【北京=川越一】米下院情報特別委員会がスパイ行為の危険性を理由に、中国の通信機器大手「華為技術」、「中興通訊(ZTE)」との取引自粛などを勧告したことに対し、中国側が猛反発している。
中国外務省の洪磊報道官は8日の記者会見で「米議会が偏見を捨て、事実を尊重するよう望む」と反論。9日の会見では関連の質問に対し回答を拒んで不快感を示した。華為技術側も「委員会は結論ありきだった」「危険な政治的干渉だ」などと訴える声明を出した。
委員会は両社の背後にちらつく中国の“悪意”を示唆したが、両社は以前から政府や軍との密接な関係が疑われてきた。2010年にはインド政府が両社の製造部品に盗聴機能があるとして安全検査を厳格化。欧州連合(EU)も中国政府からの不当な補助金などに疑念を深めている。
華為技術は「報告書の目的は中国企業の米国市場参入の妨害だ」と主張した。中国メディアも「米政府は中国企業が米国に競争を持ち込むことを恐れている。自信の欠如は驚くほどだ。恐怖のあまり中国に過敏になっている」と米国の保護主義を批判。「中国は以前のように寛大ではいられない」と対抗措置を促した。
広東省深●(=土へんに川)市に本社を置く両社は、ともに1980年代に創業。安価な労働力を武器に、通信設備や携帯端末、情報システムなどの開発・生産・販売で業績を伸ばした。アジアやアフリカを足掛かりに欧米進出も果たし、販路は世界140カ国以上に拡大、海外での売り上げが全体の5割以上を占めるまでに成長した。
洪報道官は8日の会見で「中国の通信機器企業は、市場経済の原則に従ってグローバル経営を展開している」と述べたが、“スパイ疑惑”など進出先での摩擦も少なくないのが現状だ。
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