iPS細胞は、induced Pluripotent Stem cell(人為的に多能性を持たせた幹細胞)の頭文字で、山中さん本人が名付けた。「i」だけが小文字なのは、はやりの米アップル社の携帯音楽プレーヤー「iPod」にあやかって、広く普及して欲しいとの遊び心だ。
遊び心は、難しい再生医療の講演中にも忘れない。「少なくとも1回は笑いを取る。関西でうけるネタは米国で、関東のネタは英国で受ける」。専門用語はなるべく使わず、登壇の1分前まで内容をパソコンで直し吟味する。
そんな心がけは大阪生まれというだけではなく、米国留学中に学んだプレゼンテーションの授業のおかげだ。「目線をスクリーンにばかり向けちゃだめ」「レーザーポインターを振り回さず、1カ所に止めて説明して」と厳しく指導された。