ECO JAPANリポート

施設外への飛散の可能性

 施設外への飛散を示唆する映像もあった。同じく高線量だった焼却灰をセメントなどと混ぜて混練灰をつくる焼却灰混練施設の入口に都職員の案内で向かって歩いているのだが、その足下には道路にべっとりと茶色い混練灰らしきものが付着しているのが散見される。あたり一帯が真っ茶色という場所すらある。柳ヶ瀬氏が映像を示しながらいう。

場内に建物外部でもこのように茶色く混練灰などがこびりついている場所が散見される

 「このへん全部混練灰ですよ。施設外に出てますよね」

 柳ヶ瀬氏は混練灰を中央防波堤処分場に運ぶトラックも調べており、青いビニールのほろをつけたトラックによじ登って測定したとき、トラックに付着した混練灰が衣服にべったりとついていた。それを手ではたいて落としている。混練灰は粉末状の焼却灰にセメントを混ぜたものとはいえ、細かな粒子状である。当然はたけば飛ぶ。そうした経験も踏まえ、柳ヶ瀬氏は「飛散の可能性がある」と指摘している。

 ところが、江東区の東部スラッジプラントの問題でも、今回の南部スラッジプラントの件でも、東京都下水道局施設管理課は「施設は密閉しているので飛散は考えられない」「適切に管理している」と主張している。だが、都のいう「適切な管理」とはこの程度のものでしかない。

 1kgあたり1万ベクレルを超える高濃度の放射性セシウムなどが検出された焼却灰を保管している施設は「密閉している」ということだが、その密閉とはごく普通のシャッターが閉められているだけだ。混練灰を処分場に運び出すときにはトラックが出入りするわけだが、その際は普通にシャッターを開ける。

 たとえばアスベスト除去や高濃度のダイオキシンがある場所での作業では、は、空気を吸引して作業場を負圧にして外部に空気がもれにくくするとともに、引き込んだ空気は高性能フィルターを通してから外部に出す。しかも出入口との間に緩衝帯となる部屋を設けて、そこも同様に負圧にして、出入り時はそこで空気がきれいになるのを待ってから出入りする。放射性物質を扱う場所でもそれに近いかたちで空気を高性能フィルターで処理してから外部に出す。飛散防止にはこれくらいの措置が必要なのである。

 それに対し東京都下水道局は、「空気ならばおっしゃるとおりですけど、建物を出たところに側溝がございます。そこで高圧水(による)洗浄をしてます。車なら洗車場にいってタイヤとボディを洗車します。ということで外に出て行かないという見解です」(水上啓・施設管理課長)と反論する。また施設内では飛散防止に「水をシャワー状にかけている」ともいう。

 だが、水をシャワー状にかけているのは焼却灰混練施設のみ。トラックの洗浄は柳ヶ瀬氏が確認したとおり不十分なものでしかない。それどころか、高圧水による洗浄は高い圧力をかけた水で汚れを吹き飛ばすものであり、粉じん抑制にはならないのだ。実際に高圧水洗浄でアスベスト粉じんを飛散させる事故が相次いでおり、むしろ都の反論は放射性物質を飛散させている可能性を認める内容といえよう。

 ちなみに東京都は6月15日、マスコミ向けに南部スラッジプラントの見学会を開催している。都下水道局広報サービス課はそのことを挙げ、「報道陣に見ていただいて施設からの飛散がないことをご理解いただいた」とも主張する。だが、柳ヶ瀬氏は「メディア見学会のときはここをずっと水で洗浄していました」と話している。

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