日本の野党・自民党は先月、安倍晋三元首相を新総裁に選出した。まるでバック・トゥ・ザ・フューチャー(未来への帰還)だ。安倍氏は首相として辛うじて1年務めたあと、健康上の理由に加え、政府内の政治的機能不全による支持率低下により2007年に9月に辞任した。以来、安倍氏は再起をもくろんできた。総選挙で自民党が勝って自らが首相の座に返り咲くためには、外交政策で野田佳彦首相を上回るタカ派姿勢を取る必要があることを安倍氏は認識している。
日本では13年5月までに総選挙が行われる。長引く景気停滞などの国内問題もさることながら、日本の地域的孤立や中国・韓国との深刻な関係緊迫化に対する懸念の高まりを受け、外交政策の重要性が急速に増している。野田氏と安倍氏は自らの強硬派としての実績に競って磨きをかけているが、これはいずれにしろ、日本の外交政策が一段と保守寄りに傾く可能性があることを意味する。
野田氏は、09年に自民党が政権の座を失って以来最も有能な民主党リーダーであることを示した。民主党の鳩山由紀夫元首相が在沖縄海兵隊飛行場の移転をめぐる失態で難局を招き、米国との間に亀裂を生じさせたが、野田氏はおおむねそれを修復した。
さらに特筆すべきは、防衛強化に向けて重要な決断をいくつか下したことだ。野田政権は日本の次期戦闘機に最新鋭ステルス戦闘機F35を選定したほか、長年続いていた武器輸出三原則の見直しに踏み切った。武器輸出三原則は、武器の共同開発を原則禁止するもので、日本の防衛産業の非効率化を招く一因となっていた。また、中国を安全保障上の差し迫った重大な脅威とみなす新たな戦略的ビジョンの公表も承認した。
実際、野田氏の功績は中国の継続的な自己主張に対するその対応にある。野田氏は常に中国に対してタカ派的姿勢を取ってきたが、領有権争いが生じている尖閣諸島の一部買い取りを石原慎太郎都知事に代わって今夏急きょ踏み切ったことでそのイメージをさらに強めた。これがきっかけとなり、日本は中国と深刻な反目状態に陥っている。こうした大規模な対立は、中国の漁船が日本の海上保安庁巡視船に衝突した10年に続き2度目だ。
だが、10年のときと異なり、野田氏は中国政府からの圧力を断固として突き返した。尖閣諸島海域に約50隻の海上保安庁小型監視船を送り込み、日本の領有権主張の放棄を拒否するとともに、中国に対して日本との関係悪化は中国経済に悪影響を及ぼす可能性があるときっぱり警告した。こうした行動によって、野田氏が安全保障政策に関する信頼をより保守的な自民党から勝ち取ったことは十分納得がいく。
その野田氏に負けじと意気込んでいるのが、再び表舞台に登場している安倍氏だ。安倍氏は野田氏の尖閣問題での対応を称賛する一方で、野田氏の賭けの行方に目を向け、安倍氏が06~07年に掲げていた安全保障政策の大半を形成していた3つの主要政策案を再び持ち出すことで、その賭け金を引き上げている。
1つは、集団的自衛権の行使を禁じる憲法解釈を見直し、日本が他国の自衛行動を支援できるようにし、米国のより信頼できる同盟国になれるようにすることだ。安倍氏は先週、信頼の裏付けのない同盟など紙切れにすぎないと語り、民主党が政権奪取当初に米日関係を悪化させるとともに、前傾的外交政策からも手を引いたことを強調した。
安倍氏が次に提案したのが、正式な国家安全保障会議の設置案の見直しだ。日本は現在、臨時設置的な機構を通じて安全保障政策の調整や実施を行っており、安保政策担当スタッフの不足に加え、自民・民主両党が知識豊富な専門家を指導者的職務に起用してこなかったことが影響し、日本は弱体化している。
さらに安倍氏は、世界での役割拡大によって軍の強化も推進していく意向とみられる。安倍氏は首相時代、戦後に創設された防衛庁を省に昇格させた。最近は、米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米普天間飛行場への配備について支持を表明している。また日本のテレビ局に対して、自衛隊を実際の軍隊としてのステータスをより正確に反映させた名称に変更することを検討していくと語ったとも報じられている。
中国や韓国政府とのさらなる関係悪化は日本にとってリスクが高い。したがって、野田氏も安倍氏もいずれは関係修復を目指す公算が大きい。だが、彼らの直近の主張からは、関係修復をあくまでも有利な立場から進め、日本の国益とみなしたことに関して譲歩するつもりはないことがうかがえる。安倍氏のナショナリズムは東アジアに一段の緊張をもたらす可能性があると既に警告する向きもあるが、野田氏の意表を突く尖閣諸島の購入は、日本の首相が取った外交政策の中で最近記憶に残る限り恐らく最も地域を不安定化させるものといえるだろう。
誰が次の首相になるにせよ、日本の外交と安全保障問題に対する保守的スタンスは今後も変わらない公算が大きい。それが日本と近隣諸国との間にさらなる問題を招くことになる可能性は十分ある。だがそれは、日本の第2次世界大戦に対する謝罪を受け入れることをよしとせず、日本政府との正常な関係構築を拒否し、日本の孤立感をあおる地域においては、歩むべき最も現実的な道なのかもしれない。
(筆者のマイケル・オースリン氏はアメリカン・エンタープライズ研究所の日本部長)