今晩は、なんやかんやで、最終的には、酔っ払いの友人を送り届けることになったのです。

そのため、すっかり、遅くなってしまいました。

 

さて、多くの人には、どうでもいいことなのですが、下記のような記事を見つけました。

このブログの読者でもこの記事(もしくは似た似た内容)を読んだ人はいるでしょうが、記事の内容に誤りがあるので、説明します。

我々、株式の売買を行っている人は、「何でこんな記事が出るのだろう」と不思議なくらいです。

 

Sankei Bizからです。

 この1カ月、オリンパス株の暴落で多くの株主が損失を抱えたが、世界最強の投資銀行と呼ばれる米ゴールドマン・サックスはひと味違った。株価の下落でも儲かる「空売り」をいち早く仕掛け、底打ち直前に買い戻すという売買を神業のようなタイミングで実行した。一連の取引で22億円前後の利益を上げたという計算もできる。その凄すぎる手口とは?(夕刊フジ)

 オリンパスをめぐる騒動の発端は10月14日、マイケル・ウッドフォード氏(51)が突如、社長を解任されたことだった。ゴールドマンはその前日の13日、オリンパス株を約83万株空売りしている。同日の終値2482円で計算すると20億円超の売りを一気に出したことになる。(
中略)

  東京証券取引所は証券会社などが空売りした銘柄や株数の残高を日々公表している。それをみると、ゴールドマンは13日以降、一定程度買い戻しながらも、空売りを増やし続けている。

 この手口について、ある国内証券マンは「ウッドフォード氏が経営陣を告発するのを聞いて、事態は深刻ということで、どんどん売りを増やしていった印象だ」と解説する。

オリンパスが損失隠しを認め、株価がストップ安の734円まで下落した11月8日の時点で、ゴールドマンによるオリンパス株の空売り残高は194万株とピークに達した。ところが株価が584円まで下落した翌9日の時点で残高は4万株強にまで一気に激減する。この時点で大量に買い戻したということになる。

 同社の株価は11日に460円まで下げたが、週明け14日には上場維持観測が広がったことからストップ高の540円まで反転した。ゴールドマンは暴落前に空売りを入れて、底打ち直前に買い戻している。

 この間の収支を終値ベースで計算すると、オリンパス株を空売りした額は約40億円、一方で買い戻した額は約18億円。実際には、現物株の買いなどを組み合わせている可能性もあり単純ではないが、空売りと買い戻しに限れば、差し引き約22億円の利益と計算できる。

 前出の証券マンは、「株価の下値メドはまず半値、次は八掛け、そして2割引とされる。上値を2000円とすると下値は640円。投資の基本に忠実に買い戻したとも考えられる」という。

 

この記事のどこがおかしいのか。

このオリンパスの空売りを行ったのは、ゴールドマン・サックスとなっています(ここがおかしいのです!)。

 

厳密には、ゴールドマン・サックス・インターナショナル(GSI)(東証のHPに公表データとしてあります)です。

このGSI名義でオリンパスを空売りしているのは事実です。

GSIとは、ロンドンにあるゴールドマンの名称です。

では、このGSIが、オリンパスの株を空売りしているのかといえば、99%、そういうことはないと思われます。

 

では誰が空売りしているのか?

仮に、ABCというヘッジファンドがいたとします。

ABCは自分の名義で、オリンパス株の空売りを行うことができますが、0.25% 以上の空売りを行う場合は、報告義務があり、その銘柄と空売り株数と名義人の名前が公表されます。

例えば、ABCが、100万株のオリンパスを空売りすれば、東証からABC7733オリンパス、100万株、0.37%(発行済株式数に対する割合)というデータが公表されます。

 

上記記事では、このABCの欄がGSIだったのです。

しかし、通常、ヘッジファンドは、自分の名前が出るのを嫌いますので、自らの名義で空売りするのではなく、GSとスワップ契約(CFD)を行い、GSの名前で空売りしているのです。

ですから、東証には、GSIの名前が出て、ヘッジファンドの名前は出てきません。

 

ということで、ヘッジファンドの資産管理(専門用語でプライム・ブローカレッジ・サービス)の最大手のGSには、ヘッジファンドから、CFDの取引の依頼が多いと思われます。

であれば、GSIの名義で空売りが出ていても、多くの場合は、エンドにヘッジファンドがいるというのが、一般的な考え方です。

 

記事にあるように、ゴールドマンが利益を上げたのではなく、その顧客であるヘッジファンドが利益を上げたのだと思います。

さすが、ヘッジファンドは、機動力があり、判断も早いということです。

ゴールドマンがひと味違うのではなく、その顧客のヘッジファンドがひと味違うのです。