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社会

民主のダム検証から3年 全国8カ所新たに中止 

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 民主党政権が公共事業見直しの象徴として「ダム検証」を打ち出して3年。対象となった全国84ダムのうち14カ所で中止の結論に達し、このうち国や県など事業主体の検証前の建設方針を転換したダムが8カ所あることが分かった。結論が出ないまま建設が中断しているダムも45カ所残っている。

 検証が実質的に始まったのは、政権発足1年後の2010年9月。今年9月末までに対象ダムの46%にあたる39カ所で検証を終え、国は最終的に継続25、中止14と結論づけた。中止と結論の出た14カ所について神戸新聞社が事業主体に確認したところ、兵庫県の武庫川ダム(西宮、宝塚市)を含む6カ所は「検証前から中止の方針だった」とする一方、8カ所が検証で方針転換していた。

 8カ所は、奥戸(おこっぺ)(青森)常浪川(とこなみがわ)(新潟)晒川(さらしがわ)(同)北川(滋賀)大谷川(岡山)五木(熊本)タイ原(ばる)(沖縄)の県営7ダムと、国直轄の七滝ダム(熊本)。

 「完全に建設しないのではなく、いったん中止ということ」。今年7月に「中止」に転じた滋賀県の北川ダム。同県水源地域対策室の上坂昇治室長補佐が強調する。

 県は1986年度に実地調査を始め、周辺道路整備や用地買収などで既に約114億円を投じている。検証では費用対効果などを理由に、「100年に一度」の洪水に耐えるダム案を凍結し「30年に一度」に備えた河道整備に変更する方向で議論が進んだ。

 だが、流域住民からは「先祖伝来の土地を売ったのに」「大きな被害が出たらどうする」などと反対意見が続出した。県は地域別の意見交換会を重ね、今後の事業費が405億円から51億円に圧縮できるなど財政効果を説明。20年かけて治水対策を進めると同時にダム建設の選択肢も残し、「いったん中止」で取りまとめた。

 「これまでは、金に糸目をつけずに『やります』と言い続けた。検証は公共事業の優先順位を明確にするきっかけになった」と上坂補佐。

 一方、3ダムが検証対象となった兵庫県。武庫川が中止、金出地(上郡町)と西紀(篠山市)が継続と結果は分かれたが、いずれも検証前からの県方針通りだった。県河川整備課の福田嘉孝係長は「中止、継続ともに県の判断があらためて認められ、住民への周知も深まった」と話す。

(小川 晶)

     ◇     ◇

 【ダム事業検証】対象は事業主体別に、国の直轄事業、国が計画し独立行政法人「水資源機構」が引き継いだ事業、都道府県が手掛ける事業に分かれる。国土交通省の有識者会議が定めた基準に基づき、住民代表や利水者らの意見を聴く「検討の場」を経て事業主体が方針を決定し、有識者会議が再検討。最終的に国交相が継続か中止かを判断する。

 検証は従来方針にとらわれない「ゼロベース」を前提とし、期限はない。都道府県営に比べ、国などの進捗(しんちょく)が遅いことについて、国交省治水課は「流域が複数の都道府県にまたがるなど、事業規模が大きいダムが多いため」と説明している。

(2012/10/08 11:28)

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