「100年安心年金プラン」の問題点
社会保障の基礎部分は税金が望ましい
――社会保障の合理化について言えば、現行の「100年安心年金プラン」はどこに問題があり、今後どうしていくべきなのでしょうか。
自公政権の「100年安心年金プラン」は、年金の拠出側と給付側をどちらも固定しようというのが基本的な発想でした。ただし、当然ながら、出生率や経済情勢が変われば、それらの連動性は崩れてきます。
基本的な考え方としては、拠出側と給付側のどちらか一方を固定し、他方を経済情勢や出生率などに応じて自動的にスライドする仕組みにするべき。
そのためには諸制度の変更も必要です。たとえば、年金の支給開始年齢を67歳なり70歳に向けて引き上げる、現在止まっているマクロ経済スライドを発動させる、ある程度生活に余裕のある高齢者については、年金所得への課税を行なう、70~74歳の高齢者について医療費の自己負担額を、現在の1割から法律に準拠した2割へ上げる、といった取り組みです。
それらを行なった上で、拠出側と給付側の一方をスライドする仕組みにしていかないと、サスティナブルな年金制度にすることはできないでしょう。
――拠出側のことを考えると、社会保障費の原資を増やすための消費税も、果たして増税後に10%の水準でいいのでしょうか。また、そもそも消費税率を上げただけで収入が安定するのかという疑問もあります。今後は保険料方式がいいのか、それとも税方式がいいのでしょうか。
出生率や経済情勢によっても変わってくるので一概には言えませんが、年金の未納問題などを考えると、やはり基礎部分は税金でやっていくほうがいいと思います。
私のシミュレーションによると、経済成長率が上向かず、社会保障費が増えてしまったケースでは、消費税率が10%ではとても足りません。たとえば名目成長率+1.5%に対して社会保障費の伸び率が年率+3~4%といったケースでは、プライマリーバランスが2020年度に対GDP比で3.6~4.1%の赤字になってしまいます。これをバランスさせるためには、消費税率を17~18%くらいまで引き上げないといけなくなる。