NPO(非営利組織)が次の社会を創る理由

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2012/10/11


NPOの重要性は、かのドラッカーもネクスト・ソサエティの中で書いていたりしますが、意外と論点として語られていない気がするのでまとめてみます。


大きなシステムでは解決できないほど、社会的課題が噴出する

「中央政府が税金を集め、再分配していく」というモデルが、世の中の課題を解決するために取られていたアプローチでした。

しかし、経済が低迷し、かつ社会的な課題が噴出する時代においては、このやり方が機能しなくなります。税収は減少し、課題は複雑化していくので、再分配では対応しきれなくなるでしょう。

噴出する課題を解決するのは、主に非営利組織の役割になっていくでしょう。国が再分配をして問題を解決するのではなく、民間が直接問題を解決する、というアプローチです。

既にそうした動きは十分に見られており、例えば「うつ病」という課題ひとつとっても、民間で様々な活動が行われています。彼らは当事者意識をもって、誰から頼まれているわけでもなく、問題解決のために動いています。

現に国は「新しい公共」だったり「参加型社会保障(ポジティブ・ウェルフェア)」という旗印のもと、遠回しに「国じゃできないから民間も協力してね」という提言を行っています。お金を稼いで税金を納めれば、社会が円満に回る、なんて今後は幻想となるのです。

社会的な課題は、社会に点在する「穴」のようなものです。今、日本社会は穴だらけです。視界に入る「穴」をまず埋めたくなるのは、人間の本性だと僕は思います。


「金のため」から「社会のため」というモチベーション構造の変化

課題の噴出と資本主義の成熟にあわせて、人々の働くモチベーションは「金のため」から「社会のため」にシフトしていくでしょう。既にこうしたモチベーションの変化が幅広く見られていることは、皆さんも体感として知っていると思います。

そもそも、僕たちは幸せに生きていくのにそれほどお金は必要としません。年収は1,000万もいりません。150%働いて年収1,000万なら、50%の力で働き400万円を稼いで、残りの50%のパワーを自分と誰かのために使うのが、これからはクールな働き方になっていくでしょう。

このモチベーション構造の変化は、労働力を非営利組織に流入させる力になっていくと考えます。


「寄付型経済」の台頭

ここら辺は今後の努力次第というところですが、人々は、自分が応援するもの、社会的に意義があるものに対して、金銭を提供していくようになるでしょう。

ある経営者の方が「今後、お金を持っている層は高単価でも社会的に意義のあるものを買うようになる。目先の利益を追いかけて安値勝負をすると、顧客の質も下がり、利益率も悪化する。意義やフィロソフィーを持たないといけない」という話をしていましたが、まさに同感。

現在「遊び」と「仕事」の境がなくなっていることとシンクロして、「寄付」と「購入」の境も曖昧になっていきます。クラウドファンディングはまさにそんな感じですよね。

応援消費、共感消費、いろんな表現ができますが、金銭の消費を「社会とつながる手段」として捉える動きが進めば、非営利組織は強い追い風を受けることになるでしょう。


1,000万〜数億規模の非営利組織がゲリラ的に花開く

最後に、これらのトレンドが真実だとして、「よし、次は非営利的なものが儲かるんだな」と考えている時点でダメダメです。ここからは、何百億、何千億というビジネスは生まれにくいでしょう。売上規模としては、恐らく10億円程度がせいぜい限度なのではないでしょうか。

逆にいえば、非営利組織でも、数億円規模のなら十分に到達できるます。事業型のNPOに分類されるフローレンスは、ぐんぐん伸びて、現在4.4億円の売上規模となっています。会計報告は一般公開されているので、ぜひ覗いてみてください。非常に興味深いです。

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フローレンスは事業型ですが、例えば寄付型のNPOに分類される「かものはしプロジェクト」は、2011年度で約7,000万円の寄付収入を獲得しています(PDF)。2012年度の計画値は約8,500万円と、寄付だけで1億円に達する日はそう遠くなさそう。


1,000万〜数億規模の非営利組織がゲリラ的に発生し、様々な社会的課題を解決していく、というのがこれからの社会のあり方だと僕は思います。

この流れが進めば、国という仕組みにほとんど依存しないコミュニティ・地域も生まれてくるでしょう。願わくは、常にそうしたコミュニティの一員であり続けたいものです。


もちろん、世の中はそうすぐには変化しません。まずは社会を担うべき非営利組織に、十分な資金が流れていないという問題があります。ゆえに、僕はマーケター/ライターとして、価値ある活動をしている非営利組織を表舞台に引きだす支援をしています。まだまだ力は足りないので、ぜひ皆さんも自分の時間やスキルを、社会のために提供してみてください。

最近だと、手軽にボランティアを見つけることができる「CollaVol」なんかがおすすめです。数時間単位でできるので、ぜひご利用を。

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関連本。こういう未来っぽい話では、隠れた名著としてかなりおすすめできる一冊。レビューにもありますが、第三章が非常に面白いです。

もう少し読みやすいものでは、こちらがおすすめ。帯にある通り、まさに新しい入門書といえる一冊です。





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