硝子体水晶体前眼房前房隅角

vitreous
lens
anterior chamber
chamber angle

眼球の内容は,硝子体,水晶体,および房水である.

A. 硝 子 体  vitreous body

図01

硝子体は卵白のような外観をしており,眼球容積の五分の四3.9 ~ 4 mℓ ( 4 g )の体積のある無色透明なゲル状構造物(硝子液 humor vitreus )である.98〜99% の水を含みながら高い粘弾性によって眼球の形態を保持し,クッションとなって摩擦・振動などの外力から保護する.

基本構造は,
コラーゲン線維・可溶性たんぱくヒアルロン酸が三次元のメッシュ状骨格を形成し,ヒアルロン酸が水を保持し,透過波長が 350〜900 nm (90%透過は300〜1400 nm )の組織となっている.コラーゲン線維は鋸状縁をはさむ網膜周辺部〜毛様体扁平部から立ち上がり,高さ数mmの範囲で最も密度が高い.硝子体基底部 vitreous base である(幅は網膜側は 1 ~ 3 mm,毛様体側は 1.5 ~ 2 mm).基底部より前方の毛様体・水晶体の部分が前部硝子体,網膜部分が後部硝子体となる.硝子体外層は線維の密度が大きく,膜状(硝子体膜)の硝子体皮質( cortex )である.皮質中に硝子体細胞 hyalocytes を含む.
網膜・毛様体・水晶体に接する皮質面は,ゆるく接着する.視神経乳頭周囲と黄斑部,網膜血管とは,やや強く接着する.Müller細胞・内境界膜と硝子体との接着にはラミニンとフィブロネクチンが関わる.
図02 硝子体中央部は水晶体後面(Berger腔)から視神経乳頭(Martegiani腔)まで Cloquet くろーけ 管 が連続している.

硝子体細胞はヒアルロン酸を合成する.また貪食能により抗原提示細胞(APC)として機能する. 屈折率は 1.334〜1.336 で房水と同じ(Gullstrand の模型眼では 1.337  ).比重は1.009 .水晶体後極から網膜までの距離は新生児で 10 mm ほど,10代なかば〜成人で 14.5〜16.5 mm ほどである.

ゲル構造
主要有形成分は,コラーゲン線維(U型が主,他にX・Y・\・)とグリコサミノグリカン(ヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸,ヘパラン硫酸など)である.ヒアルロン酸以外はプロテオグリカンとして存在し,U型コラーゲン+プロテオグリカン+ヒアルロン酸+水分子=硝子体ゲル,となっている.これらの高分子成分が0.1%ほど,アスコルビン酸やミネラルの低分子成分が0.9%ほどである.
メッシュ状骨格が,細胞外基質まとりくすである.

図03

硝子体の発生
眼杯の内部は中胚葉由来の第一次硝子体であるが成長後は Cloquet管として名残りをとどめる.外胚葉由来の第二次硝子体は網膜毛様体部と視覚部付近で,内境界膜と平行に配列する線維成分として出現する.内境界膜と強固に接着した部分が硝子体基底部 vitreous base である. 硝子体腔の発育は眼球の拡大と平行して進み18歳頃で完了する.それまでコラーゲンの合成が続くが,成人のコラーゲン線維は代謝によりニューアルすることはないらしい.加齢変化とは,生体のパーツとしての成熟過程と考えることができる.

加齢
硝子体本来の姿は,コラーゲン骨格が水を含み膨らんだ状態といえる.年齢とともに線維が少しずつ変性し巨大分子化(架橋)し保水能力が落ちる.一方でコラーゲン線維は分解され,水分子が徐々に放出され,水(硝子体液)を溜める空間が出来てくる.これが液化 liquefaction である(10代後半で20%ほど液化するという.80歳で50%ほど).結果,コラーゲン線維の容積が減少(収縮 syneresis )し同時に柔軟性が落ちる.生理的には硝子体膜の内境界膜に対する接着力が低下し(内境界膜すなわち Müller細胞基底膜の肥厚,プラスミン活性の上昇,接着分子の減少,などによる),臨床的には網膜の表面からはずれる現象がおこる.これが後部硝子体剥離 posterior vitreous detachmentPVD老化現象といえども必発ではない.60代で半数ほど,80代で80%ほど.一眼にPVD が発生した後,他眼にも発生する率は年以内が25%,年以内が65%ほど )である.
視神経乳頭部では,硝子体膜構造は欠損しており,ここを通り硝子体液が移動する.視神経乳頭縁に付着していた跡の円形混濁が Weiss ' glial ring または Fuchs ring 乳頭前グリア環 )である.黄斑前の後部硝子体膜にも欠損が見られることがある.
硝子体の安定化に重要なヒアルロン酸は硝子体後半に多い.これにより含水量も多いことで,加齢あるいは強度近視眼でのヒアルロン酸減少の影響は後眼部に現れやすいことになる.

