憂楽帳:女の精子、男の卵子

毎日新聞 2012年10月12日 14時23分

 ノーベル賞で話題の人工多能性幹細胞(iPS細胞)には、性同一性障害の人たちも大きな期待を寄せる。

 ヒトのiPS細胞から精子にも卵子にもなりうる「始原生殖細胞」をつくることに、慶大教授らが成功したとの報道が先日あった。性同一性障害の人たちは今、性別を変えての結婚はできても、配偶者との間に実の子は持てない。だが、研究が進み、倫理面もクリアされれば、状況は画期的に変わる。

 女性から精子、男性から卵子をつくることさえ可能になるからだ。元は女性でも自らの精子と相手の卵子で、血のつながった子がもうけられるのだ。

 iPS細胞を応用する際の国の指針づくりにかかわる石原理・埼玉医大教授は「生殖医療に新たな革命が起きる予感がする」という。もはや、絵空事ではなさそうだ。

 性同一性障害の人たちを対象にした京大の調査では、男性になりたい女性の8割以上が、この技術で子がほしいと答えた。iPS細胞は夫婦や家族の概念まで変える力を秘めている。【丹野恒一】

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