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体外受精・胚移植法
●体外受精・胚移植法について
体外受精法の大まかなスケジュールは、下記をご参照下さい。(▼クリックで拡大します)
自然の妊娠の場合には、排卵された卵子は卵管で精子と出会い、受精して発育しながら子宮へ着床します。この過程のどこかに問題がある場合には、自然に妊娠することは困難です。この一連の過程を人工的に補助することで妊娠を成立させることができる治療法です。体外受精胚移植法とは、ご主人様に採取して頂いた精子と奥様から採取した卵子を体外で受精させ、分割した胚を奥様の子宮に戻すまでの一連の操作のことをいいます。
体外受精法の流れ
体外受精法の流れは、大きく分けて次の6つのステップがあります。
1:卵巣刺激法
体外受精法の流れとしては、まず良質な卵子の獲得を目的として、卵巣刺激法を行い複数個の卵胞(卵子が入っている袋)を育てます。色々な刺激方法がありますので、患者様の卵巣の状態にあわせて刺激方法を選択します。
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体外受精では一度にたくさんの卵を育てることが必要となります。もともと月経が始まったころには複数の卵胞が存在しますが、成長するにつれて自然周期の場合には1個の卵胞のみが発育します。しかし、体外受精の場合には月経周期の3日目より卵巣刺激のための注射(FSH/HMG)を開始するため複数の卵胞を育てることができます。卵胞が育つと脳よりLHと呼ばれるホルモン(排卵を促すホルモン)を放出し排卵が起こりますが、GnRHアゴニスト(当院ではスプレキュア)と呼ばれる点鼻薬を前周期の黄体中期(月経の21日目ころ)より開始することで排卵を抑えることができます。この方法はロング法と呼ばれています。また、月経周期の3日目よりGnRHアゴニストを用いる方法もあります(ショート法)。GnRHアゴニストは投与開始より一時的にホルモンの分泌を盛んにさせます。そのため、FSH/HMGといった注射と一緒に卵巣に作用し卵胞を育てることができます。このほかに、1〜2ヶ月前よりGnRHアゴニストを開始し、血液中のホルモンが下がるのを確認してから注射を開始する方法(ウルトラロング法)もあります。
最近では、日本でもGnRHアンタゴニスト(セトロタイド)が販売されるようになりました。GnRHアンタゴニストは、注射(FSH/HMG)を開始し、卵胞がある程度発育(卵胞サイズxxmm〜)してから使用し、排卵を抑えることができるため、使用期間が短くて済む、卵巣過剰刺激症候群の発生が少ないなどのなどのメリットがあります。また、今まで排卵をコントロールできなかったクロミッド周期での排卵抑制にも使用することができます。
自然周期
クロミッド周期
GnRHアゴニスト周期
・ショート法
・ロング法
・ウルトラロング法
GnRHアンタゴニスト周期
このように卵巣を刺激する方法はいくつかあります。患者さまの卵巣の状態に合わせて卵巣刺激を行います。
2:採卵
次に、育った卵胞から卵子を採取する採卵を行います。麻酔下に行いますので、痛みは殆んどありません。所要時間は、10分から20程度で終ります。 採卵後は、回復室でゆっくり休んで頂きます。入院の必要はなく、採卵後2〜3時間の安静後に帰宅できます。採卵当日は、ほとんどの方に麻酔を行いますので、来院される場合は、必ず公共の交通機関をご利用下さい。お車などでの来院は危険ですのでご遠慮願います。
3:精子処理・培養・媒精
卵子が採取出来れば御主人様の出番です。精子を採取して頂いて元気の良い精子を集める処理を行います。当クリニックでは、専用のお部屋をご用意しておりますし、ご自宅で採取して持参して頂いても構いません。当日、お仕事等でご来院出来ない場合には、事前に精液を凍結保存することが可能です。詳しくは、医師または看護師にご相談下さい。
