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論争!日本のアジェンダ
【第11回】 2012年10月12日
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「今だからもう一度言いたい。消費税が日本を救う」
くすぶる増税への疑問にトップエコノミストが提言
――熊谷亮丸・大和総研チーフエコノミストに聞く

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 一方で、経済を活性化させる要素も考えられます。将来不安の高まりにより、日本人の貯蓄率は1983年からの累計で5%ポイントほど上昇しています。よって、社会保障の合理化などを通じて財政再建が進み、国民の将来不安が落ち着けば、5%程度の貯蓄が消費に回る可能性がある。消費税増税が消費を活性化させ、むしろ景気を下支えする要因になる可能性もあるというわけです。

 ここまで見てきたとおり、消費税増税にはメリットもデメリットもありますが、それらを全て比較すると、やはりメリットのほうが大きいと思います。

――これまで消費税増税に的を絞って詳しく聞いてきました。第二に、社会保障の合理化について聞きたいと思います。足もとで合理化の必要性は、どれくらい高まっているのでしょうか。

 1990年度以降の22年間で、国の一般会計における歳出は24.1兆円増えており、そのうち社会保障費が14.8兆円とほとんどを占めています。財政赤字を解消するためには、社会保障の合理化が不可欠です。

 日本の財政収支は、バブル景気などで歳入が増えると一時的に改善しますが、結局社会保障費をはじめとする歳出のカットが甘いので、景気が悪くなると、急速に財政が悪化するというパターンを繰り返しています。

 小泉構造改革時に公共投資などをカットして一時的にプラス効果が生じても、社会保障費が毎年1兆円以上拡大している状況下では、焼け石に水だった。社会保障の合理化は喫緊の課題です。

基礎的財政収支をプラスにするには?
消費税増税後の独自シミュレーション

――今後消費税率を上げる一方、社会保障費を何%カットし続ければ、プライマリーバランス(基礎的財政収支)は改善するのでしょうか。

 それについても、試算を行なっています。消費税率を2014年4月に3%、2015年10月に2%引き上げることを前提にして、名目GDPが3%成長し、社会保障費が2010年代半ば以降、年率4%低下する条件を加えてシミュレートすると、プライマリーバランスは対GDP比で2020年度に0.2%のプラスに転じます。この時点で、ようやく日本は財政再建の入り口に立てるわけです。

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社会保障と税の一体改革、消費税増税、エネルギー問題、TPPなどなど、日本はいま、これからの「国のかたち形」を決める大テーマに直面している。そこには絶対的に正しいという回答はない。だからこそ、甲論乙駁の議論を紹介し、我々がどのような選択をしていくべきかを考える。

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