国間FTAが調印されました(Reference[39])。マレーシアが「医薬品の特許期間の長さと医薬品の価格高騰」を理由にTPP交渉からの離脱を表明した背景として、オーストラリアとのFTAの調印が背景にあると考えられます。
「7年を経て署名されたマレーシア・オーストラリア自由貿易協定」(Reference[40])によると非常に興味深い記載がなされています。この協定では、ネットメディアを中心にTPPについて問題点として指摘されることの多い「ISD条項」、「ネガティブリスト方式」、「公共調達」、「医薬品の高騰問題」が除外されているという点で、TPPを”通常の通商条約”に修正する上で参考とするべきモデルケースとなり得ますので、一部紹介します。

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However, some aspects of the agreement are more positive, in that they do not have some of the worst features of the neoliberal models of trade agreements. Importantly, the Australian government has kept to its policy of not giving international investors the right to sue governments for damages, so there is no investor-state dispute process in the agreement. This is a positive example which can be used in our campaign on the TPP.

しかしながら、この協定のいくつかの側面は、新自由主義的な貿易協定の最悪の特徴を持っていないという点で、より前向きではある。重要なことは、 オーストラリア政府が、外国の投資家が損害を被ったとして政府を訴える権利を与えることはしないという政策を維持していることである。そのため、 協定にはISD(投資家対国家間紛争)プロセスは含まれていない。これは、私たちのTPPキャンペーンにおいて有効活用できる肯定的な事例である。

The services chapter uses a positive list approach, which means it includes only those services which each government intends to include, rather than a negative list which includes everything unless excluded. Government procurement is excluded from the agreement. The intellectual property chapter does not contain the harmful provisions to extend patent rights on pharmaceuticals which are in the US-Australia free trade agreement, let alone the extreme measures which the US has proposed in the TPP. However, the agreement does contain stronger provisions on copyright and stronger measures for enforcement of copyright and intellectual property rights more generally, including criminal penalties.

サービスの章では、ポジティブ・リスト方式が採用されている。これは、それぞれの政府が盛り込もうとするサービスのみを含有する、というものであり、除外するもの以外は全て盛り込むネガティブ・リスト方式ではない。政府調達は協定から除外されている。知的財産権の章は、米国がTPPで提案しているような極端な措置はもちろん、米豪自由貿易協定に含まれる、医薬品の特許権を拡大する有害な条項は含まれていない。しかしながら、この協定は著作権に関するより強力な条項や、刑罰を含むより強制力のある、著作権や知的所有権保護の一般的な手段を含んでいる。

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前々回(第24回)において取り上げた、今年の3月に某野党が纏めた6原則を再掲します。上記の「マレーシアとオーストラリアのFTA」と同様、いわば”TPPの毒抜き”になっていることに注目するべきです。

① 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
② 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
③ 国民皆保険制度を守る。
④ 食の安全安心の基準を守る。
⑤ 国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
⑥ 政府調達・金融サービス等は、我が国の特性を踏まえる。


繰り返し述べているように、この中で最も重要なのは⑤です。⑤を守れないと①③④⑥は全て覆されるリスクがあります(この点については、筆者の母校の工学部の藤井聡教授の解説が大変分かり易い)。②で指摘されている「数値目標(ミニマム・アクセス)」については、米韓FTAで設定されており、韓国の排ガス規制の適用除外した自動車のミニマム・アクセスが設けられています。

※実は、1994年GATTウルグアイ・ラウンドでは、「コメの開放」として100万トンのミニマム・アクセスが設定された。これについては賛否両論があるが、米韓FTAでは「韓国の排ガス規制の適用除外」を意味しているので非常に大きい意味を持っている。

 第18回及び第24回でも述べたように、米韓FTAについては、韓国は全面批准したのに対し、米国は“UNITED STATES–KOREA FREE TRADE AGREEMENT IMPLEMENTATION ACT” (米韓FTA履行法(Reference[41],[42]))を成立させ、その第102条〔合衆国法及び州法に対する当該協定の関係〕において当該FTAと国内法が矛盾(Conflict)する場合は国内法を優先させると明文規定することで国益を守りました。つまり、国際法上は限定批准となります。

※これは”All or Nothing”ではない大変クレバーな外交戦略である。我が国にとっても大いに参考になると思われる。マスコミの方々には、是非とも報道していただきたい重要な事項である。

SEC. 102. RELATIONSHIP OF THE AGREEMENT TO UNITED STATES
AND STATE LAW.

