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iPS移植 米大学など“在籍や研究申請なし”
10月12日 12時26分

iPS移植 米大学など“在籍や研究申請なし”
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日本人研究者が、iPS細胞を使ったヒトへの細胞移植を世界で初めて実施したとする発表にアメリカの国際学会が疑義を示している問題で、この研究者はNHKの取材に、「患者の同意や大学の暫定承認があり、挑戦した」と話していました。
しかしアメリカの大学や病院は「そうした日本人研究者は在籍しておらず、臨床研究の申請も受け付けていない」と否定しています。

この問題は、ニューヨークで開かれた国際学会で、日本人研究者、森口尚史氏が、iPS細胞から変化させた細胞を世界で初めてヒトに移植したと発表したことに対し、学会を主催した財団が疑義を示し、発表内容を示したポスターを撤去したものです。
森口氏は発表前、NHKの取材にことし2月、ボストンにあるハーバード大学の関連病院、マサチューセッツ総合病院で重い心臓病の34歳の男性患者にバイパス手術を行った際、iPS細胞から変化させた心筋細胞およそ2700万個を移植したと、学術用語を交えながら詳しく説明していました。
この中で森口氏は「患者の同意や大学の暫定承認があり勇気を持って挑戦した」「治る見込みのない患者が歩いて帰れるようになったことが一番うれしい」と話していました。
しかし、NHKがハーバード大学と病院に取材したところ、いずれも「現在、森口という日本人研究者は在籍しておらず、iPS細胞を使った臨床研究の申請も受け付けていない」と否定しています。
また、今回の発表で共同研究者とされる1人は、問題が明らかになったあと、所属する大学の広報を通じて、「森口氏とは5年以上交渉がなく、iPS細胞について研究していることも知らなかった」とコメントしています。

米病院“手術実施の記録もない”

森口尚史氏について、マサチューセッツ総合病院はNHKの取材に対し、「森口氏は1999年から1年間、客員研究員としてこの病院に所属していたのは事実だ。しかしそれ以降は、病院と関わりはない」と説明しています。
そのうえで、「森口氏が主張しているヒトへの細胞移植による治療が病院の倫理委員会に申請されたという事実はなく、そもそも手術が実施された記録もない」と答え、森口氏がこの病院でiPS細胞を使ったヒトへの細胞移植が行われたという事実はないという考えを強調しました。

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