【東京】東京で開かれている国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会に出席している各国当局者は9日、アジアの3大経済国を巻き込んだ領土紛争が地域レベルから拡大して世界経済を損なう恐れもあるとの見方を示した。
日本と韓国は10月末で期限が切れる日韓通貨交換(スワップ)協定を延長しないと発表した。しかし、両国当局者は、この決定が両国間の緊張した関係ではなく、純粋に経済的理由に基づくものだと強調することに心を砕いた。両国は同協定がもたらした利益を指摘した上で、「必要になれば、適切な方法で協力する」としている。
この発表は11日に予定されている城島光力財務相と韓国の朴宰完・企画財政相との会談の前に行われた。両者が会談する前にこの問題を片付けておくためだ。日韓関係は以前からの竹島(韓国名・独島)問題が8月に再燃してから緊張が高まっている。米国や紛争に関係していない諸国はこれをリアンクール岩礁と呼んでいる。
一方で、日本と中国に対しては、以前から続いている東シナ海での領土紛争が既に減速している世界経済情勢をさらに悪化させる恐れがあるとして、問題鎮静化を図るよう求める声が出ている。IMFの篠原尚之副専務理事は「この問題が拡大すると、地域もしくは世界の経済活動にとってリスクになり得る」と指摘した。
両国の紛争はもはや地域問題ではなく、世界経済にとっての懸念材料だとする兆しが見えており、IMFは最新の経済見通しで世界経済はリセッションに陥るリスクがあるとしている。中国は財政省と中国人民銀行(中央銀行)のトップを東京に派遣すると見られるが、日本のパートナーとの会談は予定されていない。
東シナ海の尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる紛争は、中国では感情的な問題となっており、反日暴動と日本製品ボイコット運動が広まった。トヨタ自動車の中国内新車販売は8月に前年同月比15%減少したあと、9月には50%近く落ち込んだ。国際協力銀行の奥田碩総裁(元トヨタ社長)は「できるだけ早く日中間の政治的対立が収まり、日中間の貿易が復活することを期待する」と述べた。
IMFの朱民副専務理事(元中国人民銀副総裁)は、IMF会議は「人々が集まって緊急な問題を話し合うのにいい機会だ」とし、「(世界的な)不確実さから見て、両国が良好な方法で問題を解決できれば良いことだ」と話した。また、IMFのリプトン筆頭副専務理事は「現時点では経済的影響があるかどうか言えない」と述べるとともに、「両国がお互いに意思の疎通を図り、(紛争が)経済に長期的な影響を与えないようにすることを期待する」と語った。
日中両国はこれまで長い間、両国間の政治的不一致が経済関係に影響しないようにしてきた。しかし日本の何人かの当局者は、領土問題がこれだけおおっぴらなものになったことで、両国が過去の関係に直ちに戻ることは難しくなったとしている。中国は日本の最大の貿易相手国であり、韓国は3番目の相手国だ。この3カ国は何年間も経済的統合の促進を目指し、自由貿易協定(FTA)創設や貿易・金融取引での現地通貨の使用促進、金融危機に対処するための支援メカニズム開発などで努力してきた。
日韓の当局者は、こうした協力促進の努力は、領土紛争の影響が国民の間で長引く中で打撃を受けようとしていると指摘した。地域経済協力に関与しているある日本の当局者は、竹島をめぐる最近の一連の出来事からは日本も韓国も得るところはないと述べた。