(a) RELATIONSHIP OF AGREEMENT TO UNITED STATES LAW—.
(1) UNITED STATES LAW TO PREVAIL IN CONFLICT. — No provision of the Agreement, nor the application of any such provision to any person or circumstance, which is inconsistent with any law of the United States shall have effect.
(2) CONSTRUCTION.
Nothing in this Act shall be construed —
(A) to amend or modify any law of the United States,
or
(B) to limit any authority conferred under any law of the United States,unless specifically provided for in this Act.

このように、UNITED STATES LAW TO PREVAIL IN CONFLICTとあるように、当該FTAと米国法が矛盾する場合は米国法が優先することになると明記されています。つまり、米国の法令と韓国の法令とFTAは次のような関係となります。

 

   米国の連邦法 > 米国の州法 > FTA >  韓国の法律

これはまさに「不平等条約」です。さらに、米韓FTAには治外法権条項である「ISD条項」が入っています(しかも、米国の法令は米韓FTAより上位なので、ISD条項は米国企業は韓国政府に対して発動できるが、逆は事実上できない)。
「関税自主権の喪失」、「治外法権」、「不平等条約」・・・まさに、我々の明治の先輩が苦しめられた安政の五カ国不平等条約そのものです。第二の井伊直弼が出ないよう、願うばかりです。 一方、毒薬がなく、我が国の農業が破壊されず、TPPよりも経済効果が3倍以上見込める「ASEAN+6」は実現する方向であり、我が国の産業の発展のためには、まず、これを成立させることが妥当であると考えられます(Reference[43])。特に、中国・韓国・インド・インドネシア・タイなど「経済成長が顕著なアジア・太平洋地域」はTPPに参加しない国々であり、アジア・太平洋地域の成長を取り込むならば「ASEAN+6」のほうが明らかに有効です。

※ASEAN+6の「6」は日中韓のほかインド・オーストラリア・ニュージーランドであり、我が国の農業にとっては大きな競争にされさられることになる。米国に対しては、TPPの代わりに、通常の通商条約のモデルとして「豪・マレーシアFTA」に日本が加入した上で、米国に逆提案するのも外交戦略として有効な手段と考えられる。

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<<コメント>> ~ 多民族国家米国の難しさ~

  先日、筆者の母校の大学に多数の卒業生を送り出している京都市北区の名門中高の文化祭に行ってきた。何故か私の家族は2日目に行き、私だけが最終日に行ってきた。最終日のフィナーレはオーケストラ部の演奏であった。大変素晴らしい演奏であった。まず驚いたのは、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲ニ長調のソリストを、外部招聘ではなく高校二年生の部員が務めたことであった。是非とも我が母校のオーケストラ部に入って頂きたいと思った。ただ、1つ残念だったのは、第一楽章のみであったことである。是非とも、来年は全曲聴かせていただきたいと思った次第である。もう一つ驚いたのは最後のベートーベンの交響曲第5番ハ短調「運命」であった。非常に高度な技術が必要な第一楽章の再現部のオーボエのソロはバッチリ決まった。第二楽章、第三楽章が過ぎた。「運命」の第三楽章は第四楽章は繋がっており、第三楽章の最終部分は第四楽章への予告となっている(Attacca)。ティンパニのソロから順にクレッシェンドで盛り上がり、当時としては珍しい楽器であったトロンボーン、ピッコロ、コントラファゴットが準備を開始し、第四楽章に流れ込んだ。そして、Tuttiによる第一主題(ハ長調)、ホルンによる推移主題、弦楽器による第二主題(ト長調)、提示部の終結主題(ト長調)・・・ここで、私にとっては驚きのことが起こった。滅多に行われない提示部のリピートが行われたのである。録音して置けばよかったと思った。終了後、いわゆる「クラッシック通」の方は気づかれたようで、ビックリされていた。実は、「運命」の第四楽章のリピートは殆ど行われない。特に、20世紀においてはLPレコードの制約もあってか、幻のリピートであった。また、折り返し部分の演奏上の難しさから忌避することも多かった。演奏技術の向上やBernsteinによる若干のRitardando手法などの普及もあり、21世紀になって徐々にリピート派が増加しつつある。大変、喜ばしいことである。このように筆者は少年時代から実に「こだわり派」である。高校時代に友人からCarlos Kleiberの「リピートありの運命」を聞かせてもらい感動したのを覚えている。
帰りは、嵐電に乗り「蚕の社」で下車し、渡来人秦氏ゆかりの木嶋(このしま)神社に行ったが、ここは三角形の鳥居(三柱鳥居)のある珍しい神社であり、京都へ観光の際には是非とも立ち寄られることをお勧めする。一部の研究者は、伊勢神宮内宮にある六芒星、長野県諏訪神社の大祭の古形式とともに、古代の日本人とユダヤ人の失われた10氏族の繋がりを主張する人もいる。また、最も古い伝統を残しているギリシャ正教で用いている聖体拝領(領聖)用のパンが鏡餅の形をしていること、インディー・ジョーンズの「失われたアーク」の形が日本の祭りの神輿の形に酷似していることも興味深い一致である。老後のテーマとして研究したいと思っている。また、三柱鳥居は、451年の第4回公会議(カルケドンの公会議)で異端とされたネストリウス派のキリスト教(中国では「大秦景教」。大秦=ローマ、君府=コンスタンティノポリス)が日本にも伝わっていたとする見方もある。なお、近隣には同じく秦氏ゆかりの太秦(うずまさ)がある。 