4:受精・分割
精子処理が終れば、採れた卵子と精子を体外受精させます。
体外受精法で精子と卵子を受精させる方法には、大きく分けて次の2つの方法があります。
@一般体外受精法
一般体外受精法は、体外に取り出した精子と卵子を卵管の組成に似た培養液の 中で受精させる方法です。つまり、精子と卵子自身の能力で受精をさせる方法 なのです。しかしながら、精子の濃度や運動率あるいは奇形率が正常であって も全く受精が認められない場合や精子の濃度が極端に低い場合などでは、次に 述べる顕微授精法が適応となります。
A顕微授精法(写真参照)
顕微授精法は、一般体外受精法で受精卵が得られなかった場合や御主人様の精液の状態がかなり悪い場合(精子の数が少ない、運動率が悪い、奇形率が高い場合など)、あるいは射精精液中に精子が確認出来ない場合で、精巣で精子が造られていることが確認できる場合に実施します。
下の写真の通り、細いガラスピペットを用いて1個の成熟卵子に1個の精子を直接卵子細胞質内に注入する方法です。
写真:顕微授精法
体外受精させた後、翌日の朝一番に受精確認を行います。この際に、必ず培養室から患者様へ受精の状況と胚移植あるいは凍結保存の予定をご連絡させて頂きます。 ここで注意して頂きたいのは、受精には正常受精と異常受精があり、移植に用いることが出来るのは、正常受精胚のみということです。ですから、受精卵全てが移植に用いることが出来るとは限りません。正常受精の場合、精子1個と卵子1個が受精して、前核(ぜんかく)と呼ばれる受精した証が2個卵細胞質内に確認出来ます(写真真ん中参照)。しかし、異常受精の場合では、卵子1個に対して2個以上の精子が受精して前核が3個以上確認できます(写真右参照)。このような異常受精卵は、たとえ分割して良いグレードであったとしても移植は行っていません。 受精の翌日(採卵から2日目)、翌々日(採卵から3日目)に分割を確認します。2日目であれば4細胞前後に分割、3日目であれば8分割前後に分割が進んでいるのが理想的と言われています。
更に、顕微授精法の場合で注意して頂きたいことは、採卵できた全ての卵子が顕微授精に用いることが出来るとは限らないということです。
卵子には、精子と受精出来る段階にある成熟卵子とまだ精子と受精出来ない未熟卵子とがあります。
顕微授精法に用いることができるのは、成熟卵子のみです。成熟卵子と未熟卵子は、形態によって見分けることが出来ます(下写真参照)。
5:胚移植
採卵から2日〜3日目に奥様の子宮に胚を戻します。これが初期胚移植です。移植する個数に関しては、発育している分割胚の状態(移植胚のグレードについてはこちら)、これまでの治療歴あるいは年齢などを考慮して決定します。これは、多胎妊娠を防止してより安全に妊娠を継続して頂く事を目的としているからです。当クリニックでは、体外受精法の実施が決まった段階で、全ての患者様と移植数について相談し決定しています。特に2人目をご希望される場合や多胎妊娠を避けたい場合などの移植数に関するご要望がございましたら、必ず医師または看護師にご相談下さい。
体外受精法の流れについて(▼クリックで拡大します)
その他の胚移植法
●胚盤胞移植法(採卵から5・6日目移植)下図参照
近年では、培養液の研究が進み以前では培養が困難とされていた初期胚の長期培養が可能となりました。これまでは、受精した翌日の4分割胚や翌々日の8分割胚を移植していましたが、本来は胚盤胞の状態で子宮に着床するので、体外で胚盤胞まで培養して移植を行なえば、より効果的に胚の選別を行うことが出来ます。その為、1個のみの移植を行う場合には、胚盤胞移植が有効と考えれられています。しかしながら、培養液の研究が進んだとはいえ、受精卵の全てが胚盤胞になるわけではありません。当クリニックでは、受精卵の約60%程度が胚盤胞に発育していますが、胚盤胞が形成されない場合には胚移植できない場合もあります。
