また、「1997年の増税後、国は結局当時の税収レベルを回復できていないではないか」という批判についても、事実と異なります。実際は、小渕減税と地方への財源移転などを全て控除したベースで見ると、リーマンショック発生前の段階で、日本は97年に消費税を引き上げる前の税収を回復しています。
その意味では、むしろ消費税は非常に安定的に推移しており、逆に97年時に増税していなかったら、今の税収は激減しているはず。結局、減税や控除をやり過ぎたことが、税収減の大きな理由になっているのです。そこが混同されているのではないでしょうか。
――先の消費税増税がタイミングの悪い時期に行なわれたことが、「景気に壊滅的な打撃を与える」という認識を生む原因の1つになったということですね。消費税を上げてはいけないタイミングはどんなときなのでしょうか。今はその時期に当たりませんか。
第一に、物価が上がるインフレの時期、第二に金融システム危機のときです。今回は、インフレの懸念は今のところほとんどなく、日本に大きな影響を及ぼすほどの金融危機が起きることも考えにくい。
欧州債務危機の波及も懸念されていますが、欧州では、おそらくギリシャがEUを離脱するような事態になったとしても、最後はドイツやフランスを中心に、危機の終息を目的にしたEU共同債の発行や財政統合へ向かうと思われます。その意味では、欧州危機がリーマンショック並みに拡大し、日本へ波及する可能性はせいぜい1~2割程度で、あまり高くはないと見ています。
いま一度問い直してみたい
消費税にメリットはあるのか
――それでは、一般的に考えて、消費税増税のメリットとデメリットは何でしょうか。まず、メリットについてはどうですか。
メリットとしては、第一に水平的公平性が確保できること。皆が広く薄く一律に負担する税のため、職種などによって税金が多い、少ないという不公平感をなくすことができ、税収も安定します。
世代間格差の是正を促すことにもなります。高齢者と将来世代を比べると、高齢者は年金などの生涯受益額が支払額より9500万円くらい多くなります。加えて、高齢者はフローの所得が少なく、所得税をあまり払っていない人も多い。これでは世代間で不公平感が募ってしまいます。