残土処分費詐欺:容疑の広島市職員、脅迫され共謀か 市、内部調査指示 /広島
毎日新聞 2012年10月12日 地方版
広島市発注の道路改良事業に伴う建設残土処分費の詐欺事件は、工事を担当した市職員の逮捕に発展した。県警によると、10日夜に詐欺などの容疑で逮捕された元安佐北区職員の岡本大介容疑者(37)=休職中=は容疑を認め、共謀したとされる建設会社役員から脅され、「恐ろしくてやった」と供述しているという。同市は事態を重視し、事件に至った経緯や原因などを調査するよう同区に指示した。
事件の舞台は同区安佐町飯室の市道拡幅工事。同区によると、岡本容疑者は農林建設部土木課の技師だった09年12月〜10年3月末、佐伯区の建設会社「後藤興業」が約1390万円で受注した工事の現場監督員を担当し、工事設計書などの書類作成やチェックをする立場だった。
事件では、岡本容疑者は後藤興業役員の後藤昌平容疑者(48)=詐欺などの容疑で送検=ら5人と共謀し、別の業者に委託して処分した建設残土を実際より多く装った書類を作成し、市から水増し分を含む代金約843万円を振り込ませてだまし取った疑いが持たれている。水増し後に事業費は約1670万円に増えた。
県警によると、岡本容疑者は今回の工事を機に、後藤容疑者と知り合ったらしい。費用の水増しを認識した上で、うその書類を作成していたとみられる。安佐北区の担当者は「職員が不正をするという前提では考えていない」と述べ、書類の偽装を見抜くのは困難との立場を強調する。
広島市は07年12月、暴力団などによる不当な要求行為に対して、組織的に対応する「暴力的要求行為対策要綱」を制定した。要求があった場合、職員は所属長に内容を報告し、所属長は市の各局に配置されている対策管理の担当者に報告する。脅迫などをした業者には、公共工事の指名停止などの罰則がある。同区によると、今回の件で岡本容疑者から報告があった記録はないという。
宮川裕壮区長は「このような事態を招いて、市民の皆様に申し訳ない。警察の捜査を見守り、事実関係がはっきりした段階で厳正に対応したい」とコメントしている。