胚盤胞移植・2段階胚移植法について(▼クリックで拡大します)
●2段階胚移植法 上図参照
胚盤胞移植法に初期胚の移植を組み合わせた方法が、この2段階胚移植法になります。よって、2回胚移植を行います。最初に移植した初期胚(4分割胚か8分割胚)が子宮内膜の状態を活性化させ、次に移植する胚盤胞が着床しやすくなると考えられています。この方法では、2回胚移植を行う為に移植する胚が多くなり、多胎妊娠が増加する傾向があります。この場合も、胚盤胞が形成されなければ2回目の胚移植はキャンセルとなります。しかし、胚盤胞移植と違って1回目の胚移植は全ての方に行いますので、移植が全く出来ないというわけではありません。ですから精神的な負担は胚盤胞移植に比べて軽減されるところがこの方法のメリットです。
6:黄体補充
胚移植が無事終了すれば、移植した胚が子宮内膜に着床しやすくなるように黄体ホルモンによって内膜の状態を整える必要があります。黄体ホルモンは、飲み薬や注射薬や膣剤など色々な種類がありますので、患者さん個々に応じて最も有効と思われる用法、用量で用います。 胚移植から約2週間後に妊娠判定を行います。
●移植胚のグレードについて
初期分割胚(採卵からの2日目あるいは3日目)のグレード分類
当クリニックでは、初期の分割胚のグレードを上記の写真のように5段階で評価しています。最も良いとされるのがグレード1で、最も悪いのがグレード5となります。通常、グレード3までは胚移植に適していると考えています。
胚盤胞期胚(採卵から4日目から6日目)グレード分類
初期胚の発育が更に進行すると、桑実胚(そうじつはい)から胚盤胞(はいばんほう)へと発育します。受精卵(胚)から胚盤胞へと発育する割合は、当クリニックで平均で60%程度です。胚盤胞になると上記のように、発育の状態によって1から6段階で形態を評価しています。通常の発育でしたら、採卵から4日目に桑実胚となり、5日目で1以上に発育して6日目で3以上に発育するのが理想的です。 さらに胚盤胞では、発育状態の他に細胞の密集度についても同時に評価します。 細胞数が多い場合は「A」、ある程度存在する場合は「B」、細胞数が少ない場合は 「C」と評価します。この評価は、内細胞塊(ないさいぼうかい)と栄養芽細胞(え いようがさいぼう)について評価し、細胞数の多い胚盤胞が良好とされています。 下写真参照。
例えば、5日目で胚盤胞の発育が「3」で内細胞塊の細胞数が多く、栄養芽細胞 の細胞数も多い場合は、「3AA」と評価します。
その他の生殖補助技術
●孵化補助術(Assisted Hatching)
胚盤胞が子宮内膜に着床する際には、胚の周りを保護している透明帯と呼ばれる殻を破り、胚自体が透明帯の外に出て子宮に着床するという現象が起こります。これを孵化(ふか)と呼びます。
透明帯が非常に厚い場合や何度か体外受精・胚移植法を施行して良好胚を移植したにも関わらず妊娠が成立しない場合には、この孵化がうまく行われていないことが原因のひとつと推測されます。そこで、移植前に移植する胚の透明帯に対して、レーザー光を照射して透明帯の一部分を薄くあるいは開口する操作を施行し、孵化しやすい状態にすることを孵化補助術といいます。
当クリニックでは、最新鋭のレーザー顕微鏡装置を導入しています。凍結融解胚移植法の場合には、この方法を実施する場合があります。
アシステッドハッチング図
(日本オルガノン社より提供)
●凍結融解胚移植法(ガラス化法)
移植法の項で述べましたが、移植する胚は1個から2個です。では、受精卵(胚)が10個もある場合には、残りの胚はどうなるのでしょうか? ご心配ありません。現在では、凍結保存技術が確立されていますので、1度の採卵でたくさんの受精卵(胚)が得られた場合には、胚の有効利用が可能となっています。