図04

液化と過酸化
液化にはグリコサミノグリカンの断片化が関係する.活性酸素あるいは過酸化物質の消去能(例;superoxide (O¯  )scavenge活性 )に左右されることから,遺伝的に規定される個体差が説明できるかも ・‥…

硝子体の維持には血液眼関門を含めた網膜の正常構造・機能が必須のようである.例えば,
網膜の変性疾患や光凝固処置(網膜血管病変での治療手段の一)の結果,硝子体は加齢変化が加速される.
強度近視や網膜色素変性症では,若年で液化・後部硝子体離発症が惹起される.
網膜格子状変性部では,局部的な硝子体液化が必発.

第一次硝子体は,胎生期の血管組織を含めしばしば遺残物の元となる.
硝子体組織は遺残物を含め一部線維が網膜に影を作りやすく,「生理的飛蚊症」の原因となる.

図05

B. 水 晶 体 crystalline lens

水晶体 lens は,直径約 9 mm ,厚み(前後径)約 3.5 mm でレンズ豆の形をしている.成人での重量は200 mg ,虹彩の奥すなわち後房に浮かぶ.
房水中で約+20の屈折力を持つ.

水晶体 capsule で包まれ,前房に向いて虹彩と接している面が anterior capsule で,その中央が前極,硝子体側が posterior capsule となる.内部に水晶体上皮細胞水晶体線維細胞を入れる.水晶体線維は(新旧の)形成に応じ,水晶体皮質と水晶体核に分ける.辺縁が赤道部 equator である.

 

@水晶体lens capsule

上皮細胞が合成分泌した基底膜で,W型コラーゲンラミニンなどで構成される.加齢により柔軟性が低下.
厚 10 µm 強,後厚 3 µm

図5

A上皮細胞epithelial cells

水晶体上皮細胞は前下に一層.
分裂しながら赤道部へ移動し,ここで中へ向かい重層化し細胞の形態は細長くなる.

B水晶体線維lens fibers

細長くなった細胞は細胞核を失い,前極から後極へ弓状に伸びる水晶体線維として水晶体の中心へ向って移動する.皮質 cortex である.

Cnucleus

中心は線維が古く凝縮し,細胞内器官も消失する.水晶体核である.

水晶体は,発生過程で上皮細胞が内側に閉じ込められて(細胞層が裏返しになって基底膜面が外に向く)形成される.すなわち水晶体により周囲と隔絶された環境となる.
上皮細胞は生涯(30歳代以降で能率は落ちるが)分裂を続け赤道部で重層化し,細胞は次第に水晶体内部へと移動すると同時に細長くなり水晶体線維となる.前側に細胞が残るのは,硝子体(特に線維芽細胞成長因子)の存在による.

水晶体蛋白(水溶性蛋白)は α-クリスタリン(35 ~ 45%), β-クリスタリン(20 ~ 55%), γ-クリスタリン(10 ~ 35%)が発現し,細胞核やミトコンドリアなどの細胞内小器官が消失し透明化していく.細胞膜の内側にクリスタリンや不溶性タンパクを充填した袋のような構造物が最終的な水晶体線維である. クリスタリンタンパク・細胞骨格タンパク・膜タンパク(35%)のほか,65%の水分で構成される.
代謝機能を失うことで,クリスタリンは更新されることはない.栄養補給は線維間のすき間を通る.