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話は変わるが、米国の大統領選挙がヒート・アップしてきているが、特に今回は大接戦である。あまり日本のマスコミでは報道されないが、特に、今回の選挙戦では現職大統領の「出生証明」と「信条・信仰」がクローズ・アップされるという異例の展開を辿っている。前者は「出生が米国のハワイ州であるか、実父の出身地であるケニアであるか?」というものであり、後者は「キリスト教に改宗したのか、イスラム教(スンニ派)のままか?」というものである。いかにも、多民族国家である米国らしいテーマである。イスラム教を揶揄する短編映画を契機として、現在、全世界的なイスラム教徒による反米暴動が発生している。大変、憂慮するべき事態である。9月11日、リビアのベンガジにおいて米国大使ら4名が殺害されるなど大きな問題が発生しており、現地の報道を見ると、Obama氏が9月なってWashington Postに対して突如” I have never been a Muslim”と発言して物議を醸すなど、後者の問題は実は大統領選における大きなテーマとなっている。

※日本は韓国及び中国と外交的に緊張関係にある。また、李明博(月山明博)大統領の行動により、ICJへの提訴や韓国への経済制裁が現実味を帯びるなど、難しい問題が発生している。また、尖閣諸島の国有化に伴う中国・台湾での抗議活動も激化している。また、文化面でもK-POPの人気の凋落や10月の番組改編期の韓国ドラマの大幅減少、中国でのスポーツイベントの中止などいろいろと問題が発生している。我が国のマスコミの関心はこちらに向きがちであるが、他にも、シリアの内戦に続き、9月8日にカナダがイランと国交断絶するなど、多くの問題が発生している。

