魔法少女に忠誠を (テイクテイク)
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忠義3

「さて、それじゃ魔法少女体験コース第一弾、張り切っていってみましょうか」

 巴マミがハンバーガーショップの店内で高らかに宣言する。これから、魔法少女体験ツアーが始まる。だが、今、この町に魔女の気配はない。昨日ゲルトルートを喰らったので、今日はさすがに出ることはないだろうと踏んでいる。経験からもそうだと思われる。
 ズライカの能力で右腕を広範囲に広げ、目を作って監視しているが、今のところ魔女の気配はないのだ。今日は空振りに終わるだろう。
 和気あいあいと、準備してきました―とか張り切っている3人には申し訳ないが、お前たちが魔女と会うことはあと一度しかない。そして、それが最後になるはずだ。

「準備はいい?」
「準備になってるかどうか分からないけど、持って来ました! 何もないよりはマシかと思って」

 美樹さやかは、ドンッと金属バットを取り出した。どこのバカが金属バットを店の中でだす。お客さんも店員も引いてるぞ。それに3人はまったく気づいていないし。

「まあ、そういう覚悟でいてくれるのは助かるわ」

 巴マミはそう苦笑いするだけで美樹さやかに注意はしなかった。どうやら、感覚が非常にずれているらしい。誰かと一緒にこんな話ができるのが楽しいのかもしれない。

「まどかは何か持ってきたの?」
「え? えっと。私は……」

 そう言って取り出したのは一冊のノートであった。そこに書かれていたのはまさに黒歴史と言えるものであった。
 そうとてもファンシーな魔法少女の衣装だ。デフォルメされた魔法少女の姿の自分が描かれている。
 俺は、それを横目で見て、色々と思うことがった。
 ほむらが、書かれているとか、魔法少女の恰好に見覚えがあるとか。そんなことばかりだ。雑念だとわかっていても止まらない。それを首を振って止める。
 鎧がガシャリと音を立てた。

「うーわー」
「と、とりあえず、衣装だけでも考えておこうと思って」

 その間に鹿目まどかはノートを仕舞う。羞恥心はあったようだ。それでひとしきり笑った後、

「それじゃ、行きましょうか」

 3人は魔法少女体験ツアーに出発した。

********

「基本的に、魔女探しは足頼みよ。こうしてソウルジェムが捉える魔女の気配を辿ってゆくわけ」

 ソウルジェムを掲げながら、人けのない普通の女子中学生が行かないような場所へと入っていく。魔女の気配はない。
 しばらくして、俺がゲルトルートを仕留めた場所に来る。いまだに魔女の残滓でも残っていたらしい。ソウルジェムが反応したが、それだけだ。魔女の結界があるわけがない。

「どうやら、誰かに先を越されたみたいね」
「えっと、どういうことです?」
「ここには、魔女の結界があったみたいなの。だけど、今はないわ。あるのは残滓だけ。おそらくほかの魔法少女が倒したのね」

 残念、俺です。

「他の、魔法少女……」
「……ほむらちゃん……」

 どうやら、美樹さやかと鹿目まどかは同じ人物を思い浮かべているらしい。巴マミも同じだろう。
 今この町にいる巴マミ以外の魔法少女と言ったらほむらしかいない。この場合、そう思うのは当然だ。俺というイレギュラーを知らないのだから。
 ひとしきり、その場所を探索し終え、何もないことがわかると、再び巡回を再開する。その時、俺は、ある特有の感覚を感じとった。魔女が孵化する。その前兆。
 場所は、病院。今、巴マミたちが向かっている場所だ。おそらくは、お菓子の魔女だ。だが、それにしても早すぎる。孵化するのはもう少し先のはずだ。今回は、俺が盛大に動いているのが原因だろう。ズレてきている。だが、それでも

 ――魔女を狩るのは、俺の仕事だ。

 いったん、鹿目まどかから離れ、二輪車を呼び出し、俺は一足先に病院へと向かう。壁に突き刺さったグリーフシードを確認したと、同時に魔女は孵化した。結界の中に囚われる。
 思わず、悪態をつきたくなるが、仕方ない。手早く喰らう。それに限る。急がなくては巴マミたちが来てしまう。
 剣を抜き、そこにいる魔女を目でとらえる。
 お菓子の魔女。charlotte、シャルロッテ。その性質は「執着」。欲しいものは全部。絶対に諦めない。

 ――さて、行くぞ、お菓子の魔女!

