iPS臨床問題:「共同研究者」直接関与を否定
毎日新聞 2012年10月12日 21時30分(最終更新 10月13日 00時40分)
日本人研究者の森口尚史(ひさし)氏が米ハーバード大の暫定承認を受けて人工多能性幹細胞(iPS細胞)の臨床応用をしたと一部で報道された問題を受け、森口氏の共同研究者とされる東京大学や東京医科歯科大学の研究者が12日相次いで記者会見した。いずれも共同研究への直接的な関与を否定し、臨床研究自体が実施されなかった可能性が高まってきた。
森口氏はニューヨークで10日に始まった国際会議で、この臨床研究を実施したとポスターで展示。11日、ポスター展示の場で、詳細を報告する予定だったが、森口氏は現れなかった。その後、主催者は「ハーバード大から研究内容の正当性に疑義が呈された」としてポスターを撤去した。
森口氏の研究概要説明に名前を連ねた東京医科歯科大の佐藤千史(ちふみ)教授は記者会見で、「研究内容の整合性の確認はしたが、医科歯科大では関係する研究はしていない」と説明。さらに、2010年に米肝臓病学会誌に掲載された「ヒトiPS細胞を使って、C型肝炎を治療する薬の組み合わせを見つけた」とする別の研究でも論文の共著者となった佐藤教授は「東京医科歯科大で実験や研究が行われた事実はない」と語った。
また、森口氏と共同研究をした東京大の井原茂男特任教授は会見で、「去年の9月ごろ『iPS細胞と化合物をかけた細胞の二つについて遺伝子の情報を解析してほしい』と森口氏に頼まれて、データを解析して渡した。その時にはヒトに臨床応用するとは聞いておらず、報道で知って驚いた」と話した。
読売新聞は11日朝刊1面で「ハーバード大の森口尚史客員講師らが、iPS細胞から心筋の細胞を作り、今年2月以降、6人の心不全患者に細胞移植した」などと報じた。
森口氏は12日夜の毎日新聞の電話取材に「過去の研究発表を含めて今はお話しできない」と話した。