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2012年10月12日(金)付

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動かぬ国会―職場放棄はもうやめよ

きのう、民主党と自民党の新執行部が会い、野田首相と安倍総裁が初めて顔をあわせた。首相が、党首会談を開いたうえで、「しかるべき時に臨時国会を開きたい」と安倍氏に求めたが、[記事全文]

中国閣僚欠席―大国の責任はどこへ

東京での国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会に、中国の謝旭人・財務相と周小川・人民銀行総裁の閣僚級2人が欠席する。中国政府は尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化を理由に[記事全文]

動かぬ国会―職場放棄はもうやめよ

 きのう、民主党と自民党の新執行部が会い、野田首相と安倍総裁が初めて顔をあわせた。

 首相が、党首会談を開いたうえで、「しかるべき時に臨時国会を開きたい」と安倍氏に求めたが、具体的な召集時期は示さなかった。

 両党の新執行部が出そろって2週間がすぎたというのに、国会の日程さえ決まらない。内外ともに課題が山積みのなか、危機感のなさにあきれる。

 きのうは、こんなこともあった。震災の復興予算が被災地以外で使われた問題の解明をめざす衆院の決算行政監視委員会の小委員会を、民主党が欠席して流会に追い込んだのだ。

 自民党の委員長が、国会閉会中の開催を一方的に決めたからだという。だが、そんな理屈は通らない。

 予算が適正に支出されているかどうかを検証し、誤りがあれば正す。それは立法府として当然の責務である。民主党のふるまいは、あまりに無責任だ。

 まして復興予算には復興増税が投入される。消費増税も決まったばかりだ。

 ことは国民の税への信頼にかかわる問題である。早く臨時国会を開いて、使途の本格的な検証をする必要がある。

 臨時国会で議論を深めるべきテーマはほかにもある。

 ひとつは、領土外交だ。

 尖閣諸島や竹島の問題で、自民党は野田政権の対応を批判している。では安倍政権ができればどうするのか、自民党の案をぜひ示してほしい。今週、麻生元首相が訪韓し、李明博(イミョンバク)大統領と会談した。その成果も聞いてみたい。

 一方、共産党の志位委員長は尖閣について、「政府として領土問題の存在を認め、外交交渉で解決を」と提案している。

 与野党が知恵を出し合い、打開策を探る。そんな建設的な国会論戦がいまこそ望まれる。

 原発・エネルギー政策も重要だ。野田政権が9月にまとめた「2030年代に原発ゼロ」の方針は、一度も国会で議論されていない。

 自民党や経団連は、原発維持の立場から反対している。逆に反原発の立場から、政権が「原発ゼロ」方針の閣議決定を見送ったことに対する批判もある。

 国会の場で与野党が意見をぶつけ合えば、総選挙の争点を明確化することにもつながる。

 これ以上、国会の職場放棄は許されない。

 首相は衆院解散を恐れることなく、民自公3党の党首会談に臨み、一日も早く臨時国会を召集する決断をすべきだ。

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中国閣僚欠席―大国の責任はどこへ

 東京での国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会に、中国の謝旭人・財務相と周小川・人民銀行総裁の閣僚級2人が欠席する。

 中国政府は尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化を理由に挙げ、「日本に責任がある」としている。中国の代表団は次官級が率いる。

 国境を越えた世界経済の減速にどう立ち向かうかを話し合う場に、国境問題を持ち出して背を向けるとは、何とも滑稽だ。国際的な協調を軽視していると受け取られても仕方がない。世界第2位の経済大国であればなおさらである。

 中国は急速な経済成長を背景に、新興国の先頭にたって国際通貨体制での発言力の拡大を求めてきた。IMFでは米、日に次ぐ第3位の出資国へ昇格することが決まっている。1人増員された副専務理事のポストも中国が獲得した。

 新興国の権利と責任をどう調整して、多極化の時代にふさわしい「新IMF」を築いていくか。まさにその話を本格化させる時に、中国がこのような姿勢をとることは、自らが求めるIMF改革にも逆行する。

 トップの欠席は、中国の特異さを世界に印象づけることにもなる。直接投資など対中ビジネスのリスクをめぐり、世界の慎重な見方を強めるだけだ。

 ここに来て、中国経済に世界が注ぐ視線も変化している。08年のリーマン・ショック後に4兆元(約50兆円)の景気対策で世界経済を支えて喝采を浴びたころとは異なり、いまは中国自身の景気減速が世界の懸念材料になっているからだ。

 もともと今年は主要国で選挙が相次ぐ「政治の年」で、景気悪化への政治の対応力が落ちると警戒されていた。その中で、共産党独裁の中国は10年に1度の政権移行に際して国内安定を最優先させ、財政金融政策を駆使するとみられていた。

 ところが、春以降、欧州不況のあおりであっさり減速してしまった。背景に共産党内の権力争いに伴う政治的な求心力の低下を指摘する声もある。

 中国が国内景気を腰折れさせないよう、どのような手を打つのか。従来型の産業やインフラへの投資に依存する景気対策を続けるのか。あるいは、内需主導への転換のカギを握る個人消費の振興やサービス産業化に取り組むのか――。

 世界の財政・金融政策のトップが集う会合で、こうした疑問に責任ある立場の人間が答え、不確実性を氷解させることこそ大国としての責務だろう。

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