ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
論争!日本のアジェンダ
【第11回】 2012年10月12日
著者・コラム紹介バックナンバー

「今だからもう一度言いたい。消費税が日本を救う」
くすぶる増税への疑問にトップエコノミストが提言
――熊谷亮丸・大和総研チーフエコノミストに聞く

previous page
2
nextpage

 つまり、財政危機に陥る直前のギリシャと、現状の日本は大差がない状況です。わが国のCDSスプレッドは一度市場の信用が失われると、国債が暴落し、急速な勢いで財政危機に陥る可能性があるレベルなのです。

 また、よく「日本はGDP比で見ても非常に多くの金融資産があるから大丈夫だ」という議論も出ますが、IMF(国際通貨基金)の予測では、10年以内に国債発行残高が金融資産残高を超えると見られています。金融資産は多くても債務とのバランスで見ると、完全な債務超過状態です。

日本で財政赤字の弊害が
表面化しなかった理由

――財政赤字には、どんなマイナス面があるのでしょうか。

 財政赤字の弊害は大きいです。将来世代への負担の転嫁、財政の硬直化、クラウディングアウト(政府による大量の国債発行が市中の金利を押し上げ、民間の資金需要を抑制すること)、悪性のインフレや円安の進行などが主な影響です。

 このうち財政の硬直化については、必要なところにお金が回らなくなるため、国の経済成長が望めなくなります。たとえば、カーメン・ラインハートとケネス・ロゴフによる分析では、政府債務残高がGDP比で90%を超えてくると、経済がガクンと悪くなり、成長率が平均3%くらい落ちると言われます。210%を越えている日本は、そろそろ限界に近づいていると言えます。

 とはいえ、これまでの経済・金融環境では、悪性のインフレや円安の進行など、大きな危機は顕在化しませんでした。その背景には、不況で資金需要が低迷して金余りが起き、経常黒字となって円高が続いてきたことがあります。

 円高がデフレを招き、ますます資金需要が落ち込んだ結果、低金利が続き、ある種の国債バブルが起きてきた。そのため、財政の破綻に歯止めがかかってきたという側面があります。

 また、日本が経常黒字国であり、外国人が国債を9%程度しか持っていない状況では、9割以上の日本国債を保有している日本人が政府を信頼する限りにおいて、すぐに国債が暴落する状況でもありませんでした。いわば、身に迫る危機を察知できずに衰弱していく「茹(ゆ)で蛙状態」になっていたのです。

previous page
2
nextpage
Special topics
ダイヤモンド・オンライン 関連記事


DOLSpecial

underline
昨日のランキング
直近1時間のランキング

話題の記事



論争!日本のアジェンダ

社会保障と税の一体改革、消費税増税、エネルギー問題、TPPなどなど、日本はいま、これからの「国のかたち形」を決める大テーマに直面している。そこには絶対的に正しいという回答はない。だからこそ、甲論乙駁の議論を紹介し、我々がどのような選択をしていくべきかを考える。

「論争!日本のアジェンダ」

⇒バックナンバー一覧