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単純フラップ(plain flap):
単にフラップとも呼ばれる初期の形式で,翼の後縁の一部を後ろ下方に折り曲げることにより,翼のキャンバーを増加させ,翼型の圧力分布を変えることにより揚力係数を増大させる。
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スプリット・フラップ(split flap):
前項と同じ原理に基づくフラップであるが,後縁の下面のみを折り曲げる形式である。DC-3型に用いられていた。
図1-4-6 各種のフラップ(1)
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スロッテッド・フラップ(slotted flap):
図1-4-7のように,フラップを下方に折り曲げキャンバーを増加させるとともに,フラップを少し後方に移動させて主翼本体との間にスロット(slot:隙間)をつくり,このスロットから主翼下面の圧力の高い空気をフラップ上面に導き,翼上面に沿って流れてきて勢いを失った空気にエネルギーを供給し,後縁近くの主翼上面での気流の剥れを防ぐことによって揚力係数を増加させるもので,機構が単純なわりに大きな揚力係数が得られるフラップである。
図1-4-7 各種のフラップ(2)
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ファウラー・フラップ(fowler flap):
図1-4-7のように,フラップをまず,ほぼ後方に滑らせ翼面積を増加させた後,ある程度後方に移動した時点からは,比較的急速に後ろ下方に折り曲がるように作られたフラップである。離陸時などで上昇性能を向上させるため,できる限り小さい抗力で大きな揚力の発生を要求されるときは,フラップはほぼ後方に移動しただけであり,キャンバーはそれほど増加しないが,翼面積の増加によって揚力を増大させる浅いフラップ角が用いられる。また,着陸時などで,着陸進入時の適当な降下角を得るため,さらに大きな揚力を得るとともに抗力をも大きくすることが要求されるときは,フラップは後方に移動したのち大きく後ろ下方に折り曲げ,揚力,抗力の双方を増大させる深いフラップ角が用いられる。なお,ファウラー・フラップは,その効果をより高めるため,後方に移動したときスロッテッド・フラップと同じように主翼本体との間にスロットができるよう設計されているのがふつうである。
727のファウラー・フラップが2度展張の状態 |
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ダブル・スロッテッド・フラップ(double-slotted flap):
スロッテッド・フラップの効果をより高めるため,図1-4-8のように,主翼とフラップの間にベーンと呼ばれるキャンバーの大きな小翼を設け,スロットが2カ所にできるように作られたフラップであり,ほとんどの場合,フラップ本体は,ファウラー・フラップの形式を取り入れ,より大きな揚力が得られるように考慮されている。 |
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トリプル・スロッテッド・フラップ(triple-slotted flap):
ダブル・スロッテッド・フラップの効果をさらに高めたもので,フラップを三つの部分に分けることによって,スロットが3カ所にできるように作られたフラップである。この場合も,より大きな揚力が得られるように,ファウラー・フラップの形式を併用しているものが多い。
図1-4-8 各種のフラップ(3)
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吹き出しフラップ(blown flap):
民間機で実用された例はないが,スロッテッド・フラップをさらに強化したものと考えてよい。特別に用意された系統から圧縮空気を翼後縁の上面に吹き出して,空気流のよどみや渦をなくし,揚力係数を高めるとともに,失速迎え角を遅らせることができる。
図1-4-10 各種のフラップ(4)
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