透明度は,基本的にはクリスタリン蛋白のほか水晶体線維の配列と含水量(アクアポリン ~ 水チャネル蛋白 ~ による)で維持される.紫外線領域(400 nm 以下)はほとんど吸収されるが可視光から赤外部まで透過する.水晶体は黄色味を帯びているが,加齢と共に濃くなり,黄褐色から褐色調となる.このために短波長の透過が落ち(吸収され),420 nm 領域は80歳の水晶体では20歳の10倍以上吸収されてしまうという.
散乱光が増え透明度が減少し混濁する状態が,白内障である(研究者によると,加齢変化の延長が白内障とは言い切れない,とのことである).

房水は高濃度のアスコルビン酸を含み,酸化抑制や紫外線の吸収をしていると考えられている.

水晶体の屈折率は,中央の核部分が 1.42 ほど,皮質部分は 1.38 ほどである.

 Gullstrand 精密眼遠方視では1.386 ,核 1.406 .なお眼鏡レンズは 1.5 前後.

 Gullstrand 模型眼に従えば屈折率 1.413 ,前面曲率 r=10.0 mm ,後面曲率 r=−6.0 mm ,屈折力 19.11 D,水晶体厚 3.6 mm  (最大調節時前面曲率 r=5.33 mm ,後面曲率 r=−5.33 mm ,屈折力 33.06 D,水晶体厚 4.0 mm ),で設定されている.
全体の屈折力は,58.64 D=(角膜+水晶体)−3.52 ,最大調節 70.57 D=(角膜+水晶体)−5.54 ,ということだが .....

赤道部 equator にZinn小帯が付着し水晶体を懸架支持する.

Zinn小帯毛様小帯zonule of Zinn
毛様体皺襞部と水晶体赤道部をつなぐ,多数の透明な線維(弾性線維に類似).無色素細胞の基底膜から出て,後房内にある.第三次硝子体.
毛様体と水晶体との間隔は 0.5 mm ほどである.
近見時,毛様体輪状筋が収縮し毛様体の円周が小さくなると Zinn小帯がゆるみ,水晶体が自らの弾力でふくらみ屈折力を増し,かつ前進して(というか,前がふくらみ)明視を行う(結果として,前房が浅くなる).調節のHelmholtz理論である外調節作用.加えて,水晶体線維の再配列が起こり屈折率が増す.Gullstrand理論である内調節作用.

毛様体は【第三章】

図6図7

「房水」を入れる空間が「眼房」で,虹彩によって「前房」と「後房」に分けられる.

C. 眼  房  ocular chamber

前房 anterior chamber
角膜裏面・虹彩前面・水晶体前面で囲まれた空間

後房 posterior chamber
虹彩裏面・毛様体・前部硝子体膜・水晶体赤道部で囲まれた空間

Gullstrand の模型眼に従えば,前房深度は,3.1 mm ほどである.調節時には 2.7 mm ほどとなる.

D. 房  水  aqueous humor

図8

房水は,前後房を満たす.

房水は,毛様体上皮から後房に分泌され,水晶体前面を通り瞳孔縁で前房に出,虹彩根部と角膜周辺部にはさまれる前房隅角から流出する.
眼内圧の維持のほか,角膜・水晶体の代謝(酸素・エネルギーの供給と廃棄物の運び出し),紫外線吸収,酸化防止,などを担う.

産生
毛様体血管叢で濾過され,主(75 ~ 90%)に無色素上皮の能動輸送(active secretion イオンチャンネルにより細胞間隙が高浸透圧状態となっており,これに引かれて水分が後房へ移動する.)により行われる.毛細血管圧(静水圧)による限外濾過(ultrafiltration)や濃度勾配による拡散(diffusion)もある.
産生量は 2 ~ 3 µ (mm3)/分,房水容量は前房 250 ~ 280 µ ,後房 50 µ であるから,およそ2時間でターンオーバーする.交感神経 α1受容体β受容体が房水産生促進, α2受容体が産生抑制に働く.睡眠中の房水分泌量は減少する.
房水中の血漿蛋白濃度(約0.013%)は,血液房水関門機能で制御されている.関門機能は無色素上皮細胞の tight junction(図 )による.
平常の(生理的に平衡状態にある)房水は一次房水,前房をカラにした時に補充されるような房水(手術を含む外傷や炎症などで.関門機能の破綻を伴うことから蛋白濃度が上がる)は二次房水.

pHは7.4,比重は約1.08,屈折率は 1.335 ~ 1.336 (テキストによっては,1.333 としてと同等と見做す.Gullstrand の模型眼では 1.336 ).

