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科学
iPS初の臨床応用 心筋細胞作り患者6人に移植 米ハーバード大日本人講師ら
2012.10.11 12:36
あらゆる細胞に分化する能力があるiPS細胞(人工多能性幹細胞)から心筋の細胞を作り、重い心不全患者に移植する治療を、米ハーバード大の森口尚史客員講師らが6人の患者に実施していたことが関係者への取材で分かった。今年のノーベル医学・生理学賞に輝いた京都大の山中伸弥教授がiPS細胞を作って以来、臨床応用は世界初とみられる。
関係者によると、6人のうち、初の移植を受けたのは米国人男性(34)。肝臓がんを患い、肝臓移植を受けたが、今年2月に心臓から血液を送り出す力が低下する「虚血性心筋症」となり、回復の見込みがなくなっていたという。
森口講師らは、移植の際に摘出された男性の肝臓から、肝細胞に変化する前の「前駆細胞」を取り出し、細胞増殖に関わるタンパク質や薬剤を加えてiPS細胞を作製した。
作製方法は、4種類の遺伝子を注入する山中教授の手法とは異なるものだという。
森口講師らは、作製したiPS細胞を心筋細胞に変化、増殖させ、男性の心臓の約30カ所に注入。拒絶反応はなく、心機能は徐々に回復した。
現在、男性は日常の生活を送っているという。また、その後も5人の患者に移植を行ったが、いずれも健康状態に異常は見られないという。
森口講師らは、米国で開かれる国際会議で、この臨床結果を発表する予定。
iPS細胞をめぐり、日本では、光を感知する網膜の一部が加齢に伴って障害を受け、視力が極端に低下する「加齢黄斑変性」の患者への臨床応用を、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)が来年度から計画している。
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