ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
論争!日本のアジェンダ
【第11回】 2012年10月12日
著者・コラム紹介バックナンバー

「今だからもう一度言いたい。消費税が日本を救う」
くすぶる増税への疑問にトップエコノミストが提言
――熊谷亮丸・大和総研チーフエコノミストに聞く

previous page
9
nextpage

 また、所得税の課税ベース拡大と一体的に行なうことも必要。所得税が空洞化している状況で給付付き税額控除をやっても、財政的な負担が大きくなるだけで、効果は薄い。まずは所得税の課税ベースを拡大し、その上で困っている人に対してある程度の税額控除を行なうのが理想的です。

――益税・損税問題については、どう解決すべきでしょうか。消費税においては、小規模事業者の事務負担を軽減するために、売上高が一定以下の事業者は税の納付が免税されます。しかしこの仕組みにより、免税事業者が消費者から徴収した消費税を懐に入れ、利益を得ることが起こり得るという「益税」問題があります。一方、消費税を価格に転嫁できない中小企業が、自腹を切って消費税額を負担するという「損税」を問題視する向きもあります。

 これらの問題を解決するためには、当面は弱者を救済する法制などを実施するとして、ゆくゆくはインボイス方式の導入を考えるべきでしょう。インボイスとは、商品の流通過程で仕入先が発行する「送り状(納品書)」のことで、仕入税額控除の証明書の様な役割を果たします。インボイスには商品の価格や、仕入先に支払われた税額などが記載されており、その保存を義務づけることで適正な課税を行うことが可能となります。

 つまりインボイスには脱税や二重課税を防ぐ効果が期待されるのです。ちなみに、欧州ではすでにインボイスが導入されているため、そもそも「益税・損税」という言葉自体が存在しません。消費税は国民が広く薄く負担するものだという考え方を、消費者に対してよく教育していくことも大事ですね。

景気への悪影響はあっても限定的?
増税開始後の2015年度は小康状態に

――経済への悪影響についてはどうですか。

 消費税増税をやれば、景気は若干悪くなるでしょうが、先ほども述べたように影響は限定的です。

 大和総研が消費税増税の経済成長率への影響を試算したところ、増税前の駆け込み需要が起きる2013年度はGDPが+0.9%ポイント押し上げられ、増税が始まる2014年度は-1.7%ポイントとなっています。ただし、翌年の2015年度には+0.1%ポイントと小康状態になる見込みです。よって、全体で見ればマイナスの影響はあるものの、日本経済が壊滅的な打撃を受けるというほどのインパクトはないと見ています。

previous page
9
nextpage
Special topics
ダイヤモンド・オンライン 関連記事


DOLSpecial

underline
昨日のランキング
直近1時間のランキング

話題の記事



論争!日本のアジェンダ

社会保障と税の一体改革、消費税増税、エネルギー問題、TPPなどなど、日本はいま、これからの「国のかたち形」を決める大テーマに直面している。そこには絶対的に正しいという回答はない。だからこそ、甲論乙駁の議論を紹介し、我々がどのような選択をしていくべきかを考える。

「論争!日本のアジェンダ」

⇒バックナンバー一覧