しかし、今後はそうはいかないでしょう。大和総研のシミュレーションによると、日本は2015年~20年にかけて、経常収支が赤字化する可能性が高まります。これにより、状況がオセロゲームのように一気に悪化しかねません。
――今の状況で経常収支が赤字に転落すると、どんなことが起きるのですか。
経常赤字になると、円安が進行する結果、インフレが発生し、場合によっては不況下で物価高が起きる「スタグフレーション」に陥る。そうなると、金利が上昇し、国債の価格が下がって、国債バブルは間違いなくはじけるでしょう。今や国債の調達期間も短期化しているので、国債が売られ始めると金利が急上昇し、国の利払い負担は急増します。
一方、国債が売り崩されて円安になれば、本来は日銀が輸入インフレを回避する目的で金融引き締めを行なうべきですが、そうすると一気に国の利払い負担が増えてしまうので、これもままならない。結果として、財政破綻が現実のものとなるわけです。こうしたハードランディングのシナリオが起きる可能性は、決して小さなものではありません。
どの国でもそうですが、追い込まれてから財政再建をやろうとすると、低所得層の年金をカットするなど、非常に逆進的な対応をとらざるを得なくなり、経済そのものに打撃を与えます。そうなる前に、財政再建の第一歩を踏み出しておく必要があります。
「増税の前にやることがある」
は問題を先送りしてきただけ
――その第一歩として、税と社会保障の一体改革、とりわけその柱となる消費税増税が必要だということなのですね。
そうですね。世間では「増税の前にやることがある」と言われ、増税の代わりに歳出カットや成長戦略を行なう必要性が唱えられてきましたが、それは論点を拡散させて問題を先送りするだけ。
こうした議論は、1970年代後半の大平正芳内閣のときから続けられてきました。当時一般消費税構想が頓挫し、その後抜本的な対応が進まず、30年経った今でも同じことが議論され続けている。