コラム
予算委員会パネル解説
(図1)は、この日の質疑のキーワードをまとめたものです。四字熟語の方はあまり良いニュアンスの言葉ではありませんが、今の国政で現実に起きていることです。
ちなみに、「朝令暮改」は鳩山元総理が在任中に「朝三暮四」と間違えた言葉です。
1.社会保障・税一体改革法案の採決について
(図2)は、社会保障・税一体改革法案の採決について、民主党議員の反対パターンとその後の行動をまとめたものです。
一体改革なので全て賛成か全て反対とするべきところ、鳩山元総理らは○○×と支離滅裂な投票でした。
民主党内には今でも公然と消費増税反対を訴える議員がおり、まさに「呉越同舟」状態です。
なお、野田総理は答弁で「消費税引上げを次期総選挙のマニフェストに明記する。賛成できないなら公認の基準から外れる」と、一体改革に反対する議員を公認しないことを明言しました。
2.三党合意について
(図3)は、6月21日に自民・民主・公明三党の幹事長がサインした確認書です。私も政調会長として会談に同席しましたが、確認書ではアンダーラインのように「三党実務者間会合合意文書を誠実に実行する」としています。ところが(図4-1、図4-2に続く)
(1)新年金制度、高齢者医療制度
(図4-1)は、一体改革法案の採決直後の6月28日、民主党が党所属の国会議員に配信した「政権交代の成果と課題」と題する資料です。この資料では、新年金制度について、平成25年度国会に法案提出、後期高齢者医療制度の廃止については平成24年通常国会に法案を提出すると記されています。これは明らかに三党合意に反するものです(図4-2参照)。
(図4-2)は、民主党の説明資料と三党合意の内容を対比させたものです。三党合意では将来の年金制度や後期高齢者医療制度は、民主党が勝手に法案を出すのではなく、あらかじめ三党間で合意に向けて協議することになっています。さらに「社会保障制度改革推進法」で設置を決めた「国民会議」の審議を経て、必要な法制上の措置を実施するとしています。
このように、民主党の資料は三党合意の内容とは逆行する、まさに「朝令暮改」です。
(2)マニフェストの進捗状況
(図5)も民主党「政権交代の成果と課題」の一部です。「取り組み中の政策」の中に、何と今年から本体工事着工した「八ツ場ダムの中止」、三党合意で平成24年度予算には計上しないことになった「高速道路の無料化」、さらに、政権交代1年目の年末の予算編成で当時の小沢幹事長の鶴の一声で撤回(最初のマニフェスト破り)された「暫定税率の廃止」が入っています。
こんな子供にもバレるようなウソは良くないと思います。
(3)マニフェスト財源の構造的欠陥
(図6-1)も「政権交代の成果と課題」から。マニフェスト必要財源の7割達成とあり、6.9兆円の財源を捻出してマニフェスト関連と基礎年金の国庫負担財源、社会保障費の自然増分に充てたとされています。しかし、この財源の中には1年限りの埋蔵金の活用があたかも恒久財源のように入っています。もしマニフェスト施策のために恒久的な財源をこれだけ確保できたのであれば、消費税率を5%も引上げる必要はないはずです。(図6-2に続く)
(図6-2)は民主党マニフェストの財源上の構造的欠陥を明らかにしたものです。「埋蔵金の活用」という1回限りの財源をマニフェスト施策のための恒久財源としてカウントしており、もともと5兆円の穴があるのです。この欠陥は、安住財務大臣も答弁で認めました。
また、【図6-1】で「7割達成」としていたマニフェストの財源確保も、実際には23年度予算では26%しか財源は確保できていません。
3.景気対策・成長戦略について
(1)GDPの落ち込みと消費税引上げの影響
(図7)は、サブプライム問題の発生、リーマンショック前後、それぞれ3年間の日本の名目GDPの推移です。自民党が導入したエコポイント・エコカー補助金による景気押し上げ効果があったものの政権交代以降の名目GDPは年平均475兆円と、リーマンショック前の508兆円より、まだ30兆円も下回っています。
さらに今後、消費税引上げに伴って政府の試算でも毎年1~2兆円の需要不足が生まれます。(図8に続く)
(図8)そこで、自民党の提案によって今回の三党協議で【図8】のように「税制改正附則18条(景気条項)」に「成長戦略や事前防災、減災等に資する分野に資金を重点的に配分するなど我が国経済の成長に向けた施策を検討する」という条項を盛り込むことになりました。
(2)日本の国際競争力、技術力低下への対策
(図9)は、国際競争力や技術力に関する3つの指標で日本の順位をみたものです。日本の一人当たりGDPは2000年の3位から2011年には世界18位に、国際競争力指数は90年の1位から今年は27位に低下してしまいました。「ジャパン・アズ・No.1」などと言われた時代はどこへ行ってしまったのかという思いがあります。
さらに、図の一番下の技術革新力指数はこの1年でもまた5位もランクが落ちて25位になっています。早急な対応が必要です。
(3)日本の再出発に向けた制度改革
(図10)自民党が提案する「日本の再出発に向けた制度改革」です。経済の分野で我々が提案するのは図の1番下にある「日本経済再生・競争力強化基本法」で、(1)今後5年間を日本経済の再生と競争力回復の集中改革期間とする、(2)法人税率など制度の国際水準化や過当競争となっている国内産業の再編を進める、(3)成長分野を特定し、政策・資金を集中投入するターゲティングポリシーを導入するといった基本方針・政策を盛り込んでいます。
経済以外の分野についても、日本を取り巻く「危急存亡」の内外情勢に対応するための抜本的な制度改革を提案しています。
まずサンフランシスコ講和条約の締結60周年に合わせ、今年4月に「憲法改正草案」を発表しました。また、安全保障の分野でも自衛権の行使は「必要最小限度」とする解釈は維持しつつ、国際情勢の変化などに合わせ集団的自衛権の一部もその「必要最小限度に含む」とした「国家安全保障基本法」も法案化しています。
そして、事前防災の考え方に立った「国土強靭化基本法」。さらに、自助を基本に共助と公助を組み合わせた社会保障制度を目指す「社会保障制度改革推進法」については三党合意で6月26日に法案が衆議院で可決されました。
なお、この中の「国家安全保障基本法」の提案に対し、野田総理も現時点では今の憲法解釈としつつ、「集団的自衛権の一部を必要最小限度の自衛権に含むというのは一つの考え方だ」と答弁しています。
4.解散・総選挙について
(図11)は一体改革法案の衆議院採決後に行われたマスコミ5社の世論調査の結果です。解散・総選挙の時期について5社中4社の調査で「できるだけ早く」という回答が最も多く、5社全てで「できるだけ早く」「今年中に」を合わせれば、過半数を超える国民が早期の解散を求めています。総理はこの国民の声を真摯に受け止めるべきではないでしょうか。