原子力の研究に携わりながら、原子力反対を訴えて40年余。京都大原子炉実験所の助教、小出裕章さん(63)だ。先日の長野市での講演は、福島第1原発の事故を防げなかったことをわびるところから始まった
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原子力の場で生きてきたのに力が及ばなかった、というのである。ことに子どもたちに頭を下げた。大人に比べて成長していく子どもの方が、放射線の影響をはるかに受けるからだ。小出さんは一方で“安全神話”にだまされてきた大人の責任にも触れた
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演題は、親子で考える「子ども・いのち・明日」。原発事故による汚染の広がり、深刻さについての解説は印象に残った。一般人が立ち入れない「放射線管理区域」を引用したくだりもその一つだ。小出さんが勤める実験所の管理区域に逃げ込んだ方がよいほどの状況が生じている
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小出さんによれば、事故で新たな“放射線管理区域”が出現してしまった。福島をはじめ東北や北関東などに及んでいる。いまも多くの人が住み、被ばくを強いられている。電力会社と国の責任は、問いきれないほどに重いという
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子どもを守るためにどうするか―。こうも問いかけ、避難以外の次善の策として、給食の材料選びなどを挙げた。小出さんは、講演先の栃木県での逸話も紹介した。10歳ほどの女の子に言われたという。「原発のない未来を―の先生の夢は私がかなえてあげます」