■ 胚盤胞について ■


 培養液の研究が進み、今では体外受精を行っているほとんどの施設で胚盤胞移植が行われています。それでは、「胚盤胞」とはどんなものか?そして、胚盤胞移植の利点と欠点について、少しくわしく紹介したいと思います。

 

◆◇ 胚盤胞とは? ◆◇


 まず、胚盤胞は何者?って思われる方もおられると思いますので、まず簡単に説明します。卵子は受精から2〜3日目で4〜8分割になり、4日目でおよそ16分割になります(写真1)。16分割になるとそれぞれの割数の細胞同士が密着し、細胞がぎっしりと詰まったような状態になります(写真2)。この時に、外周の細胞同士も密着するので、胚の内部が外側から遮断されて、そして今度は内部に液体が貯まってきます(写真3)。そして全体が大きく、胚を包んでいる透明帯は薄くなってきます(写真4)。この状態を胚盤胞(ブラストシスト:Blastocyst)と呼び、自然の場合この胚盤胞の状態まで育った胚が、子宮内に戻ってきて子宮内膜に着床します(受精からはおよそ5〜6日目です)。ですので、胚盤胞移植というのはより自然に近い状態で、胚を子宮内に戻す事が出来るわけです(逆を言うと2〜3日目の移植では、胚は自然の場合と比べると24〜72時間も前に、子宮内の環境にさらされていることになるわけです)。


写真1

写真2

写真3

写真4

 

◆◇ 胚盤胞のグレード ◆◇


 胚盤胞のグレード(形態的な評価)は、各施設によりさまざまですが、2日目3日目移植の場合の評価とはまったく別で、頭につく数字が胚盤胞の場合大きいほどより進んだ、良い胚盤胞であると言えます。胚盤胞の状態(1〜6)、内部の内細胞塊の状態(A〜C)、外側を囲む薄い細胞(栄養膜)の状態(A〜C)の、3つで胚盤胞の評価を行います。

 

◆◇ 胚盤胞移植の利点 ◆◇


● より移植に適した、胚発育の進んだ良好な胚を選択し移植ができる ●
いくら2日目3日目で良好な胚であっても、それを移植したあとにそれが胚盤胞までに育っていく胚であるかどうかは分かりません。その点、胚盤胞移植では確実に胚盤胞まで進んだ事が確認できた胚を移植できるというのが利点です。


● 妊娠率を向上させ、かつ移植胚数を減らし多胎妊娠を予防できる ●
胚盤胞移植では、2個までの胚盤胞を移植する事により十分な妊娠率が得られる為に、体外受精で問題となっている「多胎妊娠」を、移植胚数の減少にもかかわらず、しかも妊娠率も下げることなく防ぐ事が出来ます。

 

◆◇ 胚盤胞移植の欠点 ◆◇


● 胚盤胞まで到達せず、胚移植がキャンセルになる可能性がある ●
胚の質が悪い場合や、数が少なかった場合、2・3日目では移植可能な胚だったにもかかわらず、胚盤胞まで到達せずに胚移植がキャンセルになる可能性があります。


● 培養技術が煩雑になり、培養する為のスペースも必要になる ●
当クリニックの胚盤胞の培養には、それぞれの状態に応じた培養環境にする為に、3種類の培養液を連続的に使用しています。そのため、高度な培養技術が必要となります。また、2・3日目の移植よりも培養する時間が増える為に、培養する為のスペースがさらに必要になってきます。


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