 キャンディの様な頭部に円らな目をしており、可愛らしい外見をしているシャルロッテに向かって駆ける。お菓子でいっぱいの結界の中を、跳ぶようにして椅子に座っているシャルロッテに向かって走る。
 一気に跳躍しシャルロッテに剣を振るう。それをシャルロッテは避けることはしない。一撃を喰らい椅子ごと地面に叩き付ける。更に一撃を喰らわさえようとすると、大量の使い魔たちが立ちふさがる。

 ――邪魔だ!

 一撃で薙ぎ払うが、潰していく端からどんどん出てくる。一体一体は弱いが、その数はバカにはできない。英雄は数の暴力に屈するのだ。前世でも、圧倒的物量に、英雄と呼ばれた圧倒的な力を思っていた人間は屈した。
 俺もそうだ。普通の人間よりも強いが、それは圧倒的物量の前には意味を成さない。羽虫を潰すが如く潰していくが、大量に現れる使い魔によってシャルロッテから離されていく。
 時間制限もある、もうすでに、巴マミたちが結界の中に侵入してきた気配を感じた。あと、ほむらもだ。巴マミたちを止めようとしたようだが、巴マミに拘束されてしまったらしい。
 早く終わらせるためにゲルトルートを喰らったことによって得た能力、【吸収】を使ってもよいが、使うと鹿目まどかたちをも巻き込むことになる。【吸収】の範囲は、魔女の結界全てに及ぶ。
 同じくゲルトルートを喰らって得た【分配】を使えば、生命力を誰かに分け与えることもできるが、【吸収】と【分配】は同時に使うことができない。つまり、【吸収】を使えば、使い魔を全滅させることが可能だが、ほむらたちを巻き込むことになる。巻き込まないようにすることもできるが、直接触れる必要があるため、意味がない。
 ズライカから得た【変身】は一度使ってしまったので24時間は使えない。ギーゼラの【高速移動】もだ。【結界移動】でこの結界ごと逃げるのは、巴マミたちが来ているので使えない。つまり、今の俺には手がない。できるだけ急いで、使い魔を潰し、シャルロッテを片付けるしかない。
 スピードを上げる。膂力に物を言わせて、剣を振るい、目の前の使い魔だけを倒す。倒しきれていないのが、絡みつき攻撃をして来るが無視をする。痛みなど、我慢できるくらいにしかない。
 シャルロッテは、叩き落として姿勢のまま、そこにいた。巴マミたちが来そうな気配があったので、すぐさま喰らおうとする。その瞬間、シャルロッテの口から大蛇のような黒く長い体とカラフルな目、パーティ帽のような鼻、頭部付近についた赤と青の羽をしたものが出てきた。シャルロッテの第二形態とされているものだ。
 それは、俺の右腕へと喰らいついた。凄まじい痛みと共に、右腕が食われた。

「■■■■!!!」

 傷口からは闇が噴出している。
 油断ではない。油断などしていなかった。だが、焦りすぎてしまったのだ。巴マミたちに姿を見せないようと躍起になったために、第二形態のことを失念していた。
 そして、これはまずいことになる。別に右腕は【変身】の応用で治すことが可能だが、それ以前に、魔女は穢れを持つことによってその力を増す。俺の肉体は穢れの塊と言ってもよい。右腕一本にしたって、魔女半体分くらいの穢れを内包しているに等しい。
 そして、悪いことに、巴マミたちがやってきてしまった。

「これは、どういうこと……?」

 この惨状を見て、巴マミが言った。

「え、何あの鎧」
「え、まさか……」
「魔女と、同じ気配? つまり、あの鎧も魔女なの? でも、二体の魔女が戦ってるなんて……」

 訳が分からないといった様子の巴マミたち。
 不味い、これは不味い。見られたこともそうだが。シャルロッテの注意があちらに行った。それと同時にあちらへ飛ぶ。巴マミたちは俺という存在のせいで、動きが遅れる。
 俺は即座に駆けだした。シャルロッテを追い越し、巴マミに食らいかかろうとしたシャルロッテを左手で抜いた剣で受け止める。

