今後、もし社会保障費の合理化や成長戦略が思うように進まない場合、将来的に消費税率を20%程度にまで上げないと、財政再建はままならないでしょう。その意味においては、社会保障の基礎部分を税金で賄う制度にしておかないと、やはり不安は残りますね。
――それでは第三に、今後やるべき成長戦略には、具体的にどんなものがありますか。
今の日本の経済成長を阻害し、日本企業を海外へ逃避させている要因として、円高、EPA(自由貿易)などの遅れ、環境規制、労働規制、高い法人税という、いわゆる「追い出し5点セット」があります。
それらを全面的に転換し、法人税負担の軽減、自由貿易の促進、規制緩和、科学技術の振興などを目指す成長戦略を断行することがカギになるでしょう。内需やディマンドサイド(需要側)を過度に重視するのではなく、サプライサイド(供給側)政策に重点を置く。政府は「アンチビジネス」ではなく「プロビジネス」の姿勢を鮮明化するべきです。
加えて不十分だったのが、日銀の金融政策です。日本経済の最大の不安要因は円高とデフレですが、政府・日銀が一層協力してこれを阻止すべき。きちんとインフレターゲットを導入し、物価目標を1%程度から2%へ引き上げる、ETF(上場投資信託)などのリスク資産を購入して円高や株安に歯止めをかけ、それを将来的に貸し出しの増加につなげる、などの試みが必要です。
日本の財政が世界最悪レベル
であることは、動かざる事実
――ここまで聞いてきて、一体改革や消費税増税の本質が見えてきました。とはいえ、やはり増税はどうしても必要になるのでしょうか。
確かに「増税の前にやることがある」という意見はあたかも正論のように聞こえます。ただし、それについては、真の正論として言っている人たちと、政治的な思惑で先送りをしたいがために言っている人たちとが混在していることが悩ましいところです。
少なくとも事象面から捉えると、似たような議論が30年も前から繰り返され、抜本的な対策が先送りされ続けた結果、今の日本の財政状況は世界最悪レベルになっているという、動かざる事実があります。今回の増税決定を機に、その教訓を一から問い直してみるべきではないでしょうか。