iPS細胞は、皮膚細胞などのDNAに、受精卵に近い状態に戻す「初期化」のカギを握る遺伝子を組み込んで作られる。その際、ウイルスなどを「運び屋」として使うのが一般的だが、ウイルスではDNAを傷つけ、がん化する危険が残るのが問題だった。
研究チームは、DNAが、細胞内でたんぱく質を作る時に伝令として働くリボ核酸(RNA)に着目。ウイルスの代わりに、合成した伝令RNAを細胞に入れ、狙った4種のたんぱく質を作らせた。遺伝子を改変しないため、がん化の恐れが少なく、従来の手法より速く効率的にiPS細胞が作製できた。筋肉細胞にかかわるRNAを導入して、iPS細胞から筋肉細胞を作ることにも成功したという。
(読売新聞)
・・・とか・・・
安全で効率的、iPS細胞作製の新手法を米チームが開発
胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使用せずヒト幹細胞を作製する方法を開発したと、米ハーバード大医学部(Harvard Medical School)などの研究チームが医学誌「セル・プレス(Cell Press)」オンライン版に9月30日、発表した。この手法を使えば、極めて効率的に人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製できるという。
通常は、成熟細胞をiPS細胞に作り替えるタンパク因子を獲得するため、ヒトゲノムを恒久的に書き換えるという手法が取られている。
これに対し研究チームは、遺伝情報のメッセンジャーであるリボ核酸(RNA)分子を改変し、タンパク質を符号化して細胞のDNAと結合しないようにした。この改変RNAを成熟した皮膚細胞に繰り返し導入したところ、タンパク質の再プログラミングがはっきりと確認され、iPS細胞に作り替えられた。
こうしてできたiPS細胞に筋肉細胞の発達に関連したRNAを導入すると、iPS細胞は筋肉細胞に分化した。この一連のプロセスは、シンプルで効率も良い上に、危険な遺伝子組み換えを行う必要もないという。
ハーバード幹細胞研究所(Harvard Stem Cell Institute)のDoug Melton氏は、「この新たな手法は、ヒトの成熟細胞の作り替えにおける飛躍的な前進だ」と話した。同研究所はただちに、この手法を用いて、患者個人や病気に応じたiPS細胞の作製に入る予定だという。
(AFPBB News)
コメント:
このCell Stem Cellの論文を読めばわかるだろうが、論文のイントロ(序文)において日本発の「センダイウイルス」でのヒトiPS細胞(ウイルスフリーかつインテグレーションフリーで安全性が高いと評される)までも、厳しく批評されている。
ただし、そのわりには、この研究成果の「最大の価値」となるものが、まったく実証データをもとに示されていない。(樹立効率は大幅にあがることは書いてあるけれど・・・)
要は、上記の「センダイウイルス」でのヒトiPS細胞の樹立方法の限界を厳しく指摘しておきながら、それよりもどのくらい安全性が上回るのか否かは実験的に示されていない。あるいは、そこまで比較しなくても、今回の「mRMA法」自体の「安全性評価」はどこにも書いてない・・・。つまり、癌化リスクは、ないのか?、できれば、他のさまざまなヒトiPS細胞の樹立方法に比べて、どのくらい、そのリスクが回避され得たのか?を示してほしい・・・が、不明なのだ。
なんか、ヒトiPS細胞の「安全性問題」がクリアされたかのような報道ばかりだが、このあたりの問題が、今回の論文ではまったくクリアされてませんので、ここのところは、気をつけたほうがいい。
また、この種の研究で大変重要な「新規性」・「独創性」についても、今回の手法の「萌芽的」な試みはBBRCという速報論文誌に今年の春ごろイスラエルの学者が載せている点で、まあ、そこから即効で情報を得て、それを「しっかり」発展させ、いろんな応用が利くように改良がほどこされたというくらいのものでしかないのでは?
さて、そろそろ、もういくつあるのだろうか・・・かなり多くのさまざまな樹立方法によるヒトiPS細胞を一同に集めて、評価し、「標準」を決める作業を行うことはできないのかな?
こういうのは、それこそ、国連のWHO(世界保健機構)主導で、やればいい。
まっ、今回の報道で、(ヒトiPS細胞の臨床応用のためには)、ますます、化合物(クスり)を添加するだけで、ヒトの正常細胞から質の高い「ヒトiPS細胞」を創る方法、そして、その安全性・効率性に期待が集まるだろう。
「優れた前座」をしてくれたハーバードの別の研究室の皆様(笑)。アリガトウ。
発表は時間の問題だ。
なお、そういう発表の1番手と世界中から目され、「もうできた」と発言していたシェンデイン先生(スクリプス研究所)の最近の論文は、またまた、そういうものではなかったから、やっぱり、まだ「できてない」ようだな(笑)。
細胞の培地に振りかけておけば、いつの間にかヒトiPS細胞ができるような「キット」は・・・キットできるヽ(゚◇゚ )ノ
ただし、原料となる細胞の種類によって「変えなきゃ」いけないところがあるけどね・・・。