ソフトバンク社長・孫正義のルーツを探る

【新刊】佐野真一著、チャン・ウンジュ訳『孫正義』(ラックスメディア)

■国籍差別のトラウマ

 孫正義社長を育てたのは、民族差別のトラウマだった。幼稚園時代に「朝鮮人」とからかわれて頭に石をぶつけられ、孫社長は国籍を隠した。頭と根性だけは並外れていた。孫社長自身「一生かけて本当に熱心にやれば、相手が誰だろうと必ず追い抜けるという、根拠のない自信だけはあった」と語っている。しかし最終的には、国籍差別が立ちはだかるだろうと予感していた。父親が長年の飲酒と過労によって倒れた後、米国留学を選んだのも「差別」から逃れようとしたからだった。韓国には一度行ってみた。米国に出発する前の1973年、祖母と一緒に韓国に行った。「行ってみてどれほど良かったか。電気もない明かりの中で、心をこめた料理で歓迎してくれた。こんなに素晴らしい人がいる祖国を、自分は差別していたのだ。たちの悪いできものが全部取れたような感じだった」

 孫社長は、米国に渡って初めて「孫」という韓国姓を名乗り始めた。90年に日本国籍を取得した際、韓国姓にこだわった過程も異色だった。法務省は一貫して「孫という日本姓はないため、日本国籍を取得するのであれば、日本式の姓に変えなさい」と主張していた。ここで孫社長は頭を使った。まず日本人の妻の姓を「孫」に改名させ、変更後の妻の姓を根拠に、自分は「孫」の姓のまま日本国籍を取得した。

全炳根(チョン・ビョングン)記者
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