実は、あまり日本では知られていないが、現職のObama氏のフルネームは、Barack Hussein Obamaである。Husseinは「フセイン」または「フサイン」と読むが、イスラム教の第4代カリフ(シーア派が認める最後の正当カリフ)であるアリーから数えて3代目のイマームの名前であり、イスラム世界においては極めて由緒正しき名前であり、ミドルネームや姓として使用されることも多い。かつてのイラクの元大統領もHusseinであった。
一般に日本ではObama氏は「イスラム教徒(スンニ派)として幼年期を過ごしキリスト教に改宗した」とされている。しかし、現地の報道を見る限り、Obama氏はイスラム教徒であるとの指摘が少なくない。その根拠として挙げられているのが、①父親のBarack Hussein Obama Seniorはイスラム教徒であり、重婚していた事実がある(そのため8人もの異母兄弟がいる)。②イスラム法によれば父親がイスラム教徒の場合は自動的に子供はイスラム教徒とみなされる(キリスト教では幼児洗礼及び堅信の秘跡(機密)を受ける必要がある)。③イスラム法上、脱会(棄教)は認められない。④Husseinというミドルネームはイスラム教のものであり、キリスト教に改宗した場合は洗礼名を付け直すはずなのに付け直していないことなどである(日本でも、仏教の宗派間で移動すると戒名・院号・道号は付け直すことが多い)。
一般にキリスト教では洗礼名は「聖人」の名前に限定されている。男性の場合、ラテン語(ギリシャ語,英語,日本語)で表記すると、Petrus(Πετροσ, Peter,ペテロ)、Paulus(Παυλοσ,Paul,パウロ)、Johannes(Ιωαννησ,John, ヨハネ)などがメジャーであるが、4世紀のキリスト教を公認したConstantinus(Κωνσταντινοσ)1世大帝の時代の神学者Athanasius(Αθανασιοσ,Athanasius,アタナシウス)や、キリスト教がローマ帝国の国教となったTheodsius(Θεοδσιοσ)1世大帝の時代のミラノ聖人Ambrosius(Αμβροσιοσ,Ambrosius,アンブロシウス)などもある。筆者としては真偽の程は不明であるが、①エリザベス女王に対する挨拶とサウジアラビア国王に対する挨拶、②演説においてQuranやHadithの引用が多用されること、③信仰を表すミドルネームがイスラム教のHusseinのままであることを考えると、少なくとも、イスラム教に対する一定の帰依やノスタルジーは現在もお持ちなのではないかと推定される。
いかにも多民族国家である米国を象徴するような事例ではあるが、我々日本人には馴染みの薄い問題であり、理解し難い事項でもある。しかし、今後のグローバル社会で生きていく上で、こうした難しい問題から目を背けるのではなく、海外の事情を直視することが正しいスタンスであり、それが真の意味での日本人の国際化であると、”こだわり派”の筆者は強く考えている。

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最後に§6でも述べたように、現在、全国的に「脱原発」の動きが出ているが、その際、米韓FTA やTPPで大問題となっている”治外法権条項”ISD条項が脱原発の足かせになるという事実を、我々は肝に命じておく必要がある(Reference[44])。先日、筆者は、大手経済団体や報道機関に対してISD条項に関かる認識について照会したが、驚くべきことに殆ど認知されていなかった。これは恐ろしいことである。報道機関の皆様には、「農業対工業」のような単純な図式に矮小化することなく、多角的な視野からの報道をお願いしたいところである。
 NAFTAや米韓FTAにおける、治外法権条項ISD条項の運用を見ていると、「間接的接収(indirect annexation)」の少なからぬ悪用が見受けられる。一部のマスコミはこの点を軽視しているようであるが、ISD条項により、我が国独自の「再販価格維持制度」がターゲットになりうるということを理解しておられないようである。また、近年、米国では、治安の悪化を背景として、女性の護身用の短銃の登録が増加している(レディス用軽量短銃が良く売れており、米国の短銃メーカーの株価は上昇し続けている Reference[45])。「銃社会」である米国の合衆国憲法修正第2条は次のようになっている。

Second Amendment – Militia (United States), Sovereign state, Right to keep and bear arms. A well regulated Militia, being necessary to the security of a free State, the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed.

(人民の武装権)規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない。

銃社会米国では銃乱射事件等の悲劇が起こる度に「銃規制」の必要性が叫ばれ、米国の大統領選挙のたびに「銃規制」が議論されてきた。しかも、NRA(全米ライフル協会)という銃を所持することを 支持する市民団体やGOA(米国銃所持者協会)は、米国内で最強クラスの政治力を有する団体である。TPPのモデルとされる米韓FTAでは、国の主権の一部である徴税権を巡ってISD条項が発動されることとなった(Reference[29])。韓国に詳しい知人の話では、韓国における治安の悪化を背景に女性の護身が大きな課題となっており、この可能性は十分有りうるとのことである。
従って、TPPで問題となっているISD条項では、日本の「銃刀法」がターゲットになる可能性も十分有りうることになる。ISDの仲裁機関は日本の裁判所ではなく、米国ワシントンにある世界銀行の傘下にある国際投資紛争 解決センター(ICSID)である。これは事実上の治外法権である。しかも訴訟社会米国には辣腕弁護士が多数存在している。「銃刀法」が非関税障壁と認定され、日本政府が巨額の賠償金を支払うような事態になった場合、日本社会にどのような影響が起こるか、読者の方々は容易に察しがつくと思われる。我々日本の良き伝統、良き治安を守るためにも、ISD条項だけは絶対に受け入れてはならない。 日本人が米国のような「銃社会」を受け入れることは不可能だと思われる。なお、WTO,OECD,FTAA及び米豪FTA,豪マレーシアFTAにおいてはISD条項は除外されている、また、豪州はTPPの交渉に際しISD条項は如何なる形でも受け入れないことを表明している。
なお、ISD条項については、米韓FTAと異なり、「TPP > 米国の法律」となることが分かり、現在、米国でも大騒ぎになっている(Reference[46],[47],[48])。

