復興予算:誰のためか…被災者ら、怒りと諦め 衆院小委
毎日新聞 2012年10月11日 11時43分(最終更新 10月11日 12時29分)
誰のための「復興」なのか−−。11日に流会となった東日本大震災の復興予算を巡る衆院の小委員会。被災地と直接関係のない予算措置が次々と明らかになる中、過半数を占める民主党委員が欠席したことで、被災者からは「選挙前の政党間の争い」「各省庁の予算の奪い合い」といった怒りや諦めの声が飛び交った。
岩手県大槌町の無職、佐々木テルさん(83)は「震災から1年半が過ぎても私たち被災者はどこに家を建てられるかさえ分からない。被災地から遠く離れたところにお金を使うのは、本末転倒ではないか」と憤る。同町の無職女性(61)も「各省庁が拡大解釈して、予算の争奪合戦をしたのだろう。純粋に被災地のために使ってほしいと願わずにはいられない。多くの一般市民はみんな驚き、絶句している」と嘆いた。
自宅を津波で失った仙台市青葉区の無職、山下隆平さん(64)は「国会議員なら、国会で議論することが仕事のはず。偉い人たちが何を考えているか分からない。がっかりするのにも慣れてきた」とつぶやいた。
東京電力福島第1原発の事故で避難生活を送る福島県の被災者も怒りをあらわにした。大熊町から南相馬市に避難中の元タクシー運転手、佐々木久さん(52)は「ここらはまだ田んぼの中に車が落ち、ガードレールもさびたまま。民主党が私利私欲のために動いていることがよく分かった」とあきれた様子。
会津若松市に避難している農業、渡部隆繁さん(63)の大熊町の自宅は福島第1原発から約3キロにあり、5年以上立ち入りが制限される帰還困難区域に指定される見通し。「我々は避難者ではなく難民でこれから新天地が必要。復興予算を検証するのは当たり前だ」と注文をつけた。
被災地の首長からも発言が相次いでいる。仙台市の奥山恵美子市長は10日の記者会見で「我々の切実な要望を本当に受け止めていただいているのか、という懸念も出る。被災地の住民感情を考えれば、きちんと説明のできる必要な事業を精選するようお願いしたい」と述べた。
また、岩手県の達増拓也知事は先月10日の定例記者会見で復興予算の問題に触れ「国は復興計画を見直し、無駄なことはやめ、グループ補助金のように足りない予算を増やすということができていない」と苦言を呈していた。【宮崎隆、高尾具成、金森崇之、泉谷由梨子、蓬田正志】