図9

温流(対流)
前房内では,角膜近くでは外気温により冷やされ,虹彩側では体温により温度が上がる.このために対流が生じている.
角膜裏面は下降流であるため,病的状態で房水に混濁が生じると角膜裏面に沈降沈着する.

眼圧intraocular pressureIOP

強角膜自体は形状記憶の性質はなく,眼球壁は言わば「ビーチボール」の「ビニール」のようなものである.すなわち「ボール」は中に空気(圧)がないと使い物にならないように,眼球の内容は硝子体・水晶体・房水が占め,球状を維持する.空気量の増減が「ボール」のふくらみを示す(空気を入れすぎると・・×)ように,眼球ではこの内圧を,眼圧 IOP という.硝子体・水晶体(および網膜・ぶどう膜)の容積は一定と見做し,眼圧決定の変数は房水と血液の量である.

一般に,眼圧に直接かかわる(眼内の)要素は,房水の循環である.
病的な場合,産生量の増加はほとんどない.
産生量の低下は通常,原疾患があり続発変化として毛様体機能低下のため低眼圧を来たすものである.よって主に,流出量もしくは流出抵抗が眼圧を規定する.
眼内循環に欠かせないもう一つの要素が血流であり,眼内動脈圧と上強膜静脈圧が眼圧に影響する.
なお房水流出は,別項にあるように 房水静脈(上強膜静脈) 前毛様体静脈 眼静脈 海綿静脈洞 の経路となることから,眼静脈・眼窩先端部・海綿静脈洞に至るいずれかの圧も眼圧に影響を及ぼす(であるから,これらの静脈経路は房水の流出抵抗の延長と考える).

☆ 眼静脈と海綿静脈洞 : 「【第十一章】血管系」へ

眼圧は,細かくは脈拍に同期してさらに呼吸と共に変動し,大きくは circadian rhythm 日内変動が観察される(一般に,早朝〜午前中で高い).体位による差(臥位あるいはうつむきで高い)も知られている.夏に低く,冬に高くなる.
身体的条件では,肥満度,収縮期高血圧,年齢が眼圧に影響する.肥満と高血圧は眼圧の上昇に作用し,加齢は下降に作用する(男性に於て).
飲酒により下降するが,産生が抑制されるためとのこと.また,妊娠により後半期では低下する.ホルモン作用で強膜への流出が増える?ためで出産後か月ほど続く.
一日あたりカフェイン 200 mg(コーヒー約 500 mℓ ,コーヒー杯に0.04%のカフェイン)以上で上昇との研究結果がある.分泌量が増える?ため.水も 1000 mℓ を(一気に)飲むと上昇する.血漿浸透圧が下がるため.

統計学的には 10 ~ 21 mmHg を(欧米人のデータで)正常範囲とし,これを逸脱する眼圧が,低眼圧あるいは高眼圧となる.眼内の恒常性の維持に必要なはずの眼圧が,神経機能に悪影響をあたえ機能障害(視野障害視神経障害)を来たす疾患が緑内障である.この場合,眼圧は個人差を加味する必要がある(健常眼圧あるいは安全眼圧という概念).

図10

排出
房水を排水する部分が,前房隅角である.流出経路には
@線維柱帯流出路(85 ~ 90%)trabecular outflow と,
Aぶどう膜・強膜流出路(10 ~ 15%)uveoscleral outflow とがある.

E. 前房隅角  gonio / anterior chamber angle

隅角は,Descemet膜の終端( Schwalbe線)から線維柱帯の前房面と虹彩根部を含めた領域を指す(隅角という解剖名があるわけではない).線維柱帯の奥に Schlemm管がある.

虹彩根部 iris root の奥(隅角底)に見えるのが毛様体帯 ciliary band ,ここから Schlemm管のあいだの白帯部分が強膜岬 scleral spur .ここに虹彩突起 iris process を認めることがある.