「え?」

 更に混乱は深まる。
 当然だろう、魔女と思っていた俺に助けられるのだから。

「■■■」

 逃げろというニュアンスの声を出そうとするが、やはり音しかでない。
 そんなことをしていたせいか、一瞬巴マミたちに気をそらしたせいで、俺は吹き飛ばされる。もとより、片腕では受けきれなかったので、時間の問題ではあった。
 ケーキに突っ込むが、すぐに起き上がり、ジャンプ斬りの要領で剣をシャルロッテに叩き付ける。休ませる暇など与えないように突きを放ち蹴る。
 だが、右腕を失ったせいで、バランスを崩した俺の一撃は、シャルロッテを倒すには至らない。
 喰らうには、ある程度は弱らせないといけない。さもなければ面倒なことになる。
 有体に言えば、俺が乗っ取られる。前に一度そうなって、本当に不味いことになった。具体的に言えば世界を滅ぼしかけた。
 いや、今はそれどころじゃない。
 シャルロッテを倒すには左腕だけでは足りない。ダメージを与えても脱皮をするように回復する。24時間ここで戦えばよいのだが、問題は鹿目まどかたちだ。守りきる自信は今はない。この状態では、無理だ。
 つくづく言葉を伝えられない自分の身体が憎らしい。言葉をはっせれば、巴マミとも共闘ができたかもしれない。
 そう考えた瞬間、俺を黄色のリボンが包み込んだ。シャルロッテの突撃をそれが防ぐ。魔法少女の結界。そこにいたのは、巴マミと鹿目まどか、美樹さやか、そして、1番会いたくなかったキュゥべえ。

「これで、話ができるね。さあ、君はいったいなんなんだい? 散々魔女は見てきたけれど、君みたいなのは初めてだよ」

 キュゥべえがそんなことを聞いてくる。悪いが答える気はない。答えることもできないからな。

「そうね。私も聞きたいわ。あなたは、敵なのかしら」
「…………」
「もしかして、口がきけないのかしら?」

 頷く。

「そうなの。じゃあ、答えて、あなたは敵?」

 首を横に振る。

「じゃあ、味方?」

 頷く。

「そうなの。色々聞きたいことがあるけど、まずは、あの魔女を倒してからにしましょう。また、あとで、話を聞かせてもらうわ。筆談はできるでしょう?」

 頷く。

「じゃあ、行きましょう。鹿目さんと美樹さんは、ここで待っていてね」
「はい」
「わかりました」

 これはいい。キュゥべえに存在が知られてしまったが、巴マミとは考えうる限り最高の出会い方だ。
 だが、考えるのはあとだ。俺は巴マミと共に結界から飛び出す。
 巴マミはマスケット銃を作りだし、それを使い魔、それを向けて放つ。さながら、その様子は舞踏だ。名前を付けるならば、“魔弾の舞踏”。思わず、その技術に見とれてしまう。百発百中であった。これほどの技術を持つ者は早々見たことがない。研鑚の長さを見た。

「今よ!」

 はっ、と、して俺は、その隙にシャルロッテへと斬撃と放つ。
 漆黒の斬撃は、シャルロッテを切り裂くに至る。だが、脱皮して再生する。今度はそこに、

「ティロ・フィナーレ!」

 巴マミが巨大な大砲を生み出しそれを放つ。再び脱皮。
 甘い、その瞬間に俺は再び溜めの一撃を放っている。脱皮する瞬間はさすがに動けない。初めてにしては巴マミとの連携はうまくいく。俺が知っているのが、大きいだろう。
 再度シャルロッテは脱皮して復活する。そこに叩き込まれるマスケット銃。そして、リボンで拘束され、大量のマスケット銃による一斉射撃が襲う。
 再び脱皮。その目の前に俺はいる。シャルロッテの身体に触れる。俺は【吸収】を発動する。急速にその生命エネルギーを喰らう。
 さすがのシャルロッテもそのままおとなしく吸われる気はないらしく。身体をひねりその身体をぶつけてくる。それを跳躍して避ける。
 追撃は、来ない。シャルロッテは脱皮をする。そこに巴マミと共に連続で攻撃を加えていく。ボロボロになるシャルロッテ。もう脱皮はしない。

「とどめよ!」
 ――いまだ!

 巴マミがトドメを刺す前に俺は飛び出す。左腕に闇を纏い、その咢を開ける。そして、閉じた。

 ――捕食完了。

 力が溢れてくる。右腕が元に戻る。やはり、食われた相手を喰らったのが良かったのだろう。これで完全に力が戻り、更に力をつけることができた。鎧の色も黒に近くなった。ついでとばかりに巴マミのソウルジェムの穢れも吸収しておいたので、かなりいい気分だ。
 能力も良い物を手に入れられた。【剣創造】と【脱皮再生】これで、少しは広範囲攻撃ができるようになったし、3回までなら脱皮で復活可能。特に【剣創造】にはかなり助けられた。幾らでも剣を出せるのだ。今だと40分間生み出し続けることができる。
 さて、ほむらも心配だし、早く離脱を

「さて、じゃあ、お話しましょうか」

 忘れてました。



感想、ご意見などなどお待ちしてます。

魔女を喰らった時に得る能力も募集します。一応、アニメに出た魔女はほとんど出ます。未登場も出す予定です。


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