【速報】本稿の校正中(9月26日)に、理研仁科加速器研究センターの森田准主任研究員らの研究グループが 3個目の113 番元素の同位体「278.113 (質量数 278)」の合成を確認したと発表した。素晴らしい快挙である。現在、Ununtriumという仮称が与えられているが、日本人が史上初の命名権を得る可能性が大きく大変注目される。まさに国民栄誉賞に相応しい大発見である。JaponiumやNipponumなどが有力視されているようであるが、後者は元素記号として既に28Ni(ニッケル)、93Np(ネプツニウム)、102No(ノーベリウム)があるので難しいように思われる。国名が元素名になっている例としては、84Po(ポロニウム)、87Fr(フランシウム)、95Am(アメリシウム)がある。なお、114Fl(フレロビウム)と116Lv(リバモリウム)はまもなく正式にIUPAC(国際純正及び応用化学連合)が認定する見込みである。筆者の学生時代の元素周期表は第7周期の途中のアクチノイドの103番で終わっていたが、115番,117番,118番元素発見の報告もあり、どうやら筆者の存命中に第8周期を含む元素周期表が出来そうである。

おわりに

 今回は、グローバル・キャッシュ・マネジメント(GCM)を取り上げました。欧州の通貨危機などを背景に為替相場は不安定な状況を続けており、外貨及び為替の管理はグローバル企業にとってまさに死活問題となっています。次回は、我が国のIFRS対応において盲点となっている「農業」(IAS43)について取り上げることにします(つづく)。

※本稿は2012年9月1日時点で施行されている法令・会計基準に基づいて記述しております。

※SAP-BOFC(R) はSAP製品群の連結会計システムを指しておりますが、機能の実現可能性についてはテンプレート (設定のパラメータ・セット) として、㈱アロウズ・テクノロジーズ(東京都港区)が保有するArrows Consolidation Template(R) を使用することを前提としております。従って、他の連結会計システムを使用された場合や、他のテンプレートを使用された場合は、対応機能等に差異が生ずる場合がございます。

※本稿の内容は、過去分(第1回~第25回)も含めて、筆者個人の見解であり、他のいかなる法人、団体等の意見・見解等を代表するものではありません。


References:
1. 連結会計ハンドブック (中央経済社)

2. ハード・カレンシー(国際通貨)

3. 「NTTグループ、マンション向け電力サービスを本格的に開始へ」(フジテレビ2012年8月26日)

4. 「電力ネットワークの役割は「送電」と「配電」」 (スマート・ジャパン2012年8月16日)

5. 「EUにおけるエネルギーの市場自由化と安定供給 – 事業者分離を巡って」 – (国立国会図書館海外立法情報調査室  植月 献二)

6. 「システム監査の法的義務化等のIT政策提言」(田淵隆明、横山雅義、中田和夫、神尾博)

7. 「事業体制は発電、送電、配電、小売りの4部門に分離−電力事情(2) (コロンビア)」(Jetro 海外情報)

8. 「都内生協 再生エネ 共同購入・配電」(東京新聞 2012年9月11日)

9. 広報せたがや 平成24年(2012年)7月1日号 「太陽光発電の普及へ」

10. 広報せたがや 「三宿1丁目での取組み」

11. 「技ありニッポンの底力」(テレビ東京系列 WBS 2012年3月5日(月))

12. 「洋上風力発電と水力発電の組み合わせ」(ドイツ Infineon)

13. 「ガスと太陽光発電の組み合わせ」(東京ガス)

14. スターリング・エンジン(NHK おはよう日本 2008年12月14日)

