実際日本では、国民負担率の低さがジニ係数(主に社会における所得再分配の不平等さを測る指標)の上昇を招いている側面があります。わが国の所得格差は、所得を再分配する前の段階ではあまり広がっておらず、社会保障や税を通じて再分配した後に拡大する、つまり不平等が大きくなる傾向がある。現状の税や社会保障の機能によって、うまく所得再配分ができていないのです。
国際的に見ても、大きな政府で国民負担率が高いほど、やはり格差は小さい。よって逆進性の問題を解決するには、国民負担率をせめて中負担まで上げると同時に、本当に困っている人のところに所得が再分配される仕組みをつくらなくてはならない。
具体的には、様々な所得税の控除を縮小したり、相続税を上げることなどが必要でしょう。このように、逆進性については消費税だけを切り取って論ずるのではなく、税制や歳出構造全体の問題として検討する必要があります。
逆進性の解消には給付付き税額控除、
益税・損税問題にはインボイス方式を
――消費税増税にあたっては、「逆進性」の解消を目指すために、一定所得以下の人に支払った税金の一部を戻したり現金を給付したりする「給付付き税額控除」や、低所得者が購入する割合が高い食料品などに軽減税率を適用する「複数税率」の導入も議論されています。どちらがより好ましいでしょうか。
複数税率には3つ問題があります。品目ごとに合理的な線引きが難しいこと、負担軽減額はやはり高所得者の方が大きくなり、逆進性を解消する効果に疑問があること、そして減収幅が大きいということです。
また諸外国では、消費税率20%弱程度につき、10%弱程度の軽減税率が一般的。消費税率が10%を超えるあたりまでは、費用対効果の側面から言っても、日本で軽減税率を導入するのは時期尚早かと思います。その意味においても、現段階で検討するなら、給付付き税額控除のほうがいいと思います。
ただし、給付付き税額控除にも考慮すべきポイントがあります。たとえば、国民の所得や資産をちゃんと捕捉する仕組みをつくり不正受給を防ぐこと、モラルハザードを防止するために生活保護との調整をしっかり行ない、受給者にとって働くことが損にならない仕組みをつくることなどです。