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 10月10日のながさきニュース
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文化財の盗難が新たに2件


「多久頭魂神社の大蔵経」の一部(対馬市教委提供)
 対馬市峰町の海神神社から国指定重要文化財「銅造如来立像」が盗まれた事件で、市内の別の寺社でも県指定文化財の仏教経典や菩薩(ぼさつ)坐像(ざぞう)が盗難に遭っていたことが9日、分かった。対馬南署は文化財を狙った連続窃盗事件の可能性もあるとして捜査している。

 盗まれたのは、いずれも高麗時代(918〜1392年)に朝鮮で制作されたとされる「大蔵経」(全約5千巻)の一部と、「観世音菩薩坐像」。国重文の盗難を受け、市教委が実施した全島調査で発覚した。

 市教委などによると、大蔵経は厳原町豆酘(つつ)の多久頭魂(たくずだま)神社の木造収蔵庫(平屋)に保管。同日午前10時ごろ、宮司が収蔵庫の屋根瓦が剥がされ、直径数十センチの二つの穴が開けられているのを見つけた。収蔵庫内は荒らされており、近くの草むらに容疑者が持ち込んだとみられるはしごが捨てられていた。大蔵経とは別に二つの県指定文化財も保管されていたが無事だった。

 菩薩坐像は豊玉町小綱の観音寺(木造平屋)に置かれ、地元住民が8日夕方、なくなっていることに気付いた。高さ約50センチ。仏壇の中にあり、取り出せないようにガラスカバーをかぶせていた。出入り口はすべて施錠しており、窓やドアを壊した形跡はなかった。いずれの寺社も普段は無人で、この2週間以内の犯行とみられる。

 県警は全国の都道府県警に手配書を出し、捜査を進めている。



○グループで犯行か 管理の甘さ浮き彫り



 対馬市で文化財を狙った3件の窃盗事件が相次いで発覚した。地元関係者からは「いずれも単独では難しい犯行。グループの仕業では」との見方が出ている。文化財管理は「地域頼み」が現状で、防犯装置が機能しないなどセキュリティー上の問題点も浮き彫りとなった。

 8日、国指定重要文化財「銅造如来立像」の盗難を発見した島井利和さん(65)は「銅像は重さ20キロ以上のガラスケースで覆われており、大人が2人以上いないと取り外しは困難」と話す。

 多久頭魂神社では屋根から大蔵経が盗み出されたとみられ、観音寺の菩薩坐像も「重くて一人で運べない」と地元住民は口をそろえる。観音寺は地域住民が自由に出入りできる建物内の別の部屋に合鍵を置いていたことから、村瀬定区長は「拝観希望者はどこに鍵があるか知ることができる。犯人は事前に下見した可能性が高い」とみる。

 朝鮮半島に近い対馬は日朝交流の歴史を物語る貴重な文化財が豊富に残っており、指定文化財は県内で長崎市に次いで多い。3カ所の犯行現場にはいずれも防犯センサーが備えてあったが、故障で機能しなかった。同日会見した梅野正博市教育長は「管理の在り方を考え直さなければならない」と語り、防犯態勢を強化する考えを示した。

 県警は「3件の事件が同一犯か否かは現段階では不明だが、同じように文化財を狙っており関係性はある」とみており、拝観者リストの調査や一部に設置していた防犯カメラの解析などを進めている。

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