隅角にはメッシュ状の線維柱帯 trabecular meshwork があり,房水はここを通り Schlemm管に入る.何本かの集合管(房水静脈)は強膜内では上強膜静脈,強膜上へ出ると前毛様体静脈となり上眼静脈に集合する.これが主排出経路となる.線維柱帯の一部 uveal meshwork から毛様体筋へ向かう房水の流れが,ぶどう膜・強膜流出路である.副経路となる.

図11 図12
13隅角

線維柱帯は Schwalbe線から強膜岬までを含む.隅角底すなわち毛様体帯は個人差があり,線維柱帯の幅は 約 0.8〜1.5 mm ほどとなる.
正しく発育した隅角底は深く,毛様体帯の幅は線維柱帯の半分ほどである.毛様体帯の幅が狭かったりほとんど見えないと線維柱帯の発育も不十分であると予想される.これは先天緑内障の危険因子である.
虹彩面と角膜(裏)面との角度が隅角角度であり,これが小さい状態を狭隅角という.浅前房と狭隅角は原発閉塞隅角緑内障の危険因子である.

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uveal meshwork と scleral meshwork

強膜岬 scleral spur に接続する毛様体筋は,線維柱帯の一部 uveal meshwork となって Schwalbe線まで連続する.この部分のメッシュは粗く,通過抵抗はない. Schlemm管周囲を scleral meshwork といい,メッシュが細かく層間をぬって房水が通過する.ここには毛様体筋との連続構造があり,毛様体筋の弛緩・収縮で流出抵抗が変化する(弛緩;抵抗,収縮;抵抗).scleral meshwork から傍Schlemm管結合組織(層間は無く,房水は細胞外マトリクスの間を通過する)が,いわゆる流出抵抗の最大を示す (言い換えると圧勾配が最も大きい) 部位である.抵抗の元は細胞外マトリクスに含まれるW型コラーゲンと言われる.W型コラーゲンはぶどう膜に広く存在している.
さらに Schlemm管内壁部では,内皮細胞( endothelial meshwork )内を巨大水胞となって管腔へつながり,房水が排出される.
外集合管は Schlemm管外壁に接続し,強膜内静脈叢 deep scleral plexus上強膜静脈 episcleral vein前毛様体静脈 anterior ciliary vein と連絡する.

図14 図15

Schlemm管へ向かう房水の流れが線維柱帯流出路で.毛様体筋へ向かう流れがぶどう膜強膜流出路である.

毛様体筋束間結合組織に入った房水は脈絡膜と強膜との間(脈絡膜外腔,あるいは上脈絡膜腔)に移動し,強膜実質(膠原線維の間)や毛様動脈・毛様神経周囲などを経て上強膜から眼窩内組織に吸収される.一部は強膜内の静脈あるいは渦静脈へ合流する.
trabecularconventionaloutflow は眼圧に比例して(主に 10 mmHg 以上で)増加するが,uveoscleral outflow は眼圧によらずほぼ一定である.低眼圧(8 mmHg 以下)や上強膜静脈圧上昇時には Schlemm管から前房側へは逆流しないようになっている.

 Fontana ' s space 『フォンタナ腔』

前房隅角部を強膜の一部として,(i) フォンタナ腔 space of Fontanatrabecular connective tissue meshwork(=虹彩角膜間隙 spatia anguli iridocornealis)と (ii) シュレム管 canal of Schlemm(=強膜静脈洞 sinus venosus sclerae)で構成される, とかいう解説がある.臨床的には線維柱体,ということでまず使わない表現であるし,フォンタナ腔としての形態は草食動物で定型的にみられ,ヒトでは胎生か月頃の状態(Duke-Elder)なのだそうだ.

●隅角は,眼球正面では角膜輪部の奥にあり,見ることはできない.
隅角の観察には,隅角鏡 gonioprism あるいは goniomirror を用いる.角膜の凸面と角膜対空気の屈折率を打ち消すためで,これを顕微鏡(通常は細隙灯顕微鏡)にて拡大観察する.

図16 図17

この写真は,Koeppe型隅角鏡 goniolens で撮影したものである.
gonio「角(かど)」を意味するギリシャ語である.

●細隙灯顕微鏡 slit lamp microscope

透光体を観察するための仕掛け.こちら

眼圧測定 tonometry

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2012