よって、ある程度資産を持っている裕福な人に、消費額に応じて税を負担してもらうようにすれば、そのぶん子育て世代や若年層の負担が減ることになり、不公平感が縮小することになります。
第二に、経済活動への中立性です。国が税収を増やす方法として、所得税率の引き上げもよく俎上に載せられます。しかし、所得税には、所得を得たときとそれを貯蓄して金利をもらうときに二重課税され、経済活動を歪めるという問題があります。消費税にはそれがありません。
第三に、高齢化社会に向けて国の社会保障費の負担が増えるなか、税収を安定させることができること。当然ながら、今回の社会保障と税の一体改革において、最も重視されているのはこの効果ですね。
そして第四に、税制を世界の潮流に近づけられること。所得税や法人税を軽減して、間接税や消費税のウェイトを上げていくのが、今日の世界のトレンドです。日本だけがそれに反するやり方をしても、企業の空洞化や高所得者の海外流出を招き、国内の経済力を弱めてしまうリスクがあります。
逆進性は消費税だけの問題にあらず
所得再分配の仕組みを建て直すべき
――では、デメリットは何ですか?
デメリットは主に3つ。逆進性、益税・損税問題、景気への悪影響です。
まず、低所得者ほど税負担が増すという指摘が多い逆進性の問題については、議論を尽くすべき課題ではあります。ただし、一般的に言われていることには誤解も含まれています。そもそも消費税だけを切り取って、逆進性の問題を論じるのはおかしな話。逆進性は、税制や歳出構造全体の歪みによって起きている側面も強く、それらを総合的に見ながら、理想的な所得再分配を考えていく必要があります。
たとえば、歳入面を見ると、日本では今、所得税が空洞化しています。構造的な要因により、9割の人が所得の10%以下しか所得税を払っていない。こうして課税ベースが狭まっている一方、歳出面を見ても、本当に困っている人にお金が行き渡っていません。こうした双方の歪みがあるのです。