15. 「遺伝子組換食品の安全性 - 催奇形性と発癌性の考察」(田淵晴子 Oikonomos)

16. 「子育て世代のための食品添加物・化学調味料の不摂取のすすめ」(田淵晴子 Oikonomos)

17. 「諸外国における食パンにおけるイースト・フード、臭素酸カリウムの使用状況の現状」
(Athanasius Ambrosius, Oikonomos)

18. 「臭素酸カリウム」 内閣府食品安全委員会 2007年8月9日

19. 「遺伝子組換え作物をめぐる状況」
国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 686(2010年8月3日) 農林環境課(本田伸彰)


20. 「遺伝子組換え農作物の安全性の評価・管理について」 (農林水産省 消費・安全局 農産安全管理課)

21. 「食品表示に関する共通Q&A(第3集:遺伝子組換え食品に関する表示について)」
厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課 農林水産省消費・安全局表示・規格課
(平成15年12月)(平成19年10月一部改正)


22. 「遺伝子組換え飼料のリスク管理措置について」(農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課)

23. 「欧州議会、加盟国のGMO作物栽培禁止の権限を支持(独立行政法人 畜産産業振興機構 2011年7月23日)

24. 「カリフォルニア州GM食品表示法案の研究(上)~先ず概要を知る」 (フード・コム・ネット)

25. 「カリフォルニア州GM食品表示法案の研究 (中) ~うまく機能しない?」 (フード・コム・ネット)

26. 「カリフォルニア州GM食品表示法案の研究(下)~日本市場にも影響か?」(フード・コム・ネット)

27. 「GM作物の表示義務 TPPで廃止を 米国の業界団体」 (日本農業新聞 2012年01月13日)

28. 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO097.html

29. 「ローンスター 韓国政府を相手取り投資訴訟へ」(韓国 KBS World 2012年5月31日)

30. 「日韓通貨スワップ協定、本当に破棄したらどうなる?」(PRESIDENT 2012年10月1日号 金融コンサルタント・大阪経済大学経営学部客員教授 岩本沙弓)

31. “Cancer row over GM foods as study says it did THIS to rats... and can cause organ damage and early death in humans”
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2205509/Cancer-row-GM-foods-French-study-claims-did-THIS-rats--cause-organ-damage-early-death-humans.html#ixzz274qKmGfo

32. “GMO alert: top 10 genetically modified foods to avoid eating” (米国 Natural News 2012年5月1日)

33.”GM food toxins found in the blood of 93% of unborn babies”
By Sean Poulter

34.「よくわかるTPP 48の間違い」 (農文協ブックレット)

35.「恐怖の契約 米韓FTA」 (農文協ブックレット)

36.「まだ知らされていない壊国TPP」 (日本農業新聞取材班)

37. 「TPPで医療費急増、マレーシアが参加を拒否」 (2012年8月8日)

38. “Malaysia says no to TPP”(2012年8月8日)

39. 「サービス分野の自由化進む−マレーシア・オーストラリアFTA− (マレーシア、オーストラリア)」 (Jetro 海外情報)

40.「7年を経て署名されたマレーシア・オーストラリア自由貿易協定」
“Malaysia-Australia Free Trade Agreement signed after seven years”
パトリシア・ラナルド博士(Australian Fair Trade and Investment Network)
Dr Patricia Ranald, AFTINET(翻訳:堀内 葵、大谷 一平))

41. 米国政府印刷局

42. ”UNITED STATES–KOREA FREE TRADE AGREEMENT IMPLEMENTATION ACT”(米韓FTAに関する履行法)

43. 「ASEAN+6、世界最大規模となる経済連携の交渉開始で合意」(FNNニュース 2012年8月31日)

44. ドイツ 脱原発政策ISDに直面(ハンギョレ・サランバン(韓国) 2011年11月9日

45. 米国で銃器類の販売が増加 (米国 Bloomberg 2012年7月24日)

46. 15.ロシア トゥデイ(2012年6月13日)

47. 「全米50州議会議員ら128人 ISD条項反発 USTR宛て書簡 (日本農業新聞2012年07月18日)

48. 「ISD条項導入反対 TPP交渉国に書簡 米国などの法律家」 (日本農業新聞 2012年06月25日)

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