凍結保存という技術が開発された当時は、臨床に応用できる技術ではありませんでした。それだけ凍結という技術が困難だったのです。しかしながら、最近の研究により新しい技術が次々と開発され、ようやく臨床に用いることのできる凍結保存技術が確立されました。現在の凍結保存技術を用いれば、半永久的に受精卵(胚)を凍結保存することが可能となります。また、採卵時にホルモンの値が高値となり着床に適さない場合にも凍結保存法は有効です。このことにより、卵巣過剰刺激症候群などの副作用も回避することが可能となります。
凍結方法については、様々な方法が用いられていますが、当クリニックでは、最も新しい技術で、融解後の生存率が良好とされているガラス化保存法を用いて行っています。
但し、この技術は100%の技術ではありません。融解後に死滅してしまう胚もあります。当クリニックでは、融解後の生存率は約98%となっています。
保存期間は、1年間となっており、1年毎の更新制になっています。
●精子凍結保存(射出精子、精巣上体精子、精巣内精子)
当クリニックでは、精子の凍結保存を行っています。人工授精法や体外受精法実施当日にご主人様が出張や仕事でクリニックに来院出来ない場合には、あらかじめ精子を凍結保存しておくことが可能となっています。
さらに、当クリニックでは、重度男性因子不妊症の治療として精巣上体精子採取術や精巣内精子採取術を大阪大学医学部付属病院の泌尿器科や健保連大阪中央病院の泌尿器科と連携して行っております。その場合に得られた精子はとても貴重な精子ですから、体外受精法に用いるまで凍結保存を行います。
保存期間は、射精精液で3ヶ月の場合の短期保存と病気療養や精巣上体精子・精巣内精子の場合で1年間の長期保存を行っています。1年間の長期保存の場合では、1年毎の更新制になっています。
●精巣上体精子による顕微授精法・精巣内精子による顕微授精法
当クリニックでは、大阪大学医学附属病院 泌尿器科や健保連 大阪中央病院 泌尿器科と連携して無精子症患者さんの治療も積極的に行っております。詳しくは、外来にて医師に御相談下さい。
副作用
●体外受精時に起こりえる副作用について
OHSS(卵巣過剰刺激症候群)とは
OHSSは排卵誘発剤(主にはhMG注射)を使用する事で起きる症状です。
hMG製剤などで卵巣を刺激し卵胞を発育させた後、hCG注射により排卵を誘発すると、卵巣が腫れて腹水がたまり(最初は卵巣の周囲のみですが、ひどくなるとお腹
全体に広がることがあります)、進行すると、血液が濃縮して血栓症が起きることがあります。これは、血管内から水分が漏出することが原因で起こる現象で、この結果血圧の低下を招いたり、血液凝固能が亢進し血管内で血栓を起こしやすくなることで脳梗塞や心筋梗塞、肺梗塞などの生死に関わる大事に至る可能性も出てきます。また、卵巣の腫大自体は茎捻転を招くこともあり、開腹手術を必要とする場合もあります。
体外受精時でhMGなどの排卵誘発剤を用いて、卵胞を人工的に多く作る場合、最初に育ち始めた10〜20個ほどの卵胞をそのまま成熟させる作用があるので、その結果たくさん卵胞が育ちすぎてしまう人に(特に多嚢胞性卵巣症候群の方)OHSS症状が出やすくなります。
主な症状
・hCG注射後からお腹が妙に張る,痛い。
(普段は親指大くらいの大きさの卵巣ですが、20mmもの卵胞がいくつも発育すると7〜13cmぐらいにまで腫れあがります。)
・トイレへ行く回数が激減した。
・肌が異常に乾燥してきた。
・呼吸が苦しい、胸が苦しいなどの症状
治療方法
治療の基本は、安静・点滴となりますが、症状が悪化している場合には入院が必要な場合があります。
