【第745回】 2012年10月10日
しかし、これでは公正な競争を図るためにと数年がかりで進めてきた電波政策は台無しである。業界関係者は「2社の株主は喜んでも国民の便益は損なわれた。総務省の無策が露呈し、行政の公平性の問題に火が付くだろう」と言う。
ある総務省幹部は「経営統合に関するうわさの情報で政策決定はできないので、正直、割り切れなさはある。割り当てをこのまま許すのか再度議論する選択肢はあるだろう」と含みを持たせる。
今回の買収価値については、市場関係者らはおおむね「妥当」とみている。買収方式は株式交換のため現金が伴うわけではなく「株式の希薄化は限定的」(外資系アナリスト)で、売却ではないため節税もできるとあって実にうまいやり方だ。だが総務省がコケにされたまま収まるかは微妙な情勢だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)