野田首相:安倍総裁と初顔合わせ「近いうち解散」で溝深く
毎日新聞 2012年10月12日 01時34分(最終更新 10月12日 02時54分)
野田佳彦首相(民主党代表)と自民党の安倍晋三総裁の顔合わせが11日、ようやく実現した。衆院の「近いうち解散」の明確化をめぐる両者の溝は深く、首相が目指す特例公債法案の成立などに向けた協力が進む見通しは立っていない。首相は「近いうち解散」の約束を履行する気配を見せず、民主党内では衆院での与党過半数割れを回避するため、「国民の生活が第一」を切り崩すという奇策も浮上している。
「そういうことは簡単に言える話ではない」。民主党の輿石東幹事長は11日の顔合わせ後、記者団から党首会談の時期を聞かれ、こう語った。首相は党首会談の事前調整を輿石氏に委ねたが、輿石氏が急ぐ気配はない。自民党からは「アリバイ作りの党首会談なら必要ない」(大島理森前副総裁)とけん制する声も上がる。
両党首が党首会談開催で合意した後も綱引きが続くのは、谷垣禎一前総裁時代にあった自民党執行部と首相官邸のパイプが目詰まりしているためだ。
谷垣前総裁時代には、腹心の大島氏が、岡田克也副総理や藤村修官房長官と接触。谷垣氏自身も首相と携帯電話で「トップ会談」し、3党合意にこぎ着けた。その谷垣氏は10日に、石破茂幹事長と党本部で会った際、「与党や首相とパイプを作らないとうまくいかない」と助言した。
しかし、安倍氏は、首相と個人的な関係は薄く、石破氏は輿石氏と携帯電話番号すら交換できずにいら立っている。新たなパイプとして民主・安住淳、自民・菅義偉の両幹事長代行が浮上しているだけだ。岡田氏も10日、公明党の漆原良夫国対委員長を訪ね「一歩動かしたい」と協力を要請したが、官邸にパイプ再構築の熱意は薄い。
こうした民主党の姿勢の背景には、「国民の生活が第一」の所属議員の切り崩し構想がある。民主党は、衆院での与党過半数割れにあと8議席と迫るが、生活の議員を離党させて取り戻せば危機は回避できる。生活の若手議員からは「活動資金が不足し、選挙を支える労組の支援も期待できない」との悲鳴がもれており、そこにつけこむ作戦だ。
首相に近い党幹部は「生活にも『こんなはずじゃなかった』という人は多い。内閣不信任決議案に反対して5人が飛び出せばいい」と指摘している。【横田愛、念佛明奈】