次の排卵への影響を心配することはありません。
OHSSは、適切な治療を施しさえすれば決して怖いものではありませんが、病院へ
行かずに放っておくと血栓症や血圧低下によるショックなどで命を落とす危険性の
ある疾患です。hCG注射後から上記のようなおかしいと思う症状が出現してきた
なら、すぐに病院へ行くようにして下さい。
OHSSを発症する可能性の高い方は、以下のような方です。
@ 多嚢胞性卵巣症例
A35才以下の若年者
B血中エストロゲン値が4000pb/ml以上の症例
C多数の卵胞発育症例
D黄体機能補充としてのHCG投与症例
EGnRHアゴニスト使用症例
F妊娠成立症例(重症化することが多い)
OHSSを発症された場合は、胚移植を行わない方が良いので、移植可能な受精卵(胚)は全て凍結保存します。そして、症状が治まってから融解して胚移植します。
OHSSは、全ての方に発症するということではありません。むしろ、発症する方は
少ないと言えます。特に不妊症治療を専門に行っている施設では、卵巣刺激法による
治療経験が多いので、OHSSを発症しないように注意しながら卵巣刺激法を行いま
す。ですから、重症化する場合はほとんどありません。ただ、卵巣刺激法を行って体外受精法を実施する場合には、OHSSという副作用があるということを皆さんに知って頂くために掲載しております。
多胎のリスクについて
多胎(たたい)妊娠とは、双子以上の妊娠を総称して言います。近年、不妊症治療による多胎妊娠が問題となっています。多胎妊娠になると妊娠中の経過観察が単胎妊娠(ひとりの妊娠)と比べて困難となることが多く、妊婦さんを受け入れる産科病院では、受け入れてくれない場合が多くなってきています。これは、多胎妊娠では出産までのリスクが非常に高く、設備が整った病院でないと受け入れてもらえないという現状があるからです。
これを問題視した不妊治療専門医の団体である日本生殖医学会(岡村均理事長)は、2007年3月に母子への危険が大きい多胎妊娠を減らすため、体外受精の際に子宮へ移植する受精卵(胚)の数を、「35歳未満の患者に対する初回の移植では1個に制限する」ことなどを内容とする指針を決定しました。
これを受けて、日本産科婦人科学会も4月から、従来の指針の見直しに着手しています。日本産科婦人科学会は1996年に、体外受精の際に移植する受精卵は3個以内とする指針を決定しましたが、多胎妊娠が増加傾向にあるのが現状でした。そこで、生殖医学会の指針では、それに加えて、多胎妊娠の危険性が高い40歳未満は移植数を2個以下、とくに35歳未満の初回患者は1個に制限するとしました。
移植する受精卵を減らすのは世界的な流れで特にヨーロッパでは、数年前から積極的に1個胚移植が行われています。日本でもようやくある条件のもとに1個移植にする方向で学会が動き出しました。
以下に、日本生殖医学会がまとめた多胎妊娠防止の為の移植胚数のガイドラインをお示しします。
多胎妊娠防止のための移植胚数ガイドライン
日本生殖医学会倫理委員会
日本生殖医学会は、近年の生殖補助医療の進歩とわが国における多胎妊娠数の著しい増加に鑑み、倫理委員会において多胎妊娠防止のための移植胚数に関するガイドラインを検討してきました。わが国および諸外国における治療成績などを検討した結果、このたび以下の様な結論に達しましたので、報告いたします。
1:体外受精などの胚移植においては、日本産科婦人科学会の見解どおり、
移植胚数3個以内とすることを厳守する。
2:多胎妊娠のリスクが高い35歳未満の初回治療周期では、
移植胚数を原則として1個に制限する。
なお、良好胚盤胞を移植する場合は、必ず1胚移植とする。
3:前項に含まれない40歳未満の治療周期では、移植胚数を原則として2個以下とする。
なお良好胚盤胞を移植する場合は、必ず2個以下とする。
