「日本の国力は落ちた」
李明博大統領の認識は正しいか


原田 泰 (はらだ・ゆたか)  早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員

1950年東京生まれ。東京大学農学部卒。経済企画庁国民生活調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮社)など著書多数。

経済の常識 VS 政策の非常識

なぜ根拠に基づかない政策がまかり通り、本質的な問いが発せられないのか。少子高齢化、経済政策、財政赤字など、日本の戦後モデルに歪が生じているにも関わらず、政治はポピュリズムに陥り、50年、100年先の日本に責任を持てる判断を下していない。根拠・経済原則に基づく合理性という観点から、不合理な政策の問題点を指摘する。

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輸出が伸びない日本

 韓国の李明博大統領が竹島に上陸したことと関連し「国際社会での日本の影響力も以前とは違う」と述べ、日本の国力が落ちたとの認識を示したことが話題になっている(8月14日産経新聞)。残念ながら、経済に関して言えば、これは明らかな事実である。

出所)IMF,World Economic Outlook Database, OECD Database
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 1990年にアジアの目抜き通りの交差点に立ってみれば、日本の家電、ハイテク、自動車企業の広告が圧倒していた。ところが今や寂しい限りで、韓国や中国企業の広告が進出している。

 図1は、世界と日本と韓国の輸出数量指数の推移を見たものである。1990年から現在まで、日本の輸出は2.5倍にしか増大していないのに、韓国の輸出は11.4倍になっている。IMFのいう発展アジア(要するに日本を除くアジアと考えて良い)の輸出は11.7倍になっている。先進国である日本には発展途上国ほど輸出を伸ばすことはできないという反論があるかもしれないが、日本の伸びは世界全体の3.6倍、先進国の3.0倍よりも低いのである。

 日本の隣が発展アジアである。発展アジアと同じ率で輸出が伸びなければ、「国際社会での日本の影響力」が低下するのは当然である。

真の犯人は円高

 なぜこんなことになってしまったのだろうか。図には円と韓国ウォンの対ドルレートを右目盛りで示している(作図のために韓国のウォンの値は10分の1にしてある)。円もウォンも大きく変動しているが、1990年から現在までドルに対して、円が1.9倍に増価しているのに、ウォンは4割減価している。ウォンは対円では3分の1に減価していることになる。これが日本の輸出を減退させ、韓国の輸出を急増させたことに間違いはないだろう。

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原田 泰(はらだ・ゆたか)

早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員

1950年東京生まれ。東京大学農学部卒。経済企画庁国民生活調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮社)など著書多数。

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