4:移植胚数の制限に伴い、治療を受けるカップルに対しては、移植しない胚を凍結する
選択肢について、各クリニックにおいて必ず提示することを求める。
当クリニックにおいても、35歳以下で体外受精・胚移植法による治療が初回の場合、移植数は2個以下に制限しています。
妊娠率も低下せず、多胎のリスクを減らせると思っています。但し、一卵性双胎はありえますので100%多胎にならないという訳ではありません。
患者様も、リスクを知らず、「一度に二人できればラッキー」くらいの感じで、双子を望まれることのないようにお勧めします。
当然ですが多胎妊娠は、母体にも胎児にもリスクが大きくなります。早産率が高く、切迫早産で入院する期間が長くなる可能性があること、帝王切開になる可能性が高いことなどを、しっかり認識していただく必要があります。
いくら頑張ったとしても、低出生体重児で生まれる可能性が大きいことには変わりなく、NICU(新生児特定集中治療室)が整備された病院での分娩が必要となります。また、以下のようなリスクがあります。
早産
多胎妊娠(双子・三つ子)では早産がかなりの頻度でみられます。双胎(双子)においては早産率は約50%に認められ、一人を妊娠している場合に比べて約12倍といわれます。三胎(三つ子)では66〜86%との報告があり、四胎以上であればそのほとんどが早産になります。
切迫早産と診断された時点で、安静と張り止めのお薬(子宮収縮抑制剤)が必要になります。
妊娠高血圧症候群(旧 妊娠中毒症)
妊娠20週以降に起こる高血圧、タンパク尿を特徴とする病気です。日本国内では、妊娠高血圧症候群の発症は双胎(双子)の場合23.1%、三胎(三つ子)の場合35.3%に見られます。
治療としては、安静・食事療法・薬物療法となりますが、多胎妊娠の場合は降圧薬や利尿薬の安易な投与は、多胎胎盤循環を悪化させる場合があるので、慎重に投与することが必要となります。
貧血
貧血は、双胎(双子)の場合では約40%にみられます。
双胎妊娠の場合、母体の血液量は1人を妊娠している場合に比べて約50ml多くなるため、その結果鉄欠乏・葉酸欠乏性貧血が起こりやすくなります。
前置胎盤
多胎妊娠の場合、前置胎盤が多いとされています。
1人を妊娠している場合に比べて、双胎(双子)では2倍、三胎(三つ子)では7倍といわれています。
羊水過多症
羊水過多症も多胎妊娠では多くみられます。
三胎(三つ子)では60%に見られたとの報告もあります。
前期破水
早産と最も関係が深い前期破水(妊娠早期)の頻度は、7.4%で1人を妊娠している場合に比べて約2倍という報告があります。
双胎(ふたご)は自然でも約1%程起こりますが、排卵誘発剤を使用すると卵胞が複数個発育するため、複数個の卵子が排卵され、その結果多胎妊娠の発生率は、高くなることが知られています。不妊症で排卵誘発剤による治療で妊娠し、超音波で双胎妊娠(ふたご)であることが分かると、患者さんはたいていは笑顔で喜んでくれますが、担当医はそうはいきません。稀なことですが品胎(みつご)となると大変です。三人の子どもが増えるのは生活設計にも大きな影響を与えます。
ここで、患者様に是非ご理解頂きたいのは、多胎妊娠には非常に大きなリスクがあるということ。そして、クリニックで努力はしておりますが、不妊治療において完全に多胎妊娠を防ぐことはできないのが現状だということです。どうしても双子は困るという患者様は、必ず治療を受けられる前に医師や看護師に申し出て下さい。そのような場合には、多胎妊娠のリスクを極力低減出来る治療法の選択を行います。ようやく治療の末に妊娠されたのに、多胎妊娠になるなんて聞いていなかったという悲しいことにならない為にも患者様のご理解とご協力をお願い致します。
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